
傾聴とは何か?
- 人の成長を信じる
- 情緒面に焦点をあてる事が大切
- 早い、簡単、安易を第一に考えないようにする
- ある程度の専門的技術に基づく
- 傾聴をする際に考えておくこと
- 傾聴における大切な3つの基本姿勢(聴き手側)
- 関わり行動(聴き手側)
- 傾聴技法=関わり技法(聴き手側)
1.人の成長を信じる
傾聴技法を大切にするカウンセリングは、啓蒙思想が主軸となっている。
☆ 啓蒙思想=生前説(生まれつき人間は良い存在である)
☆ ロジャーズは、悩み相談者を分析的に見るよりも人をその人が感じるままを大切にする事の重要性を説いている。
☆ 精神分析を大切にするカウンセリングは、実存思想が主軸となっている。なので、患者を分析し、解釈をしながらカウンセリングがされる。
☆ 精神分析では、人間は生まれもって悪い存在なので、分析や解釈をし、患者を患者自身の問題に気づかせ、導いてあげる必要がある。
☆ 実存思想=生悪説(生まれつき人間は悪い存在である)
(ロジャーズの人間観)
成長仮説、実現的傾向
☆ 人間には自分の持つ能力や可能性を実現し、充分に発揮していこうとする基本姿勢がある。
悩みを通しての自己成長学の例
三浦綾子著 言葉の花束より引用した一節
「忘れえぬ言葉」
身体不自由児や知的障害者には、どこかぴかっと光り輝くものがあるような気がする。知的障害はあるが気立てが良いとか、疑うことを知らないとか、体が不自由でも、人の痛みを素早く感じ得るとか、感受性が豊かだとか、本当に宝と言えるものを秘めている人々が少なくないのだ。
その宝を見出すことができないのは、なぜか。それは、いたずらに世間体をはばかるところにあるのではないか。この世の大事なものを、真に継承していくのは、いわゆる秀才でもなければ、病気一つしたこともない人間でもないような気がする。
「明日のあなたへ」
私は長い病気の間、この世に病気がなければ良いと思った。自分の人生に、こんなに病みつづける日が来ようとは・・と嘆いたこともあった。だが、今となっては、自分の人生をふり返ってみるのに、その受けた試練は、宝石のようなものだと感じている。もしも今まで、ただの一度も試練に遭わず、つまり愛する人との死別にも遭わず、病むことを知らず、思いのままになる人生であったとしたら、私は涙というものを知らない人間になったであろう。
このような気づきを悩みの渦中にある当事者が、聴き手と言語的及び非言語的コミュニケーションを通して得ていく事が出来るようになることが、傾聴の醍醐味だといえる。
諸富先生(日本のロジャーズ派の中では有名な先生である。彼は、ロジャーズ入門という本を書いている。)がいう、「カウンセリングの目的は、自己成長であり、問題を除去する事ではないし、症状を無くす事ではない」というのが傾聴カウンセリングの一番大切な定義である。
2.情緒面に焦点をあてる事が大切
☆ 悩み相談者が表現しているもの(主に思い)を受け止める。
傾聴=聞く事=いろいろな聞き方がある。
A)聞く=てきとうに聞く
B)訊く=尋問的に訊く
C)聴く=耳と目と心で相手を聴く
☆ (ロジャーズ)無条件の肯定的関心、共感的理解、自己一致が、悩み相談者が心を開くための大切なキーになる。
☆ ロジャーズ傾聴とは理論で解るものではなく、体で体得していくもの。
3.早い、簡単、安易を第一に考えないようにする
☆ 成長するという事は、必ずしも一般がいう楽になるという事ではなく、悩み相談者が自分自身で問題を引き受け、乗り越えていくという事。
☆ 悩み相談者の問題指摘ではなく、援助していく事が大切。
☆ 悩み相談者が何を求めているのかについて注意をはらう必要性がある。
4.ある程度の専門的技術に基づく
1)傾聴訓練の継続
傾聴は、日々心を聴く訓練を怠ると、鈍る。
2)ケース検討
自分で抱えきれない事例は、精神科医や心理カウンセラーに相談する。
3)教育分析
聴き手が心理カウンセラーにカウンセリングを受ける。
何故教育分析が大切か?
フロイトも実際問題として逆転移になりそうな事が多々あったことを開示している。以下のフロイトの体験がそれである。
↓
(フロイト)
「患者が恋愛感情を示してくる事について、私個人に興味があると考える事はしないだけの謙虚さを私は持っていた。しかし、実際はカウンセラーの年齢や性別という事は無視出来ないし、それだけではなく、性格や人生経験という事も影響する。」
☆ 転移、逆転移の問題が傾聴をしている最中に生ずる事がある。逆転移は特に気をつける必要がある。逆転移が起きた時は、そのケースは他の人に任せる事が大切。
悩み相談者からの転移のプラスの側面とマイナスの側面
A)+の側面:過度な甘え、親密性、尊敬
B)−の側面:攻撃性、敵意
5.傾聴をする際に考えておくこと
1)その人の当たり前を受容する事。
今、目の前にいる悩み相談者が示している状態、問題や症状も含め、話し手が表現しているものを、徹底して肯定する事により、そこから何かが生まれてくる。
2)なんらかの自分の価値観の強制をしない事。
自分の価値観を相手にアドバイスとして与えた時に、さらに深い問題に発展するケースもありえる。
6.傾聴における大切な3つの基本姿勢(聴き手側)
1)自己一致
悩み相談者の話を聴いている時、自分の中で沸き起こってきている自分自身の感情に気づき、その自分自身の沸き起こってきた感情を、話し手の話しを聴いている時、常に横におき、話し手の話しを、自分の感情の色眼鏡で聞くのではなく、あるがままの悩み相談者の話を常に聴ける状態にしておくこと。
2)無条件の肯定的関心
どんな状況にあっても話し手に関心を持ち、話し手を受容してあげる。
3)共感的理解
(AS IF(あたかも〜のように)の形)
7.関わり行動(聴き手側)
1)視線を合わせる
2)身体言語(非言語に気をつける)
3)声のトーン(冷息=冷たい息 暖息=暖かい息)
4)言語的追跡(話の腰を折らない、話し手の話している事によりそう)
8.傾聴技法=関わり技法(聴き手側)
1)沈黙
A)悩み相談者が自己洞察している時の沈黙は大切にする
B)悩み相談者が何を言っていいか混乱している時の沈黙に対しては、要約をする
C)悩み相談者が聴き手に反感を持っている時の沈黙は、自己開示をする
2)相槌
3)質問技法
A)閉ざされた質問
(答えが限定されてしまう質問)
YES、NOで答えられる質問
WHO、WHEN、WHEREなど一言で答えられる質問B)開かれた質問
(答えが発展していく質問)
WHAT、HOWで答える質問
*WHYは、訊く系質問だから、WHYはWHATに変換するC)意味の反映技法
〜というのはあなたにとってどういった意味があるのでしょうか?
*信頼関係が深まってから使用したほうが良い質問
4)繰り返し
悩み相談者のお話の中で、話し手にとって最も大切部分を繰り返す
(話し手の感情が表れている部分や、話の焦点の部分など)
5)要約
A)事柄
悩み相談者) こないだ名古屋で万博があると聞いて、観光にいってきました。
聴き手) こないだ名古屋万博を観に行ってきたのですね。B)感情
悩み相談者) 部長が、部下の意見を聞かないので、上手くやっていく
自信がないのです。
聴き手) 部下の意見を聞いてくれない部長さんと、仕事を上手くやって
いけるか不安なのですね。C)意味
悩み相談者) (退職して)そうなんです。私はこの会社に勤めて40年に
なるのですが、仕事人間で家庭を犠牲にして誠心誠意
会社のために働いてきました。これからどうすればよいか
全く頭が白紙状態ななんです。
聴き手) 急に働く職場が無くなり、これからどうしたら良いか考えられなくて
困っておられるのですね。
6)気持ちを汲む
A)「話させる」「聞き出す」技術ではない・・・話したい事が自由に話せる信頼関係の形成。
B)指導、助言、論説、訓戒などを与えることではない・・・人生の選択は本人自身。
C)回答を与える事ではない・・・回答は本人が掘り出すもの。
D)原因を探る事ではない・・・原因を克服できる自己成長の回復。
E)「ただ聞いてやる」事ではない・・・共感的に理解して聴く事は積極的な行動。
F)指示や支持を与える事ではない・・・自己支持、自己指示の能力への信頼。
練習問題1
3分以内に感情と思われる言葉の形容詞を16個書き出してみよう。
* 私がこれを傾聴訓練で実地してみた所、今までに1人しか、3分以内に16個を書き出せる人がいなかった。ちなみに、感情標語辞典では、形容詞のみではないが、感情を表す言葉は2000語近くある。
練習問題2聴くことの練習として、2人組になり、絶対傾聴をしてみよう。まずは、短めの絶対傾聴訓練をしてみて、慣れてきたら長めの絶対傾聴訓練をしてみよう。
絶対傾聴
★ 短めの絶対傾聴(例)
悩み相談者) 今日はオリーブの里の温泉にいってきたのですが、いい湯でした。
聴き手) 今日はオリーブの里の温泉にいってきたのですが、いい湯でした。
★ 長めの絶対傾聴(例)
悩み相談者) 今日は、天気もよく、オリーブの里の花壇の花がすごく素敵でした。
温泉にも入ったのですが、すごく気持ちの良いお湯でした。
聴き手) 今日は、天気もよく、オリーブの里の花壇の花がすごく素敵でした。
温泉にも入ったのですが、すごく気持ちの良いお湯でした。