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気功教室 講師 伊東 祐一
私の尊敬する大先輩の近藤利雄氏は、89歳でなお国体の
選手何十人を相手に、1時間半に亘って稽古を付けて居られ る。これは体力ではなしえない、気の力によるものと思われ る。気力は年齢を経ても衰えず、むしろ近藤先生は次のように 述べて居られる。
人間はオギャーと生まれ、吐く息で生まれ、呼吸で活躍して、
吐く息で死んで行く。いや、宇宙の彼方、虚空へ戻って行く。如 何に幸せに死んで行くかが大切で、100歳まで爪先上がりに 幸せになって行くように、常に努力することが大切である。常と は、「今」である。今を生きるのは「呼吸であり、呼吸以外に無 い」
虚空について帯津先生の言葉を借りて訴えます。虚空とは
宇宙よりも遙かに大きく、宇宙の源になる空間、いわば宇宙の 「生命場」である。私達人間の空間にある生命場の秩序性を 高めることこそ、中国医学の基本思想で、養生医学にほかな らない。養生は死んで終わるものではなく、死後も続くものだ。 目に見える肉体は消えても、目に見えない生命場は死後も残 る。むしろ肉体がなくなって、さらに秩序性を高めて行く。そし て生命場を高めていき、「虚空」の永遠の場と一体化すること が、生きる最高の目的であると私は考えている。
虚空の永遠の生命体と人間の生命体が一体になるというこ
とは、私達の体内にある空間が、虚空の空間と同質になるな ることにほかならない。だから死は、虚空という場をめぐってい るにすぎないというのだ。目に見える肉体は消え、滅ぶだけ で、人間は虚空に戻っていく。まさに死生観の極地を見いだす ことができる。現代の医学、医療は死の一歩手前であきらめて しまう。決して死後を考えない。いま「ホリスティック医学」が注 目されているのはその医療に死もとり入れ、死をも医療の一つ と考えるからだ。
ホリスティック医学とは、臓器から見る西洋医学と、臓器と臓
器の間に有る空間、つまり生命場を見つめる中国医学の考え 方とが結びついた医学である。だから、近代の西洋医学への 疑問がともなって生まれたものであるが、決してそれを否定す る立場にない。
たとえば、私達外科医が開腹の手術をするときにも多くの空
間に遭遇する。この空間は何だろう?と考えても、空気で満た されたものでないことは確かであるが、それ以上のことは分か らない。しかし、間違いなく空間と呼んでよいものだろう。目に 見えるものだけを対象としてきた西洋医学では、当然、この空 間を無視する。一方、全体を見る中国医学は古くから、この空 間を見てきた。そして、虚空の空間こそ、臓器と臓器を結び、 全体としての秩序を造り出している「場」であり、そこに生命の 力が潜んでいると考えてきたのが中国医学なのだ。つまり、結 論だけ言うと、この場が「生命場」なのである。
長々と両先生の話を引用しましたが、“呼吸の大切さ”と“生
命の場”“虚空”についてよくお判り戴けたと思います。気功の 基本は呼吸法に有ります。呼吸法には、次の三要素が大切で す。
◇調身:身を整える。つまり姿勢を正すこと。そしてリラックスす
ることです。姿勢を正し、余分の所へ力を入れないことが大切 です。正しい姿勢とは、上虚下実。即ち、みぞおちより上の上 半身の力が抜け、臍下丹田(セイカタンデン)より下の下半身 に気が漲っている状態です。
◇調息:呼吸を調整する。功法によってそれぞれ独自の呼吸
法をとっていますが、私の行っている呼吸法は、腹式順呼吸法 で深呼吸法と呼ばれているものです。
◇調心:心を整えること。雑念が除かれ、ある一つのことに集
中できる精神状態を得ることを言います。このような精神の安 静状態に入ることを入静と言い、心の働きを意念、或ることに 集中することを意守と言います。例えば、意守丹田というの は、丹田に意識を集中することであります。
<深式呼吸法>
◇.姿勢:(立位)足を肩幅に開き、体をまっすぐ、リラックスし、
膝をゆるめ、手のひらの親指の下のふっくらした所の真中(魚 際のツボ)を臍に当てます。この時男性は左手を下に、女性は 右手を下に、もう一方の手をその上に重ねます。(座位)正座、 あぐら、椅子に腰掛けても結構です。体をまっすぐにし、持た れすぎないように、手は立位の時と同じです。(臣人位)仰向い て寝ます。足はまっすぐ伸ばし、交差します。平行にしても結構 です。両手は肘を蒲団につけ、掌は臍の近くに置きます。横向 きの場合は下の腕は曲げ、上の腕はまっすぐ体に沿って伸ば します。
◇呼吸:息を吸う時は鼻から吸い、最初は下腹に吸い込み、
徐々に上腹から胸に吸い込みます。息を止め、徐々に吐きま す。息が無くなったら、少し止め、次の呼吸に入ります。吸う時 間を1とすると、止める時間は3、吐く時間も3、次の止める時 間は1になります。即ち1、3、3、1のリズムで呼吸を行いま す。息を吸う時は腹を膨らませ、吐く時は腹をへこませます。 舌は上顎の歯の付け根につけ、目はつむります。息を吐く時 に、全身の気が丹田に集まるようにイメージし、肛門を締める ようにします。この呼吸法を10回位行い、それを毎日3〜5回 行って下さい。
◇気功は、調身・調息・調心を行うことによって、心身(生命場)
の秩序性を高め、その結果として、本来の生命力を最大限に 発揮させる方法で有ります。先に紹介しました深呼吸法以外 に、虚空連環法、厳新の呼吸法、足芯呼吸法等があります。 姿勢その他殆ど同じで、呼吸法が違います。吸う時は鼻から、 吐く時は口から、腹式呼吸を行うことは変わりません。
<虚空連環法>:息を吐く時、ゆっくり虚空迄届くようイメージ
します。虚空に繋がればそれを通して虚空からエネルギー (気) を吸い上げます。10回前後繰り返し、体の隅々まで気が 満ちてくれば成功です(後略)
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