●ノースアメリカンP-51「マスタング」
 ~ 野生馬の立身出世物語 ~

助手:女なんて!女なんて!
博士:(またフラれたのかの?情けないの~)
助手:あいつなんて親が金持ちってだけじゃないかー!
博士:(今度はおぼっちゃまに負けたのじゃな)
助手:サラブレッドがなんだー!オレは野生馬になってやる!!
博士:よく言った。
助手:博士・・・!?
博士:うむ、君に野生馬の出世物語を聞かせてやろうかの。aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa


【 P-51 ムスタング 】
革新的な空力性能を持つ機体と傑作エンジンの幸運なる組み合わせの産物。
高度7,600mで784km/hという高速性能(H型)。ドロップタンク追加でゼロ戦を凌ぐ航続距離。15,675機という戦闘機としては合衆国第二位の生産数。
戦後のエアレ-スでも長く活躍する超傑作戦闘機。写真はD型。


博士:つーわけで、第二次世界大戦中の最優秀戦闘機、ノースアメリカンのP-51マスタングなわけじゃが。
助手:え~、P-51は名前こそ野生馬ですが風格はサラブレッドって感じですが。
博士:まあスペック・実績からしてそう思われても仕方のないところじゃな。
助手:さすがに大戦後期に登場した機体だけあって、他のアメリカ機にはない洗練された形状はまさにサラブレッド。
博士:まちたまえ、大戦後期という認識は正しくない。初代マスタングのロールアウトは1940年じゃ。そこからして正しくは大戦後期の機体とは言いがたい。まあよく知られているD型の登場は1943年の登場じゃがな。
助手:これほどの高性能機なのに活躍までに空白の3年。不思議ですね。
博士:実はこの機体の生い立ちにはいろいろ複雑な事情があってな。
助手:生い立ち・・・複雑な事情・・・サスペンスドラマみたいですね。


マスタング誕生物語
 時は1940年。ナチスドイツの脅威に対面したイギリスは、ナチスの強力な空軍力に対峙すべく、戦闘機の配備を急いでいた。
 しかしイギリスの生産力では必要分に届かない。そこでアメリカの会社から戦闘機を買うことにした。
 ところがそうは問屋が卸さなかった。英国が白羽の矢をたてたP-40トマホークを製造しているカーチス社は既に受けている受注で手一杯。戦争の準備で大量発注を受けていたのだ。他の会社も同じようなものだった。
 そこで英国は開業して間もない「ノース・アメリカン社(以下「ノ社」)」にP-40のライセンス生産を依頼しようとした。
 ノ社が生産している練習機AT-6「テキサン」の高品質に目を付けたのだ。
 しかし、ノ社にとってその注文は屈辱であった。なぜ他のメーカーの飛行機をつくらなにゃならんのだ。
 なので彼らは英国の注文にこう答えたのだった。

「4ヶ月でP-40より高性能の戦闘機を作ってやるよ」


 そして本当にわずか4ヶ月弱でマスタングは誕生した。
 それを可能にしたのは、ノ社の天才技術者、エドガー・シュミードの存在だった。


助手:へぇ、痛快な話ですね~。
博士:それはさておき、ここで注目してほしいのは、このE.シュミードはドイツからの亡命者だったということだ。
助手:えぇー! つまりマスタングは当時世界一ィィィィィィィ!なドイツの航空技術が注ぎ込まれているということですか!?
博士:そう、マスタングの高性能っぷりの一つの理由はそれによる空力性能の洗練にあると言われている。
助手:どうりでそれまでのアメリカ機には感じられないスマートさがあるわけですねぇ。
博士:しかし、マスタングが大活躍するにはまだまだ時が要るのじゃ。


マスタング出世物語
 というわけで開発されたマスタンングはなかなかの性能を示した。
 しかし、高空での性能に欠点があり、対戦闘機戦闘は不向きと判断された。
 理由はエンジンにあった。マスタングに搭載されていたアメリカ製アリソンエンジンは過給器の能力がイマイチだったのだ。
 そこでマスタングは地上攻撃や偵察の任にあたることとなった。
 しかし、英軍が試しにスピットファイアに搭載されているロールスロイス社製の超傑作エンジン「マーリン」を載せてみたところ、これが大当たり。
 歴史に残る超高性能機のできあがり、となったのだった。


助手:空白の3年が埋まった・・・。
博士:そして後方視界確保のためにファストバック形状のキャノピーを「バブルキャノピー」に変えたのが、我々がよく知るD型マスタングというわけじゃ。
助手:フレームのない一体形成のキャノピーが他の大戦中機とかけ離れたイメージを醸し出してますよね。
博士:ジェット戦闘機F-86セイバーにも受け継がれた逸品じゃ。しかしこいつのせいで空力的性能が落ちたのじゃけどな。とはいえ一体形成キャノピーなんてものを当時大量生産できたのはアメリカだけじゃろう。
助手:アメリカの生産力、イギリスのエンジン、ドイツの航空技術。マスタングって各国のいいとこどりだったわけですね。
博士:しかし実績のない小さな新しい会社の名もない技術者による由緒もへったくれもない飛行機じゃった。欠点もあった。決してサラブレッドなどではなかったのじゃ。それでもマスタングはイギリスで自らを磨き、超高性能になって故郷に錦を飾ったのじゃ。
ワシはキミにもこのように力強く生きてほしいのだよ。キミも野生馬たらん!
助手:博士・・・・!!
博士:わかってくれたかね。
助手:一生ついていきます。
博士:では早速じゃが、先日借りた昼飯代をチャラにしていただきたい。
助手:最低だ・・・。



LAST MODIFIED :3/NOV/2004
ON SET :28/OCT/2004