2006.01.22〜2006.2.2 UP
NMBCが迎えた12年目のその日
第33回マーチングバンドバトントワーリング全国大会
2006年1月14日  in さいたまスーパーアリーナ

管理人の勝手な全国大会記
 全国大会のひとこま 2006.1.14  
※画像はM&B協会の許可を得た団体代表者撮影によるものです
 いざ出陣!

激励のお言葉
 午前5時。自然に目が覚めた。全国大会当日の朝だ。カーテンを開けると、まだ外は暗闇の世界。
 メンバーのみんなは、やれることは全部やったはず。大舞台に臆することなく、あとは精一杯の心を観衆に伝えるだけだ。
 午前6時、福島駅にメンバー全員が集合した。直前まで風邪でダウンしていた子もいたが、無事に全員が集まって一安心。
 先生方から励ましの言葉を受けたあと、子どもたちは大勢の見送り部隊にあいさつ。元気に新幹線に乗り込んでいった。

さあ出発 「行って来ます!」
 私は、福島西ICから高速道路で大宮に向かった。この時期にしては気温が高いが、栃木県内では結構強い雨に見舞われた。昨年の冷たい雨が思い起こされる。あのときの保護者たちの奮闘は凄かった・・・。
 岩槻ICを午前9時過ぎに降りた。今頃メンバーたちは、きっと最後の練習に励んでいるはず。そうだ、練習会場に行ってみよう!
 おお!やってる、やってる!
 会場は、ご好意でお借りできた地元の学校の体育館。校長先生はじめ先生方、保護者会の役員さんたちが練習を見まもっている。ここは本番前の不安感を消すだけでいい。うん!いい音出てるぞ! OK、OK! この演奏ができるのだから何も心配いらない。気負わずに普段通りやるだけだ。

練習会場にて

楽器積み込み隊のパパさんたち
 大会会場
 さて、私はメンバーたちよりも一足先に会場に向かった。会場は「さいたまスーパーアリーナ」。今年から、小学生の部と一般の部も、ここを会場として全国大会が開催される。
 おお! なんてでかい建物だ !!
 あれ、駐車場はどこ? 日本武道館のときは、会場前に物凄い数の楽器搬送車と貸切バスが並んでいたが、そんな車はどこにも見あたらない。
 「さいたまスーパーアリーナ P」と書かれた案内板があったので、半信半疑ながらそこに向かってみる。でも、駐車場らしいものは見つからない。
 おっ !? 駐車場は地下にあるのか?
 なんと! 楽器搬送車が建物に入って行くではないか! 凄い! 雨なんか降っても全然関係ないわけだ。これにはビックリ!
 地下駐車場入口には、「大会関係車両入口」と書かれていた。脇に係員の人が立っている。
 「あのぅ、一般客でも止めていいんですか?」と尋ねると、
 「大丈夫です。一般車両は右側をまっすぐ進んでください。」という指示。半信半疑で進んでみると、これまたビックリ。なんて広い駐車場なんだろう! しかも、管理室に申告すると、一日利用の場合は2000円の前金払いで駐車できるという。途中退場はできないが、これは良心的なシステムだ。
 地下駐車場からはエレベーターで会場に向かう。さて、何階に降りればいいのか。とりあえず1階に降りてみたが、なんだか雰囲気が違う。うろうろと歩いていると、アリーナのフロア入口に辿り着いてしまった。やばい!間違えた!1階というのはアリーナのフロアと同じ高さだ。でも待てよ? フロアには出演者らしい人たちが集まっている。 このアリーナ、なんか変だぞ? これはサブアリーナなの? こんなに広くて? そんなバカな!
 ところが、このアリーナ、あとで知ったのだが、コミュニティアリーナといって、可動式の客席を移動すると、メインアリーナと合体して巨大なドームになるしくみなのだそうだ(→詳細)。 いやぁ、仰天の連続だ。

さいたまスーパーアリーナ

会場入口に掲げられた大会の表示
 時計を見ると、もう小学生マーチングバンド小編成の部が始まっている時間だ。急がなければ!
 エレベーターを2階で降りると、屋根のない場所に出た。どうなってるの?とりあえず、他のお客さんたちが歩く方向に行って見ると、大会の表示板が見えた。 ふぅー、やっと到着だ。
 受付でチケットを提示すると、広い通路の脇に、ずらりと出店が並んでいる。楽器関係、映像関係、マーチング関連会社、おみやげ品などさまざまだ。
 チケットに明記されていた私の席は215入口。これって、2階の15番目の入口から入るようにという事らしい。歩いていくと、215と書かれた入口がようやく見つかった。武道館とはずいぶん勝手が違う。
 行ってみると、私の席は特等席みたいな場所だった。正面席のやや右側、まるで出演者の息づかいが聞こえてきそうな席だった。チケット発売の初日、つながらないFAXにめげずに粘った甲斐があった!
 それにしても会場は広い。客席は4階まであり、天井がはるか上の高さにある。武道館のようなきらびやかさとは違って、フロアの出演者にスポットが当てられるような照明。なるほどこれは凄い会場だ。
 フロアでは、マーチングバンド部門小学生小編成の部が始まっていた。やはり全国大会。実にハイレベルだ。この演奏演技に到達するまで、どれだけの努力があったのか、それを考えただけで、もう涙腺が緩んでくる。
 まもなく、反対側の客席にNMBCメンバーが入ってくるのが見えた。メンバーたちは、他の出演団体の演技を鑑賞するとともに、待機場所のようす、入場口から演技エリアまでの距離、ピット楽器やガード旗の置き場、退場ラインなどを確認して出番に備える。会場の生のようすを実際に目にし、メンバーの緊張が高まってくる。メンバーたちは3団体ほど見学してバックヤードに退出したようだった。ここから本番までの時間は、実に長く感じられるはず。なんとか平常心を保ってほしい。
 小編成の部も終盤。常連校が次々に登場する。小坪小のダイナミックなショー、第七砂町小のキレのある動き、泉野小のアッと言わせるような演出、どれをとっても見事だった。各校応援団の声援にも素晴らしいものがあった。各団体とも、こうした多くの人たちの支えがあって晴れの舞台を迎えたのだろう。演奏演技する子どもたちは、みんなが主役だ。助け合い、励まし合わなければこんな見事な演奏演技には辿り着かない。それを学校が、保護者が、卒業生が、そして地域の人たちが支えているのだろう。そして、子どもたちを支えたつもりでいた大人たちは、実は自分たちがマーチングから元気をもらっていたことに気付く。殺伐としたこの時代、マーチングの活動を通して地域の絆が深められているのだ。こんな素晴らしい活動、ほかにあるだろうか。
 このあと、会場は小学生の部バトントワーリング部門小編成の演技となった。バックヤードに退出した野田小メンバーたちは、ウォームアップエリアに移動。ここで10分間のウォームアップだが、この場所では音出しが禁じられている。メンバーたちはここで体をほぐし、軽い動作練習をしながら楽器を暖めた。いよいよ本番モードだ。緊張感が高まっていく。
 本番が約30分後に迫った。メンバーたちはチューニングルームに移動。ここで10分間のチューニングだ。高まる緊張は抑えられないが、今までやってきたことを発揮するだけだ。緊張を振り払うように音を出すメンバーたち・・・。
 チューニングが終わると、あとは入場を待つばかり。入場を控えたバトン4団体のうしろにメンバーたちが整列。搬出入補助員のお母さんたちが、帽子に羽を取り付ける。本番まであと20分。・・・整列して待機するだけのこの時間が、メンバーにとっては実に長い。
 バトン小編成の演技も終盤を迎えた。このあと、マーチングバンド部門大編成のトップを切って登場するのが野田小学校だ。出演順は、参加団体による抽選方式が3年ぶりに復活。クジ運の強い(?)野田小は、3年前の2番に続き、今度は最初を引き当ててしまった(笑)。
 バトン小編成の最後の団体が入場した。入場の幕が開いたとき、そのうしろに待機している野田小メンバーたちがチラリと見えた。左右交互から入場していた武道館のときと違い、もう出陣隊形をとって待機しなければならないのだ。見ているこっちだって緊張するのに、平常心を保てと言っても、こりゃ無理かもしれない。
 NMBC登場!
 さあ、いよいよNMBCの登場だ。会場のアナウンスが流れる。「続きまして、小学生の部マーチングバンド部門大編成前半10団体の演技に移りますが、準備が整いますまで、しばらくお待ち下さい」。
 うわぁ! あの態勢でまだ待たされるのか・・・。これは緊張の極地だろう。
 指揮台がセットされ、準備が整った。いよいよだ。
 幕が開いた。
 「それでは、小学生の部マーチングバンド部門大編成前半10団体を始めさせていただきます」
 ピッ、ピッ、ピッ、ポーン。 演技スタートを告げるアラーム音が鳴り響く。
 さあ、NMBCのメンバーたちが勢いよくフロアに飛び出した!
 「野田小ファイトー!」 会場からの声援が飛ぶ。4階席からは、一段と大きな声が聞こえてきた。

一斉に飛び出すNMBC
駆け足で入場! 1曲目のイントロ 軽快なステップでマーチを演奏
※当ページに掲載する全国大会の画像は、M&B協会の許可を得た団体代表者撮影によるものです(撮影:K&O)。
 「東北支部代表、福島県からの参加。福島市立野田小学校マーチングバンドクラブの皆さんです。今年、私たちは、ホルストの「木星」をはじめとして、イギリスの音楽を取り上げて構成しました。テーマタイトルは“The british ! ”。それではどうぞ!」
 不安だった入場も無事に済んだ。みんな落ち着いているように見える。心配ない。
 さあ、演奏開始だ。バスドラのイントロは完璧。まずはイングランド民謡「グリーンスリーブス」の「Greensleeves was my heart of gold〜」のフレーズから。緑の衣装をまとったガード隊が、大きな振りで導入を盛り上げ、そのあとの展開を予感させる。
 おお、来た来た!ファンファーレが鳴り響く。ホルストマーチの始まりだ。右に左にステップを切り返しながら、それでいて一つ一つの音がしっかり表現されている。みんな進歩したなぁ!
マークタイム To the box トランペットソリ
 さあ、縦の列がビシッと決まった。マークタイムから22.5度の角度でTo the box。 うん!OK!
 続いてはTpリーダーたちのソリだ。高音が続く難しい場面。いいぞ!緊張を吹き飛ばしてがんばった2人に大きな拍手が送られた。
 次に、この2人が合流して全体で移動するオブリックだ。一人でも遅れてしまう子がいると目立ってしまう。大丈夫だろうか?・・・
 おおっ! 4年生ががんばってるぞ! ビシッと揃ったまま左奥から右手前への移動に成功だ!
メリハリのある演奏で曲線に変化 曲線から3列に 1曲目のラスト
 このあとは、矩形から曲線・直線へと変化するキレの見せ所だ。演奏は一気にテンポアップ! 飛び跳ねるような演奏だ。
 クレッシェンドとデクレッシェンドを繰り返す。音の波が寄せては引き、また押し寄せてくる。いいぞいいぞ!
 この音を出しながら、メンバーたちは早ワザで曲線に変化していく。
 さあ1曲目最後の盛り上がりだ。曲線から3本の横列に。そして2列目・3列目が1列目に合流して1本に。
 何度も何度も練習した部分だ。加速を付けながら3列目が合流する。
 ・・・よし、決まった! 会場から大きな拍手が送られた。
ガードの6年生たち。ジュ○ィオングか!(古い!?) サウンドの聴かせどころ 2曲目ラストのシーン
 一転、曲は「グリーンスリーブス」に移る。
 ガード隊が羽を付けて登場。静かでもの悲しい調べを、美しい舞いが盛り上げていく。
 金管メンバーが振り向く。 おおっ、 その音だ! good!
 ガード隊が脇に下がり、静かなロングトーンとともに「グリーンスリーブス」の演奏が終わりを迎えた。
 金管メンバーは楽器を上げたままだ。「静」から「動」への展開を予感させる。
一転して「動」の演技へ チューバ隊がパワフルに演奏する 迫力満点の演奏
 さあ、間髪をおかずに「木星」の演奏だ! リズミカルなバッテリーの音! 低音の効いたパワフルな音!
 背中がゾクゾクするようなサウンドは迫力満点だ。! ぐいぐいと観衆を引き込んでゆく。
変幻自在!3拍子の動き ビシッと揃ったフォーメーション メロホン&ユーフォのソリ
 ここから曲は3拍子に。目にも止まらぬ動きを見せるメンバーたち。
 見事な演奏をしながら、一人一人が異なる動きを見せていく。ここが「木星」前半の見せ場だ。
 ユーフォを抱えた部長とマーチングメロホンの2人が前に出てくる。ゆっくりとジュピターのテーマを演奏。
 マーチングに賭けた3年間。精一杯伸ばす音に、その思いがこもる。
 会場の拍手を背中に浴びながら、3人が全体に合流。演奏はいよいよクライマックスを迎える。
カンパニーフロント フィニッシュに向けてガード隊が走る! 4年生のガードソロ。金管メンバーはアクセル全開!
 後方に下がったメンバーが一同に振り向いた。 横一線に並び、マークタイムからカンパニーフロントへ。 さぁ「行けー!」
 おおっ!厚みのある素晴らしい音色だ。 これぞNODAサウンド!前へ! 前へ! メンバーたちの心が会場一杯に広がる。
 さあ、いよいよラストに向けてスピードアップ! アクセル全開だ!
 横一線に並んでいたメンバーが曲線になる。真っ赤な大旗を回しながら、ガード隊が走る!走る!
 金管メンバーはフロア中央にグイッ、グイッと集まって6本の縦列に変化。目にも止まらぬ速さだ!
前進! 前進! 決まった! 歓声と拍手がメンバーたちを包む
 さあフィニッシュだ。
 6本の縦列が波形に変化。波が一直線になり、さらに5人一組のコンパス回転。
 コンパス回転の間を縫ってガード隊が前方移動。追いかけるように金管・バッテリー隊が前進する! 凄い動き! 凄い音だ!
 やった! 決まった!
 「ブラボー!」 歓声と拍手がメンバーたちを包む。
 無事に演奏演技を終えたメンバーたちは、堂々とフロアをあとにした。ほっと一安心だろう。
 ふと気が付くと、さっきまでバトンの応援をしていた方たちが、ハンカチで目を拭っている。
 「観る人聴く人に感動していただける演奏演技」を目標にがんばってきたNMBCメンバーたち。
 その目標に到達した瞬間だった。 嬉しいっ!
 解 放 感
 このあとは記念写真の撮影と楽器類の積み込みだ。何かお手伝いできることがあるかな?と思って客席を離れた私だったが、この会場は、客席と出演者エリアが完全に分離されている。撤収作業は建物の中ですべて完結し、搬出入担当の役員さんたちが全部行うことになる。武道館の時は、それこそ自衛官などマッスル系のお父さんたちが楽器をかついで階段を駆け上がり、関係者エリアの外で待つ保護者たちにリレーしてトラックに積み込んでいた。今年からそんな光景は見られない。記念写真の撮影風景を北の丸公園側から眺めるなんて事もできなくなった。安心な反面、「お疲れさま」の一言もかけられないのは少し淋しい感じがした。
 さて、本番を終えたメンバーたちは、さっそく記念写真の撮影。力を出し切ったメンバーたちは、みな晴れやかな表情。
 撮影終了後、役員さんたちが羽を回収。閉会式に出るメンバー以外はここで着替えを済ます。地下にはちゃんと更衣室もあり、ガードメンバーや先生方もここで着替えることができる。今までみたいに貸切バスの中で着替えなくてもいいわけだ。
 メンバーたちにお弁当が配られる。待ちに待った昼食だ。緊張から解き放たれ、ようやく食べ物が喉を通るようになったことだろう。このあと、メンバーたちにとっては他団体の見学と自由行動の時間だ。
 会場では、マーチング部門の演奏演技が続いていた。野田小の出番が終わってホッとした私だったが、これから出演する団体の子どもたちは、今がまさに緊張の真っ只中。各団体それぞれに独自のカラーがあり、甲乙つけがたい演技を見せてくれていた。特に印象に残ったのは岩手の常盤小。東北大会でも、迫力ある素晴らしい演奏と躍動的な動きに圧倒されたが、今度はなんと、一輪車に乗りながらのトロンボーンソロまで登場!観客から大きな喝采を浴びていた。
 このあと、会場はバトン部門大編成とカラーガード部門の演技に移った。ここで私も休憩タイムとした。通路に出ると、そこにはケン○ッキーとかロッ○リアなどのファーストフード店がテナントを構えている。ここで昼食を仕入れるのだが、座って食べられるような場所はほとんどないので、多くの人が立ち食いの状態。去年までのように、積み込み終了後のビールというのが無いのもちょっと淋しいかな・・・。
 せっかくなので、いろんな出店にも足を運んでみた。そこでは、出番が終わったたくさんの小学生たちが買い物をしていた。友達へのおみやげや、自分へのご褒美とする記念品などを買い集めているのだろう。小学生たちで特に賑わっている売り場がある。何を売っているのかな?と思うと、バッジやストラップなどのグッズ売り場だった。この大会のためのオリジナルグッズなのか、楽器やバトンを回すハローキ○ィのキーホルダーまで賞品化されていた !!
 マーチング部門の大編成後半が始まった。後半のトップバッターは、あの水海道小学校だ。赤と白のかわいいコスチューム、フロアに登場しただけで、一面に花が咲いたようだった。まずはトランペットソロに驚き、続いて全体のサウンドに驚かされた。柔らかくてストレートで厚みのある音、そしてその表現力・・・。テーマタイトルは「Home sweet Home」。望郷、家族、そしておそらくは平和への思いも託されたテーマが、暖かみのある演奏で見事なまでに表現されていた。
 このほか、春夏秋冬をメリハリを効かせて美しく表現した下野庭小は「さすが!」といった感じ。最終出演団体の安城南部小まで、いずれ劣らぬ各団体の演奏演技に、ただただ感激の連続だった。
 閉会式
 全団体の演技が終了。エキシビションでは世界バトン選手権の金メダリストたちの演技に息をのむ。続いては綜合警備保障女子儀杖隊ビバーチェの皆さんの見事なショー。会場が大いに沸いた。
 17時30分、福島で待つ留守部隊からメールが届いた。「トラック、無事到着」という連絡だった。楽器類が野田小に戻り着いたようだ。学校では、教頭先生のほか、HP前管理人をはじめとする3〜4年前の保護者と卒業生が7人ほど集まってくれていた。これから楽器を降ろして校内に運んでくれるという。みな、NMBCを愛し、なんらかの形で協力したいという人たちばかりだ。
 いよいよ閉会式。出演団体がフロアに勢揃いする。野田小からは、6年生メンバー15名と、副部長の5年生1名が閉会式に臨んだ。講評のあと、審査結果の発表となる。精一杯やったという満足感はあっても、それがどう評価されるのかはわからない。
 メンバーにとっては、おそらくは無我夢中なまま過ぎてしまった8分間だろう。確かに細かいミスはあった。部分部分だけをとってみれば、必ずしもベストの出来とは言えなかったかもしれない。でも、そのような細かなミスを遙かに上回る迫真の演奏演技を大舞台で披露してくれた。その心は、間違いなく会場の大観衆に届いている。その事は信じていい。心配はいらない。
 刻一刻と「その時」が近づいてくる。
 バトン部門、カラーガード部門の発表に続き、いよいよマーチングバンド部門小学生の部の発表に移る。出演順に、一団体ずつ審査結果が言い渡されていく。ゴールド(金賞)受賞団体から、歓喜の声が上がっていく。
 小編成10団体の結果発表が終わった。
 いよいよだ。
 NMBCメンバーにとって、受容できる結果は「ゴールド」以外に無い。
 「続いて大編成の審査結果を発表します。 福島市立野田小学校マーチングバンドクラブ・・・」
 握りしめた両手に力が入る。
 「シルバー。」
 ・・・・・・・・・・・ ! !
 その一瞬、空気が凍り付き、メンバーたちが硬直した。
 にわかには信じがたい、いや、認めたくない結果。メンバーたちの血のにじむような努力が、ほんの一言で結論づけられたような虚無感にさいなまれる。聞き間違いではないのか? できるなら時計の針を元に戻し、もう一度確認したい衝動にかられる。
 無情にも結果発表はどんどん先に進んでいく。「ゴールド!」というアナウンスのたびに「ワァーッ!」という歓声が上がる。朦朧としたメンバーに、その声は届かない。
 野田の子どもたちは、人前に立ったとき、喜怒哀楽を表現するのが苦手だ。
 県大会や東北大会で代表推薦に選ばれても、野田の子どもたちが会場で歓声を上げた姿を私は見たことがない。先生がそうしろと言ったわけではない。いつの頃からか、自然にそうなった。
 そんな子どもたちの態度に対し、「子どもらしくない」とか「選ばれて当然だと思っているのか」などという批判が加えられたこともあったらしい。でも、そうではない。会場で一緒に演奏演技し、不運にも代表に選ばれなかった団体の気持ちを配慮してのことだ。全国大会でもそうだった。フェイバリット賞や金賞を受賞しても、客席の保護者たちの歓喜をよそに、子どもたちはつとめて平静を保っていた。
 それがいま逆の立場になった。次々に沸き起こる歓声。それでも平静を保とうとしているメンバーたちが痛々しい。
 結果発表が終わり、会場は受賞団体への表彰に移った。
 すべての出演団体が表彰風景を見つめる中、フロアに並んだ野田小メンバー16人だけが顔を上げることができない。我慢していたものが溢れ出し、とめどなく流れ落ちる。一人、二人・・・そのうち嗚咽が漏れ、全員が肩を震わせ始めた。
 下を向き、帽子の庇の陰で涙を拭う。そして、がんばって顔を上げようとする。しかし、いくら拭っても涙が止まらない。どうしても顔を上げることが出来ないメンバーたちだった。
 閉会式が終了。出演団体が退場していく。客席からの声援に応え、手を振りながら退場する子どもたちがいる一方で、うつむいたままの野田小メンバーたちがフロアをあとにする。退場口に消えていく野田小メンバーたちに、私は声にならない声援を心の中で送った。
 「君たちは素晴らしかった。君たちは最高の感動を私たちに与えてくれた。誰がなんといおうと、君たちの今日までの頑張りにケチをつけられる人なんかいない。下を向くことなんかない。胸を張って福島に帰って来るんだよ」と・・・・・。
 つらい役目だったが、野田小で楽器降ろしをしている留守部隊にメールを送った。電話したところで、たぶん声にならない。様々な思いを胸に、私は会場をあとにした。
 アリーナの屋根に、野田小マーチングバンドクラブの涙雨が降り注いでいた。
 福島に戻る車中、ハンドルを握る私の脳裏には、閉会式のときの6年生の姿が何度も去来した。
 あの子たちがマーチングの活動を始めたのは、主に平成15年の春だった。圧倒的な技量を備えた35名ものメンバーが卒業し、そのあとに入部してきたのが今の6年生たちだった。
 NMBC創設以来初めての40人台という部員数。その半分弱が新入部員という現実と、それまでの実績とのギャップ・・・。底力を上げるため、吹奏楽コンクールにも初挑戦し、月に2回以上のイベント出演をこなしながら、本番慣れする度胸と地力を養った。人数が少ないから、一人一人が目一杯、それこそ120%の力を発揮できてようやく野田らしい演奏演技に近づいていった。ひとたびユニフォームを着てフロアに出ると、その変身ぶりは周囲の大人を驚かせた。そして、あの「ロシアの心にふれてU」が生まれた。「展覧会の絵」のラストは、多くの人たちの感涙を誘った。
 昨年は中堅としてクラブを支え、今年は最上級生として4・5年生を引っ張った。その頑張りは、NMBCの練習ぶりを見たことがある人なら、誰もが認めるところだろう。子どもたちどうしの世界では、いろんなこともある。さらに、厳しい練習には反動もある。必ずしも褒められることばかりではなかったが、それだけに余計いとおしく感じる子たちでもあった。東北大会終了後、彼らは1分1秒をもムダにしない集中力を身につけていった。
 その子どもたちを支えてきたのは、先生方が一丸となっての学校のバックアップであり、保護者会の皆さんたちのサポートだった。休日、野田小の前を通るたび、昇降口前には保護者会の役員さんたちの車がいつも止まっていた。寸暇を惜しみ、生活の大部分をバンド支援に費やしてきた日々。子どもたちも心配だが、同行している役員さんたちは、今どうしているのだろう。時計を見ると午後8時になろうとしていた。夕食会場に着く頃だ。きっと、子どもたちの手前、つとめて平静を装いながら、メンバーのお世話をしているに違いない。
 感謝の心を込めて
 その頃、メンバーたちは貸切バスで夕食会場に向かっていた。この日の夕食会場は東京タワーだ。
 バスガイドさんがにこやかに語りかける。
 「皆さん、東京タワーは初めてですか?」
 悔しさと虚脱感でメンバーの反応は鈍い。
 「東京タワーは夜になるとライトアップされますが、夏の期間だけは照明の色が変わります。さて、何色になるか、皆さんわかりますか?」
 目を赤く腫らしたメンバーたちに、東京タワーの色などどうでもいい話だ。
 「ではクイズです。1番が赤、2番がイエロー、3番がシルバー。さあ、何番でしょう?」
 「・・・・・」
 去年も感じたことだが、接客業というのはもっとプロ意識を持ち、お客様の立場に立って事前研修をしておくべきだ。
 「では正解を発表します。正解は3番。シルバーです!」
 ・・・・・・ !!
 なんて無神経な!ウソでもいいからゴールドと言えよ!
 宿泊先に到着した時には、もう午後9時を回っていた。野田小マーチングバンドクラブの長い一日はまだ終わらない。
 毎年、メンバーたちは一年間の活動を振り返りながら作文を書くことになっている。作文といっても、半ページほどの短文だが、3月には文集として発行する習慣になっている。文集の編集作業もクラブ活動の一環だ。
 ここ数年は、全国大会当日の夜が作文タイムとなっている。早く休みたいので、だいたいのメンバーは一気に書き上げ、お風呂に入って10時半ごろには就寝してしまう。全国大会の興奮と余韻がさめやらぬまま書く作文なので、話し言葉のような文章になってしまうことも多い。
 あとで聞いた話だが、メンバーたちは、宿泊先に着いてからも泣き通しだったらしい。作文など書けたのだろうか。涙の滲んだ原稿もあったのかもしれない。
 翌日、メンバーたちはTDLなどで社会科見学を楽しむことができた。今までの頑張りに対する、保護者たちからのご褒美だ。切り替えも早いのが野田っ子の特徴(笑)。存分に楽しみ、たくさんのおみやげを抱えて福島に帰って来た。
 福島駅に戻り着いたメンバーたちを、大勢の保護者と先生方が出迎えた。
 「よくやったぞ!」
 大舞台で、最高の演奏演技を披露してくれたメンバーたちに、暖かい大きな拍手が送られた。
 今年度の野田小マーチングバンドクラブの活動は、まだまだ終わらない。
 バンドを支えてくれたすべての人々への感謝の気持ちを込めたコンサートが、2月25日に行われる。
 6年生にとっては、これがおそらく最後の舞台となる。
 全国大会に行けなかった多くの人たちにも、NMBCはきっとまた大きな感動を与えてくれるに違いない。そして私たちも、NMBCへの感謝の気持ちを込め、客席から精一杯の声援を送ることだろう。

出迎えの保護者たちにあいさつ「ありがとうございました!」
 メンバー、先生方、保護者の皆さんたちが一丸となって作り上げてきた今年のNMBC。
 コンサートでその集大成に触れられることを楽しみにしながら、本大会記を閉じることとしたい。
 メンバーと関係者の皆さん、本当にお疲れさまでした !!  (2006.2.2擱筆)
 管理人から
 本大会記の掲載にあたり、保護者の方々と先生方から、たくさんの情報と画像の提供を賜りました。厚く御礼申し上げます。なお、メンバーに同行して執筆したものではありませんので、事実に反する内容がありました場合は、メールにてご指摘いただければ幸いです。
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