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"絵ばなしビデオ"って何?

絵ばなしビデオの生みの親は紙芝居屋さんです
 絵ばなしビデオは、紙芝居から生まれました。手っ取り早くいえば、 紙芝居をビデオ化したものです。
 ドンドンドンガラカッカ、ドドンガドンガラカッカ… 鈍い太鼓の音が聞こ えてくると、街のあちこちの道から、いつもの街角に子どもたちが集まってきます。
 子どもたちが自転車の後ろの荷台の周りを取り囲むと、おじさんは、太鼓をたたくのをやめて、子どもたちに水飴や昆布やおせんべいを売り始めます。
 それがおわると、いよいよ紙芝居。自転車の荷台の上に置かれた木箱の一番上に折りたたまれてある紙芝居の舞台が開かれ、ドドーンという太鼓の合図で幕が開きます。そして、主人公の健太少年が、黄金バットに助けられて、怪タンクを倒す場面になると、小さな胸をときめかせたものでした。
紙芝居は、新しいメディアの先がけです
 紙芝居は、作者のイメージを「絵」とおじさんの「語り」と「たいこの音」によつて子どもたちに伝えます。だから、情報の送り手と受け手が直接交流できる人間的なメディアであると言えます。送り手は、1人ですが受け手は、複数です。大勢の子どもたちがおじさんの「語り」にのせられて、正義が勝利した喜びを、そこに一緒にいる仲間と共に味わいます。そして、知らないうちに仲間意識が育っていくのです。紙芝居は、新しい時代のメディアのあり方を教えてくれています。
子どもたちの心が壊れかけています
 あれから50年。紙芝居やさんが自転車をおいた砂利道は、幅広いアスファルト道路に作り替えらて、コンクリーの建物が並び、木造の平屋は、しゃれたテラスの2階建てになりました。大都会には、高層ビルがそびえ立ち、大人たちは、仕事に追われ、伏し目がちに急ぎます。子どもたちは、学校が終われば、塾通いや習い事の週スケジュールに追われ、家に戻ってからの時間は、点取り競争で疲れた頭をテレビゲームでいやす毎日を送っています。
  幼・少年時代というのは、本来ならば、自由な環境の中で大人社会を模倣し、自然や生き物への好奇心を満たしながら学び、自立していく時期なのに、子どもたちは、競争社会の波にもまれ、体と心がバラバラに切り離されています。
 紙芝居に代わって、テレビアニメ、ファミコン・テレビゲーム等の商業メディアが子どもの生活空間を取りかこむようになりました。この種のメディアは、子どもの体の1部分だけを刺激し、体全体のバランスをくずします。子どもに本来そなわっている成長へのエネルギーは、ゲームソフトの仮想体験によって解消されてしまいます。それで、子どもたちの体も心もおかしくなってきています。
幼・少年時代はメルヘンの世界が大切
 野生動物は、仲間から孤立するとことを恐れて必死に群れについていきます。人の子も同様に、友だちから外される不安に駆られて、いろいろな問題行動を起こします。今、子どもたちに必要なのは、確固としてゆるがない社会倫理の存在感とその社会への所属感です。
 幼児期や少年時代の前半は、世界の民話や日本の昔話、グリム・アンデルセン童話、物語等々、古今東西のメルヘンの世界に親しませることが大切です。人類が今まで築き上げてきた美醜・善悪の価値観を、子どもたちの体の奥深くにしみ込ませて心身を安定させ、豊かな想像力をはぐくむ土台を作ってあげることこそ、私たち大人が、子どもにしなければならないことだと思います。
子どもを取り囲む文化は、私たちの手で
 紙芝居屋さんは、もう来てくれません。でも、学校やコミセンの図書室の本棚には、たくさんの子どもの本が並んでいます。街の書店の子どもコーナーにも、良心的な出版社から出された絵本が置かれています。先生やお母さんが本を選んで、図書室で読み聞かせをしたり、寝る前に本を読んであげたりすると、子どもは喜びます。そうすることは、利益追求だけを目指して開発された商業メディアから、子どもたちを守ることにつながります。
 しかし、きまった時間に大勢の子どもたちに絵本の読み聞かせをするとなると、かなりの経験と労力が必要になります。それは、紙芝居とちがって、絵本の面を子どもの方に向けながら文章を追うことをしなければならないからです。読み聞かせのベテランでも、長時間、同じ姿勢で読んでいると目や首や手が疲れます。そんな悩みを解消してくれるのが、絵ばなしビデオです。一度作っておけば、何回でも読み聞かせすることができるし、ぶっつけ本番ではないので、ていねいな「語り」で読み聞かせすることもできます。 私が小学校の図書の専科担任をしていた時、この絵ばなしビデオを作って、2年間、週に一回、給食の時間に放映しました。教室のスピーカーから流れる物語の朗読だけでは、なかなか聞いてくれない子どもたちが、テレビの画像を見ながらの読み聞かせだと集中してくれます。それで、学級担任の先生方や子どもたちに喜んでもらえました。
 子どもたちを取りかこむメディアは、子どもを守る教師や親や地域の人たちが、自ら創り育てていくということが、これからの社会的課題であると思います。絵ばなしビデオは、そのような課題に十分に応えられるメディアではないでしょうか。