●BOSEサスペンション システム
 

~ 音楽にように走れ ~


助手:

博士、シトロエンの「15 SixH」が走っていますよ。

博士:

現代に至るまでシトロエンがこだわるサスペンション システム「ハイドロニューマティック」の初採用車じゃな。

助手:

あれって、いわゆるアクティブ・サスペンションなんですか?

博士:

そうさのう、現在採用されている電子制御「ハイドラクティブ」は広義の意味であてはまるのかもしれんの。

助手:

アクティブサス、かつては憧れだったんだけどな~、今じゃ廃れた技術ですよね。

博士:

廃れたものか!? 廃れたものかよ!! 相変わらず愚かじゃな、君は!!

助手:

なにを熱くなっているんですか?

博士:

「アクティブサス」といっても様々な種類があるが、わしはこれからの乗用車のための技術だと考えておるのじゃ!

助手:

え~、だってF1の世界でも採用していたけど、やめちゃったじゃないですか。

博士:

あれはレギュレーションが変わったからじゃ。



解説1:F1におけるアクティブ・サス

1970年代後半、ロータスがいわゆる「グラウンド エフェクト カー」を投入。各チームが真似るようになる。
「グラウンド エフェクト カー」とは、車体下に空力のための装置があり、強いダウンフォースを得られるというものであった。
この「グラウンド エフェクト」を得るには、車体と路面を一定間隔に保つ必要がある。そのためコーナーにおいてもこの効果を維持するため、サスを非常に硬くするに至った。
しかし、結果としてコーナーにおける操作が非常にシビアになり、ドライバーに強い負担を強いるようになった。
そこでアクティブ・サスペンションが開発される。コンピューター制御された可動式サスペンションにより積極的(アクティブ)に地面との水平状態を得ようというものである。
1987年、アクティブ・サスを採用したロータス99TT、ウイリアムズFW11が実戦投入される。そして1992年にウイリアムズFW14Bが圧倒的な強さを見せると、各チームが採用した。
しかし、集客イベントとしてのレースを活性化させたいFIAは、チームバランスの調整のため、膨大な開発費がかかるアクティブ・サスを1993年に禁止した。
アクティブ・サスを空力のための装置とした上で、「走行中に空力装置を可変させてはならない」というルールに抵触すると審判を下したのだった。



博士:

あのレギュレーション変更は強引だったな。

助手:

確かにアクティブ・サスが空力装置って解釈はねぇ。

助手:

しかし、あの頃の市販車も採用していたけど、やっぱりやめちゃったじゃないですか。

博士:

あれは高コストだったのと(トヨタのセリカにいたってはプラス100万円以上!)、どうやら耐久性が実用に至っていたなかったらしいの。だからと言って諦めてはならない。技術は進歩するのじゃからな。

助手:

なぜそこまでアクティブサスに肩入れするんですか。開発業者から袖の下でももらったんですか?

博士:

愚か者。アクティブサスにこそクルマの未来があるのじゃ。よく聞くがよい。



解説2:アクティブサスの効果

車両はタイヤで接地している。この接地している面にかかる荷重をいかにコントロールするか、それが走る、止まる、曲がるというドライビングの根本にある。
この根本部分の革新をもたらしめる技術こそがアクティブサスである。
路面の凹凸にあわせてサスが積極的に動くことで、乗員に振動を感じさせない乗り心地を実現できる。さらにそれぞれのタイヤにかかる荷重をコントロールすることで、素人でもレーサーのスピードでコーナーを曲がれるといった操作性能を実現できる。



博士:

動物の身体にサスペンションはついておらんじゃろ?あれは身体全体の動きで緩衝しているからじゃ。また、こけそうになると倒れる方向にかかる力の大きさに応じて踏ん張るじゃろ?つまり、動物は接地面にかかる力を制御することによって、転倒を回避できるのじゃ。 アクティブ・サスはこの動きをクルマに応用できる。つまり車体を常に水平に保つというだけではなく、コーナーで踏ん張ったり、極端に言うとジャンプしたりもできるのじゃ。

助手:

つまりアクティブ・サスというものは、いまのサスペンションのバネっぽいイメージより「アクチュエーター(筋肉の代わりなる装置)」が入っているイメージのほうがふさわしいですかね?

博士:

そうじゃ。それが正しい。

助手:

そんなに素晴らしい技術であれば、なぜ市販車に普及しないんですか?

博士:

単純にトレンド(死語)からはずれていたからじゃ。90年代初頭の社会的機運に技術が応えられなかったのだよ。散々勉強してきたじゃろ。「優れた技術でもそのときの社会次第」なのじゃ。実用に耐える品質とコストダウンが図られれば必ず復活する。

助手:

いまでも開発は進んでるんですかね?

博士:

そこで紹介するのが、2004年に発表された意外なダークホースじゃ。



【意外なメーカー製 電動アクティブ サスペンション】

電動アクティブ サスペンション

電動アクティブ サスペンション

どうやらボーズが株式公開企業だったら開発できないほどの巨額の研究費が注ぎ込まれているらしい…



助手:

「ボーズ サスペンション システム」!? BOSE!? BOSEってあのオーディオ機器メーカーの?

博士:

そうじゃ。アクティブサスの真髄である周波数制御技術は、オーディオとかぶるのじゃよ。老境に至ったアマー・G・ボーズ博士の集大成と言っても過言ではない。

助手:

電器コイルと磁石、一種のリニアモーターですかね。F1の頃は油圧でしたが。

博士:

より素早い対応が可能なのじゃ。おまけに回生電流でバッテリー充電もできるのじゃ。

助手:

これはびっくりしました。

博士:

デモ映像では車がジャンプ台もなくジャンプしとるぞ。

助手:

「マッハGO!GO!GO!」のマッハ号みたいですね。

博士:

もはや生き物の動きじゃ。

博士:

嗚呼、サスの回生電流も発動機と共有しちゃう「ハンドリング バイ BOSE」エディションのプリウスとか開発されないかのう。はぁ、そんなん出たら萌え萌えじゃよ。(うっとり)

助手:

それはロータスもびっくりですね。 僕はあらゆる技術解禁のフォーミュラーを見てみたいですね。ターボ、トラクションコントロール、可変空力制御、アクティブサス…。これならスーパーアスラーダも夢じゃない…。(うっとり)

博士:

ただな、問題があるのじゃ。

助手:

あ、せっかくいい夢を見ているときに、野暮なこといわないでくださいよ。

博士:

すまんが、ボーズ博士曰く「廉価な車に使用されるほどコストが下がることはまずない」そうじゃ。

助手:

それじゃあ、F1のときと同じじゃないですか。「歴史は繰り返す」ですよ。

博士:

ぜひ、日本企業にがんばってもらいたいところなのじゃが。ここまで作りこまれたものが存在するとなると、特許が問題になるかの。

助手:

…その後話題にならないわけですね。





ON SET :

20/DEC/2009