夏 の 水 辺  〜崑崙の休日〜




「は〜、けっこう冷えちゃったね」
「うむ、そうだな」
 初夏の川辺。水遊び日和な本日正午、サボり決行二人組がここに。
「あ〜、この石の暖かさがたまらないー」
 岸に上がった普賢はほどよく暖まった岩の上で大の字になる。普段ならそんな事をまっ先にするのは太公望の方だが、唇が少し青みがかっている普賢と違い彼はまだ余裕で水の中だった。
「この時期はまだ、な。真夏に同じ事したら鉄板焼き状態だぞ(ニヤリ)」
「だから今楽しむんだよ。そうでしょ?」
「確かに!」
 でなきゃ今頃原始天尊の書庫掃除をしていたはずだ。お掃除日和でもあるわけだし。―――割りを食ったのは白鶴だったりする。合掌。

(お、鮎がおるな…。いやまぁ、釣らんが…)
 水の流れはゆるやかで、潜っても光に満ちた空間の中、かなり遠いところまで見通せる。上を向けば鏡のような水面のむこうに広がる青い色。それが日に灼かれた視界によって赤みがかって見えるようになったころ、太公望も泳ぐのをやめ岸に残した普賢のもとへ戻る事にした。
「おーい、普賢。弁当はどこに……って、痛くないのか?おぬし」
 普賢は岩の上から石河原に場所を移して、いまだに寝転がっていた。
「え? 痛くないよ。ちょうどツボにあたってるからむしろ気持ちいいかな」
「そんなトコで平気で寝ておれる奴は“新春2時間ドラマ秘湯めぐり殺人事件楽しい川下りが一変旅行好き主婦トリオの華麗なる推理?”の死体役くらいだと思うが」
「そんなことないって」
「少なくとも頭は痛そうに見えるがのう」
 そう言いながら荷物をあさって目的の弁当を取り出した太公望は、普賢の頭のすぐ横に腰を下ろし足を投げ出した。
「食わんのか?」
「今はいいよ、って何するの?」
 頭を急につかまれたらさすがの普賢もびっくりする。
「おぬし、よく見たらちょっち顔色悪いな。もしかして無理しとらんか」
「う〜ん。無理はしてないけど、昨日夜更かししてたかも?」
 普賢の得意技のひとつにニッコリ笑顔に隠したポーカーフェイスがあったりするが、顔色自体は隠せないので正直に白状する。
「…ま、無理しとらんのならよい」
 ぽいっ と普賢の頭を離して食事を始めた太公望だったが、頭の落ちた先は彼のひざの上。
「…枕にしちゃって良いのかな」
「別に食いこぼしたりはせんから心配するな」

 

 修業時代のとある一日の話。

2003/1/7

 ●駄文な気分●

 200Hit記念フリー小話でした。この頃はまだ文字寄りの更新をしてましたねぇ……。
 さて、書いた日付は冬なのになぜ夏の話かと言うと当時の日記でこんな絵を描いたあと浮かんだ物だから。どうも膝枕が書きたかったようです。

 

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