【解説】

2005年8月28日に標高3067メートルの頂上から撮影。8月最後の日曜日の朝。47人の宿泊客がいましたが、朝食を食べずに出発する登山グループがいたので、思い切って頂上まで御来光を見に行きました。

乗鞍岳の頂に日の出が当たると、周囲は慈愛に満ちたピンク色に包まれました。太陽が産声を上げた瞬間、山肌が照れたようにポッとピンクに染まる瞬間が私は好きです。

この数分後にはオレンジの眩しい光に変化しますが、そこまでは見ずに、朝食の準備をするため私は急な石段を駆け下りました。

【乗鞍岳を染める】

【解説】

2007年は大規模な修復工事(トイレの改修及び、広間の床をジャッキアップする作業)を行うため、例年より早く、6月21日に登山しました。

私自身、この時期に御嶽山に登るのは初めてでしたが、小屋の中に雪が吹き込んでいたり、玄関の前にぶ厚い氷が残っていて驚かされました。

また、二の池には今にもアザラシが出現しそうな流氷が漂っているなど、私の想像を超える光景が広がっていました。

周囲の山肌はまだ真っ白な残雪に覆われており、晴れた日などは眩しくてつい目を細めてしまうほどでした。

【白雪眩しく】

【解説】

この巨大な湿原地帯が四の池です。濃緑の盛り上がった部分はハイマツ林になっており、池の中には湧水による小川が流れています。

近くまで行くと想像以上に水量が多く、写真中央のV字の所で巨大な滝となって下界へ流れ落ちています。その滝は「幻の巨大滝」としてロープウェイから見ることが出来ます。

2008年、この滝を横から見る場所を教えてもらったので、確認へ行きました。この写真で説明すると滝の左側の斜面を下りて行くのですが、「幻の巨大滝」という名前とは裏腹に、細くしなやかな流れがとても雅で、白糸の滝のように見えました。

四の池の撮影は2004年9月9日、初秋の気配が漂っています。
【解説】

剣ヶ峰から見た富士山です。御嶽山からは台形に二本の角が生えたように見えます。特徴のある形状なので、小さくても肉眼で確認することが出来ます。

登山者のみなさんは御来光の次に富士山が気になるようで、よく場所を聞かれます。「あれですか?わー!見れた!ラッキー!!」と喜ばれるお客様を見ているとこっちまで嬉しくなります。

一方、その方角からは富士山が見えないにも関らず、「富士山(候補も含む)を10個確認しました!」という男性もいて、みなさんの富士山に対する思いの強さを感じることが出来ました。

富士山を見るには天気の良い日の午前中(雲がまだ上昇してこない午前10時まで)がベストタイムと言えるでしょう。

撮影は2004年9月12日。

【四の池湿原】

【富士山】

【解説】

二の池本館の責任者となった最初の年、私は湖面に映る夕景の美しさに心を奪われました。剣ヶ峰から僅か100メートル下っただけで、まるで違う世界がそこにはありました。

よく凪いだ湖面に彩色の空をそっくり転写した風景には思わず身体が吸い込まれそうになりました。

この虹色の世界はシーズンに一度は必ず見られますが、そのタイミングが難しく、当日、天候が良く条件が整っているかのように思えても「その瞬間」になるまでわかりません。

が、二の池本館にお泊り頂くお客様には、是非、この大自然の芸術を堪能してもらいたいと思っています。

撮影は2007年8月16日。
【解説】

まだ私が剣ヶ峰旭館(現・剣ヶ峰山荘)で働いていた頃に撮影した写真です。2004年8月11日は終日天気が良く、夕方になってもガスが掛かりませんでした。そこで、昔の噴気孔の跡まで出掛けることにしました。

「立入り禁止」区域なので、ちょっとした罪悪感がありましたが、そこから見る夕日と真っ赤に染まる地表は、まるで別世界でした。自分が地球以外の惑星、例えば火星でも探訪しているかのような気分に浸っていました。

長身の影を見つめながら、当時の私は「もっと大人になりたい」と考えていたのか、それとも単純に「おもしれー!」と思っていたのか、今となっては定かではありません。

【虹色の世界へ】

【火星探訪】


【解説】

私はスイスを訪問したことはありませんが、これはアルプスと呼べる光景ではないでしょうか。もちろん、スケールは比較にならないので、小アルプス、孫アルプスといったところでしょうが、6月に三の池まで散歩に行ったときは心が洗われるような清々しい気持ちになりました。

楕円形の三の池は周囲を登山道が巡っており、見る角度によって表情を変えます。白龍伝説が残る三の池湖畔をゆっくり散策するコースはおすすめです。

三の池に浮かぶ巨大な流氷が風向きによって移動するという発見も新鮮だった、2007年7月9日でした。
【解説】

毎週のようにヘリが飛ぶ北アルプスの山小屋とは違い、御嶽山ではシーズン中に2〜3回飛ぶきりです。そのため、一種のイベント的な要素が高まり、当日の朝はアルバイトたちもソワソワして落ち着きがありません。

ヘリ荷上げでは山小屋で不足する物資(米、野菜、ドラム缶、ガス)以外にも下界に届いた手紙や生鮮食料品などが届きます。

最近ではケータイが普及して、標高3067メートルの頂上でも電波が入り便利になりましたが、私がまだ大学生だった頃は文通などどいう古風なことをやっていたので、このヘリ荷上げはとても楽しみなイベントの一つでした。

また、ヘリ荷上げの直後は食材が豊富になるので限られた材料で賄いを作る苦労からも解放されて久しぶりに焼肉などを楽しみました。

写真は朝一番に飛んできたヘリが朝日と重なった瞬間を偶然捉えた2005年9月12日の一コマです。

【三の池アルプス】

【ヘリ飛翔】

【解説】

2004年8月6日の朝はドラマチックでした。朝焼けで雲がこのような色彩に変化することは珍しく(夕日ならこういう現象は時々見られますが)、山小屋のスタッフ誰もが窓の外へカメラを向けていました。

数年後、同じ年にアルバイトに来ていた女の子の実家へ遊びに行った時、アルバムの中に同じ写真が入っていました。

そして、「山ではほとんど写真撮らない」という社務所のベテラン、Kさんのケータイの中にもこの日と同じ朝焼けの写真を発見した時は、(ああ、みんな同じものを見て感動してたんだなあ・・・)と感慨深い気持ちで一杯になりました。

一つの風景が時間を超えて人々の記憶に残るというのも、山の魅力の一つなのではないでしょうか。
【解説】

この強烈な日差しは8月の盛夏のものだと思っていましたが、データを見直すと意外に2004年9月12日でした。

私がデジカメを使って写真を撮り始めたのが御嶽山6年目となるこの年からで、それまでは使い捨てカメラでスナップ写真を撮る程度、カメラすら持って上がらない年のほうが多かったほどです(←今では考えられませんが)。

2004年は比較的天候に恵まれ、特に8月下旬から9月上旬までは眼下に広がる雲海が見事で、毎朝起きるのが楽しみでした。

【彩雲】

【眩しい朝】

【解説】

四の池の湿原地帯は高山植物の宝庫です。その中でもクロユリとの出会いは貴重でしょう。低い背丈に似合わず、一本の茎に2輪、3輪の花を持つ、双子、三つ子のクロユリが、注意しないと踏んでしまいそうになるほど足元に生えています。

7月半ば頃が見ごろのピークだと思われます。この写真の撮影日である7月22日は蕾のものが一つも無く、全部、花が咲いている状態でした。

仕事の合間の休憩時間に四の池まで行くには遠すぎて、この写真を撮影した2005年以来、私は御嶽山のクロユリとは再会していません。
【解説】

剣ヶ峰頂上にある御嶽神社の境内を囲む石柱には全国各地の講社の名前が刻まれています。それを見ると実に様々な地方まで御嶽信仰が広がっていることがわかります。

その中には毎年、山小屋に宿泊する講社のものもあり、発見したときは嬉しく感じました。

さて、写真は祈祷所の建物の脇(お鉢巡りの入り口付近)に建つ石柱です。一列に並んだ石柱が夕日を浴びて黄金色に輝いている様子が、固い信仰心を示しているようだったので思わずシャッターを切りました。

【黒百合との出会い】

【黄金色の境内】

【解説】

御嶽山には5つの高山湖が存在しています。いずれも噴火によって形成されたものですが年代とは関係なく、頂上から順に一の池、二の池、三の池・・・と名前が付けられています。

このうち、岐阜県側にある三〜五までの池を一度に展望するポイントが摩利支天乗越しです。写真右手の大きな池が三の池で、左手に見えるのが五の池です。そしてその真ん中に見える緑色の湿原が四の池になります。

時々、「摩利支天からの眺めはどうですか?」と聞かれることがありますが、この景色を見たいと思えば、遠回りする価値は十分にあると思います。

鋭い人なら水位の減少具合からこの写真がシーズン終盤に撮影したものだと気付いたことでしょう。撮影日は2004年9月9日でした。
【解説】

私が2006年に発売した写真集のタイトルの一つが『天国の夜明け』でした。

このタイトルを巡っては、「天国という言葉は死を連想させるのでイメージが悪い」「まだ20代の君には実感が無いかも知れないが、例え内容が良くても、ある程度年配の人はマイナスイメージの名前が付いた商品は買わない」などと厳しい意見を頂きました。

私自身、まったく予期していなかった反応に驚くと同時に、ものすごく勉強になったことを覚えています。

当時の私は天国=穢れの無いキレイな場所だという純粋なイメージしか持っておらず、それが御嶽山から見る御来光の美しさと重なったので「これはピッタリのタイトルが見つかった!」と命名した訳です。

実際、2004年7月23日の御来光はこの世のものとは思えないほど幻想的でした。

【三の池・五の池・四の池】

【天国の夜明け】



【女王の素顔】

【解説】

「コマクサを撮っているとテンションが上がってついつい枚数が増えてしまう」

昨年、初めて山小屋バイトに来た男性の友人がこんなことを言っていましたが、なんだか頷けます。

また、今年アルバイトに来た別の友人(男性)はこう言ってました。

「コマクサってもっと大きい花だと思っていたら、すごく小さいじゃん。でも、可愛いなあ」

流石、高山植物の女王です。
【解説】

2005年7月22日、白龍避難小屋から賽ノ河原方面に向かった右手の礫地に群生するコマクサを撮影。背景の山は剣が峰方面、一の池外輪山です。

見頃は意外と早く、7月中旬〜8月上旬になります。2008年、五の池周辺にあるコマクサ群生地の見頃は8月5日に終了した模様です。

また、二の池周辺のコマクサは7月28日の暴風雨により一気に花を散らす結果となりました。

しかし、驚いたことに9月1日になってから二の池本館の裏にあるコマクサの確認へ行くと、2個の花と1つのつぼみを付けた株を発見しました。季節外れの小さな花はひとしお可憐で愛らしい姿をしていました。

【賽の河原に咲くコマクサ】

【濃淡】

【解説】

御嶽山では8月になると青紫のイワギキョウが一斉に開花して登山者の目を楽しませてくれますが、四の池付近では少し変わった色調のものを見ることが出来ます。上記のようにやや色素の薄い、水色のイワギキョウがあるのです。

分布は五の池から継子岳へ行く途中にある右手の窪地に限られますが、株数は思ったより多く、10数個の花を咲かせる大きな株も見られます。ただ、青紫のものと混生している株は少なく、上記のように濃淡を比較する写真を撮影するには少し苦労します。

撮影日は2005年8月6日です。
【解説】

2008年の紅葉は全国的に遅く、御嶽山でも見頃のピークが10月にずれ込みました。

秋の御嶽山は本格的な登山者よりカメラ愛好家の数が増えます。黒沢口・8合目にある女人堂は秋山シーズンも営業しており、多くの登山客で賑わいます。

この写真は女人堂から三の池方面へ向かう横道から2008年10月6日に撮影したものです。

9月は雨が多く、ほとんど外へ出られませんでしたが、10月に入って色付き具合が深まり、真っ赤なナナカマドの紅葉が楽しめるようになりました。

【三の池道の紅葉】


【秋の摩利支天像】

【解説】

御嶽山には武運の神様である摩利支天が祀られている場所が何ヶ所かあり、これはその中のひとつです。何度も御嶽山を訪れている方や信者さんから「どこですか?」と質問されることが多かった写真です。摩利支天乗越の右手に小さな祠が3基並んでいますが、その直上の岩場に置かれています。

この写真は2004年9月9日に撮影したものです。そう考えると背景の空もどこか秋の気配を漂わせる色合いに思えませんか?この年は9月20日まで山にいました。
【解説】

前日から天気が回復して久しぶりに青空が広がった2005年7月18日の午前中に撮影しました。

瑪瑙を輪切りにした断面のように美しい日本最高所の湖、二の池(水深3・5メートル)を、まるで上空から撮影したかのように捉えることが出来る場所が一の池の外輪を回る「お鉢巡り」コースの終着点付近です。

突出した岩の上からコバルトブルーの水を湛えた二の池を眼下に見ることが出来ます。

また、その場所を二の池から見るとトンビの嘴のように尖って見えますが、一の池外輪山の一部なので特に決まった名前などは付いていません。

【二の池上空より】

【解説】

山頂まで赤褐色の荒々しい斜面を登って来て、最後に登場するこの83段(乃至、82段。人によっては84段だと言うケースもあり、山小屋関係者の間でも意見の一致を見ていない)の石段は本当に登山者泣かせだと思います。見上げるばかりに急な石段を目前に、深い溜息をつくお客さんをこれまで数え切れないほど見てきました。

一方、バイトの間では個人対抗、または山小屋対抗(おもに頂上山荘と旧・剣ヶ峰旭館)による「頂上ダッシュ!」というレースがこの石段を舞台にシーズン中、何度か開催されたり、下山前にみんなで記念写真を撮影するなど思い出に残る場所となっています。

閉山祭が執り行われて翌日、御霊が下山するという2005年9月3日の早朝、石段は銀色に輝いていました。

【銀色の石段】

【解説】

山小屋の仕事は夕方、お客様に食事を提供して、後片付けを済ませると、あとは自分たちの夕食と自由時間になります。御来光の瞬間は朝食の配膳やお客様の部屋の布団の片づけをしていることが多いですが、一日の最後に訪れる夕日はゆっくりと眺めることが出来ます。

先刻、夕食を済ませたお客様と一緒に頂上へ登って強い風に耐えながら、一の池外輪山の向こう側へ沈んで行く夕日を眺めていると大自然の雄大さを実感できます。

「また明日〜」と手を合わせ、明日の御来光を祈る宿泊客の姿が印象的でした。
【解説】

長い間、山小屋で生活していると御来光に対する評価がどんどん厳しくなっていきます。一ヶ月を過ぎる頃になると、一般的に「キレイな御来光」と呼ばれる元旦初日の出のようなものでは物足りなさを感じるようになり、「今日の御来光は普通だったね」などと罰当りな発言まで飛び出すようになります。

しかし!そんな生意気な事を言い出した瞬間、太陽は私たちに素晴らしい演出を見せてくれました。これは2004年の8月26日に撮影したものですが、東の空全体が紅蓮に染まり、恐いほど迫力のある朝焼けとなりました。

このような光景はシーズンに一度か二度ほどしか見られません。この年は他に7月26日と8月3日に確認されただけでした。

【一日の最後】

【紅蓮の朝焼け】

【解説】

剣が峰から黒沢口へ200メートルほど下った地点に木製鳥居が一本佇んでいます。

登山道のロープを超えてから少し尾根を登らなければならないため、今ではわざわざ訪れる人も殆どいませんが、近くには小さな祠があり、その周辺には錆びて風化した古銭が残されていました。

かつての信仰の対象は人々の記憶から消え行く一方、神々しい雰囲気を漂わせるようになりました。

【神々の世界の夜明け】


二の池本館の責任者として二年目を迎えた今年は、これまでに撮影した御嶽山の風景写真を展示するという試みを実施しました。御嶽山の魅力ある姿をより多くの方々に知ってもらいたいという気持ちと、気まぐれな山の天候に左右されて景色を楽しめなかったお客様に対して、「(こんな素晴らしい景色があるのならば)、もう一度御嶽山に挑戦してみようか・・・」という気持ちになって頂ければと思い、過去4年間に撮影した写真の中から26枚を厳選して展示しました。

結果は予想を上回る反響があり、一般のお客様には神々しい御来光の写真が喜ばれました。その一方で毎年、御嶽山に訪れる信者さんからは「何年も来ているがこの光景(朝焼けに染まる二の池の万年雪が霧に包まれる様子)は珍しい」といった声や、「この石像(麻利支天乗越)はどこにありますか?」と質問されることが度々ありました。そして、「来年はどんな写真が見られるか楽しみにしています」と言って下さる方もおり、嬉しいプレッシャーを感じたりもしました。

撮影者が小屋で働いていると知って驚かれる方も多くいらっしゃいましたが、仕事の忙しい時はお客様の質問に十分にお答えすることが出来ませんでした。そこで、このコーナーでは展示していた写真を振り返り、当時の撮影状況や思いなどを述べてみたいと思います。

二の池本館、2008年 展示写真

【朝焼けに染まる万年雪】

【解説】

愛知県のある信者の先達(リーダー)から「これは珍しい!気に入ったので是非、譲って欲しい」と頼まれた写真。撮影日は2007年8月16日で、その前後11日間は天気が安定しており、7回も御来光が確認されました。

この日は宿泊客が少なく、慌てることなく朝食の準備をしていましたが、ふと広間の窓から外を覗くと薄いガスが万年雪の残る山肌を優しく包むような情景に出くわしました。

午前5時10分、朝日を浴びながらあっという間にガスは吹き流されて行きましたが、夢中でシャッターを切ったうちの一枚に幻想的なシーンが写っていました。
【解説】

今年は下山後に御嶽山案内人組合のKさんが長年撮り溜めた写真のを見せてもらいました。

私は御嶽山で働き始めて今年で10年目を迎えましたが、そこには私が知らない御嶽山の表情がたくさん詰まっていました。それは御嶽山の歴史とKさんの人生の一部が重なって出来た芸術作品の数々でした。

「写真を見れば、その人の感性が分かる」と言いますが、被写体やアングルからはKさんの御嶽山に対する情熱が伝わってきました。

私も御嶽山で働く一員として、よりたくさんの方々に御嶽山の魅力と素晴しさを知ってもらえるよう、努力していきたいと思います。

最後の写真は2004年8月26日の御来光でした。





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【燦然】