餘 部 浪 漫


RailMagazine265 RM GALLERY Web版


山陰本線 − 餘部鉄橋

レイルファンならずとも、この浪漫溢れる鉄橋に心引かれる人々は多い。

悲しい転落事故の記憶と共に、日本で最も有名な鉄橋であり、

又、数々の名作を生み出してきた最高の舞台でもある。


明治45年の建造から93年の長きにわたり潮風に耐えてきた鉄橋も、

冬季間の強風による輸送効率の悪さから、ついに架け替えが決定した。

無機質なコンクリート橋への架け替えになるという。


架け替え工事は早ければ来年の秋から始まるらしい。

一旦工事が始まると、この勇壮で端麗な橋脚を含む風景が失われてしまう。

一刻も早くこの餘部鉄橋の風景を自分の目で記録したいという

思いにかられ、「餘部詣」がはじまった。

一度ハマると、とことん通い詰める性格から、嫁も呆れる休日毎の 但馬路通い。


京都の自宅から175キロの道程だが

ほとんど高速が利用できない為片道4時間近くはかかる。

列車での移動は更に効率が悪く餘部に午前中に着くには、

5時台の始発に乗っていかねばならず

更に早朝の「出雲」を撮るには前泊が必至となってしまう。


それでも、長時間かけて辿り着いた餘部には

心を癒してくれる山陰の鉄道の原風景が待っていてくれる。


見上げる大橋脚、四季を通じた美しさ、人々の温もり、そして国鉄型車輌...

訪れる度に新しいシーンに出会え、1日いても飽きることはなく

写材も豊富で楽しく撮影する事が出来る。









東の空が明るくなってきた。

だが見上げる尾根筋は暗闇の中である。


懐中電灯を頼りに沢筋を登る。

春に比べ幾分と成長した夏草が行く手をはばむ。


沢筋から離れて道なき斜面を這い上がる。

木を一本一本引き寄せて懸命に登る。

早くも息が上がってきた。函館山線の稲穂嶺など

こんな比ではなかったのに...。

最近の運動不足か、寄る年波か...。


しばし登ると木々の間から視界が開けた。

薄暗い夜明け前に餘部鉄橋が浮かぶ。

バックの日本海はまだ暗黒に沈んでいた。

やがて東方から太陽が昇る。

しばしの時を置いて橋梁に光が射し込んでいく。


遠く山の向こうでホイッスルが聞こえた。

「出雲だ!」緊張の一瞬。

トンネルから躍り出た「出雲」は側面を輝かせながら

豪快に餘部鉄橋を渡る。


緊張で汗ばむレリーズ、一瞬のシャッターチャンス。

轟音を残して風のように通り過ぎる青い客車。

確かな手ごたえ、爽快の時である。





この鉄橋が最も美しいのは

春から夏の終わりにかけて東側の防波堤から見る逆光の夕日に照らされた

黄金色に輝く橋脚である。


その橋梁全体に輝く美しさは神秘的ですらあり、日本の鉄道シーンの中でも

屈指のものであると思う。


ただ、橋脚が輝く季節が限られる上に光がピークに達するのは

一日のうちの僅か10分程であり、この時間帯に過疎ローカルなこの区間に

列車が走るとは限らず、

直前に雲が沸いたり、野焼きに遮られたり、何度も失敗を繰り返しながらも

同じ場所に通ったものである。


そして今年の4月末にようやく光のピークと列車の通過が一致し作品を

モノに出来た時の喜びは計り知れないものがあった。。

















2010年の架け替えを目指して工事は進められるという。

願わくば国の重要文化財に指定され永久的にこの地に保存され 

遊歩道としてでも活用される事を切望するが維持管理の面からも難しいのたろうか..。

残された僅かな期間、悔いを残すことなく餘部鉄橋と

鉄橋を取り巻く情景を記録していきたいと思う。





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