●U.S.S.アクロン、他
 ~ 幻の空中空母列伝 ~

助手:「キャプテン・スカーレット」のクラウドベース、「天空の城ラピュタ」の空中戦艦ゴリアテと海賊船タイガ-モス号、「機動戦士ガンダム」のガウ攻撃空母、ぶつぶつ・・・
博士:なんじゃね?
助手:いえ、昔のマンガやアニメであった空中空母みたいなのって実際にはないなぁ、と思いまして。
博士:まったく勉強不足じゃのう。有用性はともかくとして実在したんじゃが。
助手:えー!!なんですって!?


幻の空中空母列伝【その1】
博士:というわけで、まずは合衆国海軍の飛行船「U.S.S. アクロン(1931年就役)」と「U.S.S. メイコン(1933年就役)」なのじゃが。


「U.S.S.アクロン」
同型艦に「メイコン」があります。どちらも飛行船を作るのに必要なゴム製品製造会社であるグッドイヤー社のお膝元の街の名です。
当時アメリカでしか生産されていなかったヘリウムを使っているのが特徴です。
全長約240m。
マイバッハ社(ドイツ)製エンジンを8基搭載。
スパローホーク戦闘機を4機搭載。
プロペラは垂直、逆方向、などへ向きを変えることができました。
エンジンも搭載機も船体内に格納され、内部からの整備も可能。非常に洗練された飛行船でした。


助手:巨大飛行船と言えばドイツを思い出しますけど、アメリカにもこんな巨大飛行船があったんですねぇ。
博士:当時最新の技術をふんだんに取り入れた船じゃ。
助手:軍用なんですね。ドイツはロンドン空襲に飛行船を利用したそうですが、アメリカも同じことをしようとしたのでしょうか。まさかこれが空中空母なのですか?
博士:そのまさかじゃ。しかし爆撃目的のものではない。広大な海洋を哨戒しなければいけない海軍が飛行船の長い滞空時間に目をつけたのじゃ。しかし、飛行船は機動性に欠ける。
助手:なるほど。そこで飛行機を搭載したわけですね。
博士:そうじゃ。カーチスF9C-2「スパローホーク」を4機搭載しておる。本船と搭載機の2段構え。いまの早期警戒機的な発想じゃの。


カーチスF9C-2「スパローホーク」
なんとこの計画のために開発された戦闘哨戒機です。上部のフックで飛行船と連結します。

助手:ほんとうに空中での発艦/着艦ができるんだ。
博士:スパローホークの中には、車輪の代わりに燃料タンクを増設した、つまり空中からの発艦/着艦しか考慮していないものもあったそうじゃ。
助手:う~ん、まさに「天空の城ラピュタ」の世界ですね~。そのわりにはあまり有名ではないようですけど。
博士:アクロンもメイコンも大した活躍もせずにわずか数年で事故損失したからの。
助手:両船ともですか?それはなぜに?
博士:飛行船は悪天候に弱かった。当時は気象レーダーがないから天候の変化に対応できなかったのじゃ。それでほとんどの乗員が亡くなるという大惨事になってしまった。
助手:惜しいなぁ。あ、そういえば「ラピュタ」と同じミヤザキ映画の「魔女の宅急便」でも飛行船事故のエピソードがありましたね。
博士:君のオタクっぷりにも参ったものじゃ。
助手:やだなぁ。誉めないでくださいよ。
博士:・・・とにかくじゃ、航空機の発達もあって飛行船空母が復活することはなかったのじゃ。


幻の空中空母列伝【その2】
博士:以前にも話したことがあったと思うのじゃが、昔は爆撃機と戦闘機の航続距離の違いが、航空機を戦力として活用したい軍隊にとって悩みの種の一つじゃった。
助手:「爆撃機を他国まで飛ばしたい。けど、護衛機がついていけない。」というわけでしたね。それで双発戦闘機とか作って失敗したりとか。
博士:その困難を空中空母で克服しようとする国があったのじゃ。
助手:おお!、してその国とは。
博士:ソ連じゃ。
助手:ソ連の空中空母?知らないなぁ。
博士:これじゃ。

Zveno(連結)計画実験機
母機はTB-3です。下部のフックに吊るしてある機体は空中合体します。
これが離陸する様はさぞかしスリルがあろうと思います。
搭載機数はいろいろと試されましたが、この5機はやりすぎじゃないかなあ・・・。


助手:もはやサーカスだ・・・。かなり強引な印象です。空中空母というより親子飛行機ですね。
博士:なにを言う。発艦(発機?)のみならず着艦(着機?)にも成功しておる(実験では。そして釣り下げ式のみ)。立派な空中空母じゃ。
助手:博士もソ連も強引だ・・・。けれどというか、やはりというか、その後活躍してませんよね。
博士:スターリンの大粛清で、開発計画推進者が殺されてしまっての。
助手:ソ連のお約束ですね。南無阿弥陀仏・・・。
博士:うむ。しかしソ連は空中空母による実戦を経験しておる。I-16SPBを搭載したTB-3とAM-34が1941年にな。
助手:(資料を見ながら)ふ~ん、ルーマニア国内に侵入して、ドナウ川にかかる橋を破壊ですか。
博士:空中空母の歴史の中で唯一の戦果と言っていいじゃろう。
助手:ナチスのミステルとか、日本の桜花とかはダメなですか?
博士:着艦してこその空中空母。巨大誘導爆弾とか特攻兵器とかは、この場合、却下じゃ。
助手:実戦に参加したI-16SPBも再ドッキングして還ったわけではありませんが。
博士:ぬぅ。細かいことを!


幻の空中空母列伝【その3】
博士:というわけで、消え去ったように思えた空中空母思想じゃが、どっこい1950年代に復活する。合衆国の戦闘機運搬計画(FICON)じゃ。
助手:よくやるなぁ、アメリカも。
博士:戦略爆撃機B-36を護衛できる戦闘機がなかったのじゃ。で、ツインムスタングとかつくってお茶を濁しておったのじゃけどな。

P-82“ツインムスタング”
「航続距離の長いムスタングを合体してみました~!」というヤケクソ感が漂う外見。
一見ゲテモノですが正式採用された長距離掩護戦闘機です。


助手:この強引グ・マイウェイな飛行機を護衛戦闘機と言い切るアッメ~リ~カ~ってステキすぎますね。
博士:つまらんダジャレを言うくらい呆れとるね。
助手:そりゃそうですよ。第一、これでジェット戦闘機に対抗できるんですか?
博士:そこで開発されたのがこれじゃ。

XF-85“ゴブリン”
航続距離が飛躍的に伸びた戦略爆撃機の護衛として、「戦略爆撃機に搭載する戦闘機」として開発されました。
機体が小さいため、約30分しか作戦行動ができません。
回収がうまく行かず計画は断念されました。


助手:これはハセガワの「たまご飛行機」ですか?
博士:君、何時の生まれかね?
助手:ほっといてください。
博士:もうおわかりじゃな。このマクダネルダグラスXF85「ゴブリン」はB-36の爆弾倉に格納しておいて、いざというときは空中発進。戦闘後に帰還するというコンセプトで開発されたのじゃ。
助手:ヒレだらけです。よっぽど直進安定性が悪いんですね。
博士:まあこのサイズでは仕方あるまい。
助手:で、成功したんですか?
博士:B-29での実験ではうまく回収できたんじゃけどの。ほれ、B-36って後ろ向きにプロペラがついとるだろう?あれがわるかったみたいでな、なかなかうまく回収できないまま、試験だけで計画は終わりじゃ。
助手:そういうオチですね、やはり。


博士:というわけで、空中空母は歴史の中で幾度かあらわれては消えていったのじゃ。
助手:これだー!というのがありませんね。アクロンはイイ線いってたけど、事故がなくても大戦では航空機のよいカモになってしまったのではないでしょうか?
博士:航空機の発展、大陸弾道ミサイルの登場、空中給油技術の確立などで、淘汰されていったわけじゃな。
助手:あ~あ、子供達が空中空母を夢見る日は二度と来ないかもしれませんね。
博士:いやいや、まだわからんぞ。新らたな空中空母が我々の心を萌え萌えさせてくれる日は明日かもしれんのじゃからな。




ON SET :15/APR/2005