掃 除 と 少 年
桜もすっかり風に散らされ、足元に白い絨毯を残して消えた頃。
その残った花びらを更に消そうとする者あり。
「こんなモンほっときゃ勝手になくなるであろうに。くそぅ、ジジィめ。面倒くさい」
竹箒をがっしょがっしょと振り回すその動作、どうやら本意ではないらしい。しかし、
それも自業自得である。
というのも桜の花に白く染められた庭はちょっとした公園くらいの広さがあり、玉虚宮
では毎年そこで花見をしているのだが、彼は隠し芸大会に突入した宴会で自分の師匠の
ご自慢の髭(の一部)をさっくり切ってしまったのである。
事故だった。
しかし経過が悪かった。
『す、すいませぬ原始天尊さまッ!?』
『気にすんなよォ、太公望。事故なんだから!』
『むぅ、それはそうだが』
『たいしたことナイナイ。雲中子に頼めばす〜ぐ伸ばしてくれるって!』
『ああ、毛を伸ばすのは非常にカンタンだよ。伸ばすのは、ね』
『またエラく強調するでちゅね〜?』
『いやなに。毛を生やすのは不可能なのでね。普通のご老人ならともかく、あそこまで
年季が入っているとねぇ』
セリフと共にどこからともなくライトアップされる問題の頭部。
ぴかーっ☆
場内大爆笑。
…笑われた当人はさすがに崑崙の教主としてせっかくの宴席をぶちこわすような無粋は
しなかった。…が、忘れたりもしなかったので発端になった彼に必要もない掃除をさせ
ているのであった。
「元はと言えば自分が剣舞が見たいなんぞと言いおるからではないか。それに皆笑って
おったのになんでワシだけが…」
「やっぱり避けられたのに避けなかったからじゃない?」
「…やはりバレておったのかのう」
差し入れに麦茶を持ってきた同期の兄弟弟子に少しきまり悪げな顔を返して、硝子杯を受
け取る。
「でもその代わりに桜は切らないで済んだんだし、原始天尊さまのお髭も今はちゃんとそ
ろってるし、いいんじゃない?」
「むー」
「ほら、お掃除僕も手伝うからさ」
◆季節ネタ第2弾でしたー。
03/04/18 16:58:20