霧 と 友 人
それは白、と言うより白に限りなく近い灰色かもしれない。
それは遠くなるほどに全ての物の色と輪郭をあいまいにして、頼りない気分を更に強くする。
でも、二人でいるとそんな気分になんてなるヒマがなくて。
朝起きると、霧のまっただ中だった。
「すごいねぇ。初めてじゃない、崑崙でこんなのって」
水色頭の少年が彼にしては珍しく辺りをキョロキョロ見やるのとは対照的に、頭巾頭の少年は思案顔で
「んん? そうだな……。てか、有りえんだろコレは。おそらくは誰ぞの宝貝の実験の産物であろうが……」
とか言いながら歩きかけて、
ゴンッ
何かにけっつまづいた。
「〜〜〜〜〜〜!!!?」
「目つぶって考え事しながら歩くと危ないよ、望ちゃん」
「違う! 昨日まで此処にこんな物なかったのだっ」
だからこんなことあるはずがないのに と、しゃがみ込み痛みに悶えながら叫ぶ彼に、隣にいる友人はあっさり
「ああ、昨夜寝る前に僕が出したものだからね」
大丈夫?と尋ねるその顔には辺りの霧とはうって変わって一片の曇りもなくいつも通りの穏やかな笑顔が。
「謝るとかないのか、このエセ聖人がっ」
顔をしかめ、靴を脱いでつま先を確認する彼に、エセ聖人と呼ばれた少年は涼しい顔。
「あのね、望ちゃん。よく見てよ。その箱見覚えあるでしょう?」
何の変哲もない箱だ。見覚えなんて………あ゛。
マジックで『わしの』とか書いてある。
「それねぇ。邪魔だから持って帰ってって言ったよね。最後には捨てるってのも言ったはずだよね」
別段怒った顔をしている訳でもないが、視線を何処か遠くに向けて、
「ゴミの日は明後日だからとりあえず外に出したんだけどね…」
「わしが悪ぅございました」
「そう?」
首を傾げる彼に苦笑い。この友人は本当に、怒っているんだかいなんだか。
「うむ。しかし、そうなるとどこに隠そうかのう……」
「……何が入っているの?」
「石だ」
「……返した方がいいんじゃないかな。いや、もう、どんな石かは知らないけれど」
苦笑したままぼそりと呟いた思案の言葉の意味を、相手はきっちり理解したらしい。
「じじぃもわしを疑っているようだが、面白い模様が浮いてるとはいえモノ自体は普通の石だ。そのうちほとぼりも冷める。そうしたら名前は言えぬが12仙のとある触覚付きの奴と話がついておって…」
「あ〜、今日はいい天気だねぇ」
「ドコがだ!? 」
後日、頭巾頭の少年はサングラスと触覚がトレードマーク?の某12仙から秘伝の漬け物をせしめたそうだが、何割かは口止め料とのことで同期の道士に持って行かれたらしい。
後になっても霧を見るとこの友人のことが思い出されるようになったのは、これが最初のことだとか。
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◆最近すごい霧を体験したものですから、こんな話が。…季節ネタ、なのかなぁ? ちなみに件の『石』は、な○でも鑑定団・石鑑定大会で高値が付くような奴らしいですよ。 03/11/14 |
