●ALFAROMEO SZ (ES30)
 ~ 匂い立つ魅惑の危うさ ~

 イタリアの老舗自動車メーカー、アルファロメオの名前は誰でも一度は聞いたことがあると思う。現行モデルである156や147は街でよく見かけることができるし、古いマシン達もマニアの間で大事に乗られている。とても人気のあるブランドだ。
 そのアルファロメオの魅力のひとつがデザインにあることに異論を唱える人はいないだろう。
 アルファロメオのクルマ達は少しでもラインが崩れれば成り立たない絶妙なバランスで成り立っていて、美しさとキワどさが混在する個性溢れた作品ばかりだと思う。

 そんなアルファロメオのクルマ達なかでも、僕の大好きなニューSZ(ES30)はそのあたりの印象が強い。
 フェラーリの優雅さともランボルギーニの力強さとも無縁。はっきり言って好き嫌いがキッパリ別れるデザインだと思うが、僕は好きでたまらなかったりする。


【写真01:SZ】
独特のフォルム
 
【写真02:SZ】
私は好きなんだけど・・・、世間的にはどうだろ?


 この個性溢れるデザインを含め総合的手がけたのは、昔からアルファと縁の深いカロッツェリア、「ザガート」(SZの名前も「スプリント・ザガート」の略らしい。RZは「ロードスター・ザガート」ね。)。

 1991年から限定1,000台(+ オーブンボディのRZは350台くらい)で生産された。実際にはもう2~30台作られたそうなのだけど、それでもオーダーは5,000台以上だったという。
 なので約700万円の価格が2,000万円台にまでなったとも聞く。バブル景気の残り香がある時代とはいえ異常だ。

 内容を見てみよう。
 開発のベースとなったクルマはアルファロメオ75のグループAレーシングカーバージョン。
 つまり、公道を走るレーシングカーというわけ。
 そのため車高がかなり低い。対策として車高調整式のダンパーが装備され、ボタンひとつで車高を4cm調整できる。

【写真03: アルファ75】
SZはこれのレーシングカーバージョンを元に作られている。


 そしてエンジンは75のものをフルチューンした、3リッターV6を搭載。
 そのパワーは、210hp / 6,200r.p.m. , トルクは25kg-m / 4,500r.p.m.。

 「アルファ渾身の作の割にはパワーがイマイチ小さいんじゃない?」と思った方もいらっしゃるかもしれない。

 それにはちゃんとした訳がある。天下のアルファがパワーをケチるわけがない。

 その理由はSZの目指したものが「超スーパーハンドリングマシン」だからなのだ。
 なので、操舵・旋回性能を上げるための工夫が徹底的に施されている。エンジンのパワーもそれに相応しく設定されたものなのだろう。

 例えば、普通、トランスミッションはエンジンの傍に配置されているが、SZはデファレンシャルケースと一体化して車体後部に設けられている。(「トランクアクスル・レイアウト」ポルシェなどでも採用)
 普通FRは前が重くなる傾向にあるが、SZはこのレイアウトにより車体前後の重量配分の理想を実現している。
 さらに、バネ下重量を少しでも軽減するため、後輪のブレーキシステムがホイール内ではなくデフの両脇に配置されている(インボード式という、しかし残念ながらブレーキ自体があまり効かないらしい)。


【写真04:通常のFR車とSZのトランクアクスル・レイアウトの比較】
[普通のFR車のレイアウト][SZのレイアウト]
※重量配分が前後に等配分するため、そしてサスペンションにかかる負担を減らす為の努力がなされていることが分かります。「ここまでやるか?」って感じです。整備性悪そうですね。


 ボディは軽量化のためにFRP(強化プラスチック)製。
 そして、ドライバーを補助してくれるような先進的なテクノロジーは装備されていない。

 そう、SZはドライバーの甘えを一切受け付けない。

 1986年、アルファロメオは大衆車メーカー、フィアットの傘下に入った。
 それまでのレーシーでスポーツ性溢れる特別なマシンを生み出してきたアルファロメオにとって、それは生き残るための苦渋の決断であり、ファンにとっても不安なことだっただろう。
 しかし、その不安にアルファロメオはこいつで答えを示したのだ。
 「たとえフィアット傘下であろうと我らはアルファロメオであり続ける!」、と。
 このあまりにも特殊な仕様はそんな情熱から生み出されたのではなかろうか?

 このSZを、開発者達は「イル・モストロ」、即ち「怪物」と呼んだという。
 そのあだ名はこいつの奇異な姿やマニアックな仕様からきているだけではないのだろう、と僕は思う。
 それはきっと、SZを女性に例えるなら、美人でなくても官能的な魅力で男の心を捉えて離さない。しかし、そう簡単にはなびいてくれない。操れない。そんな印象を受けるところから来たのではないだろうか?

 そのスタイリングとスペシャルチューニングが施されたエンジン音、なにより妥協を許さないスリル溢れるハンドリングが、ドライバーを官能の渦に巻き込んでしまう。
 その魅力に取り付かれた者は、ヤバいと知りつつ再びハンドルを握らないわけにはいかない。
 逆に言えば、その危険さえ自分のモノにすることのできる者だけが乗ることができるクルマなのだ。

 だからきっと人は呼ぶのだ、こいつを「怪物」と。



(※「危険」と書いたのはあくまでその魅力を表現したものです。普通に公道を走れるクルマですよ。念のため。)



 
LAST MODIFIED:27/JLY/2004
ON SET:04/OCT/2002