蝸牛と科学者
下界では鬱陶しい長い雨が続くこの季節、崑崙はさほど雨など降らぬ高度に浮かんでいるが、それでは水不足になるという配慮の元やはり梅雨に突入する。
そのためこの時期の修行は書物に頼ることになりがちなのだが、彼らはその日他の洞府へと出向かされていた。
「で、今日は何の実験につきあわされるのだ?」
妙にエラそうに尋ねる後輩に気分を害した様子もなく、彼らの先輩仙人が答えるには、
「すっごくキミ向きの宝貝を試作したんだけどさぁ、ちょっとモニターになってくれない?」
「自分じゃ試してみなかったの?」
「ちょっと主観だと分かりにくくてねぇ」
仙人に尋ねる友人と同様の疑問とともに、すっごくキミ向き、という言い方に何か引っかかる物を憶えたものの、とにかく退屈していた彼は、その一抱えはある平べったい巻き貝のような宝貝を言われるままに背中にくっつけてみた。
「おぃゃやぁぁあぁぁ……?」
……………
「ねぇ、太乙。望ちゃん固まっちゃったけど」
「あれ。相対速度の設定間違えちゃったかな〜;」
外見だけは上機嫌に見える後輩と彫像のようになってしまった後輩を交互に見ながら、仙人はニコニコしながら冷や汗をだらだらとたらし始めた。…彼は確かに少年達の先輩でそれなりの地位にある仙人なのだが、精神的にはむしろ立場が低いのだ。
「ああああああああ。結構苦労したのにいぃ……」
「ふむ。ちぃと勿体なかったかかもしれんのう」
「気にすることないよ? あんな欠陥品作る方が悪いんだから」
「別に壊れてたワケじゃないって言ったのにぃ〜!」
本来なら蝸牛のようにのんびり昼寝しまくって過ごしても時間をロスしない…つまり身体能力加速宝貝を作ったはずが設定間違いのために減速装置と化し。それが外部からの緊急停止を行えない形式で作られていたために。
問題の宝貝はぶち壊されて3人の足元に散らばるという末路をたどることとなったのだった。
「ゆくゆくはこの貝の部分に異次元収納機能を付けて携帯ハウスな感じにしようと思ってたのに〜」
「おぬし……、それは猫型ロボのひみつ道具のパクリになるからやめよ」
「あ、デンデ○ハウスだっけ?」
ひとまず暇つぶしにはなったと言うことである。
◆季節ネタシリーズ、ぎりぎり6月内にUP〜。
さて、最近見るのは殻なしカタツムリ=なめくじばかりです。殻がついてる方が可愛いですが、どっちにしろ庭の害虫なんですよねー。
03/06/26