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白菜のなぞ著者 板倉 聖宣 著 出版 平凡社
「新米の飯を、一箸つまむ。見たところは、いつもと、そう違いはない。冷夏に見舞われた北の方の産で、出荷はかなり遅れたらしい。その地で、心労と勤労とを一瞬思い浮かべながら、かむ。 ▼白菜漬けを、少しつまむ。ご飯のほのかな甘みを、ほどよい酸味が引き立てる。飯をもうひとつまみし、みそ汁をすする。栄養のことはともかくとして、晩秋の「日本の基本食」だけで、ほぼ満ち足りた。 」(2003年11月24日朝日新聞朝刊「天声人語」から)
ハクサイは日本で昔から食べられていたように思えるが、本格的に庶民が食べるようになったのは、昭和になってから。これはそのハクサイが日本に定着するまでを調べた本です。
私は、はじめ「日本人がハクサイを取り入れたのは明治以後だった」ということがあまりに信じ難いと思いました。そこで、「ハクサイは明治以後、どのようにして日本で栽培されるようになったのか」ということをくわしく調べてみることにしました。すると、調べれば調べるほど、いろんな面白いことがわかってきました。そこで、その結果をお知らせしたいと思います。少し話が長くなりますが、つきあって下さい。
このように始まる「白菜のなぞ」。ハクサイの国産化に賭けた先人たち、それを調べていった著者は「仮説実験授業」を提唱する科学者。好奇心を科学的に満足させる、その過程に感心します。
品種改良・育種学に関心ある方には教科書に対する副読本として、一般の人には「野菜に関する軽い読み物」としてお勧めします。
仮説社から1994年11月に出版されてから、2002年10月には平凡社から出版されています。(評者 TANAKA1942bさん)
コシヒカリ物語著者 酒井義昭 著 出版 中央公論社
コメの収穫量上位5品種は、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、きらら397です。そして上位20品種の内14品種はコシヒカリとそれから交配改良されたものです。現在日本のコメはコシヒカリの独壇場です。 そのコシヒカリ、美味しいコメを目指したのではなくて、倒伏し難く、いもち病に強く、多収米を目指したものだった。昭和19年から始まった品種改良、登録されたのは1965(昭和40)年。日本一のコメがどのようにして生まれたのか? それは日本のコメ、農業、品種改良を考えるとき大きなヒントを与えてくれると思います。新書本で、あまり専門的知識を必要としない、読みやすい本です。(評者 TANAKA1942bさん)
きらら397誕生物語著者 佐々木 多喜雄著 出版 北海道出版企画センター
かつては「猫またぎ米」と呼ばれた北海道米のイメージを根底から変えたきらら397の品種育成に携わった筆者によるきらら誕生から成功への記録。
私は、「○ロジェクトX」のネタに最高じゃないか、と思いました(笑)
きららの育種の段階からの苦労もさることながら、当時の研究者の考えた方向性への慧眼に驚かされます。
その後、きららは北海道を代表する良食味米として成長していくわけですが、この販売戦略がまた凄い!ネーミングの公募から始め、今でも全く古くないのです!
きららの成功は農産物販売の戦略としても、時代の先をいっていたことが分かります。
現在、米をとりまく環境は厳しいものですが、今こそきらら誕生の当時を振り返ってみるのは意義あることなのではないか?
きららには未だ色あせない知恵が詰まっている、と思います。(評者 haru)
やらなきゃ損する農家のインターネット産直著者 富田 きよむ著 出版 農山漁村文化協会
この本は小難しいマニュアル本ではありません。
一言でいえば「農家による農家のためのマーケティング入門」といったところでしょうか?
HP作成の際の注意事項やメールの利用法などのノウハウも説明されていますが、中心は消費者へのアプローチに「農」の魅力を有効に使おうとの主張です。
筆者はときにユーモアを交えながらも厳しく農家の「販売戦略」に注文をつけ、自分たちの経験を基にIT産直への「考え方」を提示していきます。
自らの失敗談も交えながら経験に裏打ちされたものなので説得力があります。
この本を一読しての印象は基本はITではなく「人」であることが筆者のスタンスではないかと感じました。
現在、日本農業の生き残り策の一つとして高付加価値の農産物生産が挙げられますが、農業の魅力自体が最高の付加価値として働く、生産者自体がその魅力を忘れかけていないか?
生産と消費の距離を縮めるための方法としても、考えていかねばならないテーマといえるでしょう。
最後に、筆者は2000年有珠山噴火の際の体験談が記されていますが、私も当時は伊達市に住んでいた者として、有珠山ネットなどの活動に敬意を表しておきたい。(評者 haru)
北海道いま農業が面白い著者 相馬 暁著 出版 北海道新聞社
この本は北海道農業の「戦術書」ですね。
北海道がクリーン農業を前面にしていくのに直接、携わっていた筆者が道中央農試の場長であったときに出版されたものですが、この本で一貫して述べられているのは「北海道愛」と「マイナスをプラスに」の思想ですね。
当然ながら北海道には低温・長い冬や距離などのハンデを背負っているわけですが、それらをプラスにするための「戦術」が記されていきます。
ただし、クソ真面目な本ではなく、ユーモアたっぷりで楽しく読める本です。
現在、筆者はTVなどに出演されていますが、そのままの印象を持たれるかもしれません。
(ちなみに、筆者の講演を聴きに行ったことがありまして、抱腹絶倒の面白さでした。)
実際に明るく、楽しく、北海道農業の未来を語っていきますが、それに加えてしたたかさを感じます。
農業の今後を考察する本は、数えきれません。
ただ、農業を語る際は理想論に傾きがちで具体論に欠けることが多いのですが、この本の凄いところは「戦略書」としても「戦術書」としても読めるところです。
(特に、具体的な「戦術」が述べられている本はあまり無いのではないでしょうか?)
ですから、北海道外の人には読んで欲しくないような・・・読んで欲しいような。(評者 haru)
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