●ブリヂストンサイクル 「カマキリ」
 

~ 予期せぬ大革命 ~



【70年代少年スポーツ車の一例】

信じられないかもしれませんが、PTAも怒り出すような過剰装備が70年代少年達の憧れの的でした。



助手:

なんですか、このゴテゴテした自転車は。

博士:

1970年代に少年達の間でこんな自転車が流行ってな。

助手:

過剰装備ブーム?

博士:

そうじゃ。油圧式ディスクブレーキ、電子式表示装置、「フラッシャー」と呼ばれる電飾ライトにはリトラクタブル式のものもあった。実用性よりもより過剰な装備がよしとされたのじゃ。

助手:

やりすぎ感溢れる過剰装備は、かつてここで紹介した「アルシオーネ(1985年)」「スペーシー(1982年)」に共通する感じですね。

博士:

しかし、それらの80年代っぽいガンダムチックなデザインとは一線を画しているじゃろ。どちらかというとスーパーカーブームにリンクしたものじゃったな。

助手:

これっていつまで続いたのですか?

博士:

よい質問じゃ。これらの過剰装備少年スポーツ車時代を一気に終焉へと向かわせた自転車を今回は取り上げたいと思う。




【カマキリ】

彗星のごとく現れた。シンプルデザインが特徴の「シティサイクル」!?




博士:

というわけで、ブリヂストンが1981年に発表した「カマキリ」じゃ。

助手:

これはまた随分と趣が違いますね。泥除けもライトも、なにもついていないじゃないですか。

博士:

うむ。スタッガード型(※)の婦人向け大輪径スポーツ車フレームを原色でカラーリングして、ハンドルをスポーツ車のドロップ型からアップ型に付け替えたものじゃ。そのシンプルさが大ヒットして、それまでの少年スポーツ車を一気に駆逐した。

助手:

一気に「過剰装備って幼稚」という風潮になっちゃったんですね。子供は心変わりが激しいなぁ。

博士:

その通りじゃ。そしてそれからのカマキリは、泥除けやライト、荷物かごなどを装備、ハンドルもバータイプに変更され、通勤・通学車に進化したのじゃ。

助手:

こういったストレートなチューブで構成されたフレームの軽快車って、いまでは見慣れたスタンダードなスタイルですよね。カマキリはそれの先鞭者というわけですか。

博士:

決して狙っていたではないであろうとも、「走ルンです」(1999年)に通じる合理主義的な美学を1981年に体現していた、というのは言い過ぎかのう?




【現在の通勤・通学用軽快車】

カマキリを実用的にした感じです。あなたもこんな自転車に乗っていませんか?




博士:

ただ、名前の由来となったあのアップ型ハンドル(カマキリハンドル)と、それに標準でついていたラッパ型ホーンからみて、ブリヂストンの最初の目論見としては、カマキリを「ヨーロッパっぽさ」を「売り」とした、女性向けシティサイクルにしたかったのではないかと推察できる。しかし、実際はヤンキー不良少年に大うけだったのじゃ。あのハンドルを「カスタムされたアメリカンバイクのチョッパー型ハンドル」と見立てられたのじゃろう。

助手:

なんだか、ちょっとだけトホホな話ですね。

博士:

とはいえ子供達はそのセンスで未来を予測していたのかもしれんよ。おそらく大人たちにとっては、予期せぬ大ヒットじゃったのだろうけどね。


※スタッガードフレーム:トップチューブを斜めにしてまたぎやすくしたフレーム




ON SET :

2/APR/2006