2年の3学期になってからだった。もう高校進学はしないと突然に宣言をした。だからもうテスト勉強などしないと。そして部活もつまらなくなったからやめるとも言った。そしてテスト期間中にもそのA君のアパートに入り浸って、家にいるときはほとんど寝ていた。
思い出せば、息子がアパートに出向くことがほとんどで、仲間の彼らが我が家に来ることはまったくなくなっていた。以前はうちにもたまには遊びにきていたし、A君たちを一緒に遊びにも連れて行ったこともあったのに…。
よく、話を聞くとA君のお姉さんが高校を中退してドカタで働き出したと言う。勉強よりよほど楽しいと言っているらしい。でも息子たちには高校に行けよとはアドバイスもしてくれてはいるらしいが、自分には勉強は向いていないことがわかったから、高校に行っても仕方がない、とにかく早く働いてこの家を出て行きたいと言う。私がどんなに説得しても聞く耳を持たなかった。
そのときはまだそれがニコチン依存のためだとは気がつかなかった。すべてA君とその姉の影響だと思っていた。私は夫に相談した。夫もはじめは私の心配しすぎで、自分がちょっと説教すればすぐ元に戻ると軽く考えていたようだ。そして休日になり、息子を呼んで説教を始めた。ところがそこにいる息子はちょっと前までの息子とはまったく違った人間だった。
なぜこんなに急に変わってしまったのか。思春期とはいってもあまりに急だ。以前の幼いかわいい息子ではなく、どうしようもない不良に見えた。
あまりに反抗的な息子に、夫は思わず殴ってしまった。初めてだった。息子はショックで逃げていってしまった。やっと探し回ってみつけたのは、A君の家。 電話をしても通じないA君の家にたずねて行った夫は、いきなり「おまえみたいなやつにこどもは渡さない。」と言われたらしく、それから息子を取り戻すまでに一騒動だった。息子が落ち着いてから、夫はもう二度とA君のアパートには行くなと命令した。
息子もしぶしぶと納得したが、ニコチン依存になっていた彼には約束など守るつもりは まったくなかったようだ。
それから数日後、いつもより早く帰宅できた私は、ついに息子がまた別の友人Y君と部屋でタバコを吸っているのをみつけてしまった。「タバコ吸ってるの?」とたずねると、このときは素直に「やめようと思って、何回もやめようとしたけど、やめられなくなってしまった。病院に行きたい。」と告白した。
息子がこのとき、いきなり病院に行きたいと言い出したのには、数ヶ月前に私が見せたニコチン依存の新聞記事を覚えていたからだと思った。
「いつから吸っているの?」との私の問いに「夏ごろから。友達が公園で吸っているのを みかけたので、1本もらって吸った。それからずっと吸っている。」という。
もしかしたら、私が見せた記事を依存症になっても病院に行けば簡単に治ると勘違いしてしまったのか。