ochibokeの銀河鉄道999 「グロテスカの宝石」




無限に広がる宇宙空間。
【ナレーター】 星の海には、様々な姿形をした生命体が住んでいる。
まったく違う生き物の様に見えても、ただひとつ共通しているものがある。
それはみんな「心」を持っているという事だ。



タイトル 
「グロテスカの宝石」



宇宙の果てから汽笛一斉、ひた走る999号。


客車。ドアが開いて、車掌が入ってくる。
車掌、書類を手にしたまま姿勢を正して、
【車掌】 え〜、毎度毎度のお騒がせ、誠に申し訳ありません。次の停車駅は『グロテスカ』、『グロテスカ』。停車時間は3時間と10分であります。
鉄郎、駅名が気になって、向かいの座席に座っているメーテルに訊ねる。
【鉄郎】 グロテスカ? メーテル、グロテスカって、ひょっとして…グロテスクってこと? 同じ意味でそう呼ばれているの?
メーテル、網棚からトランクを下ろしながら答える。
【メーテル】 行ってみれば分かるわ。停車時間が短いから注意しなきゃね。



999号の汽笛。見えてくる惑星グロテスカ。
【鉄郎】 …うわぁ、青くてきれいな星だぁ。少し楕円形なのが変わってるけど…。
鉄郎、車窓から惑星グロテスカを見つめている。
車掌、傍に来て、
【車掌】 あそこは自転がすばらしく早い星なんです、ハイ。駅は赤道近くにあります。自転による遠心力のおかげで重力がとても小さく、地球人には非常に活動しやすい星なんですよ。
【鉄郎】 へぇ〜…。
ふと、車掌、ちょっと困った顔をして、
【車掌】 …ですが、ひとつだけ困った問題(こと)が…
【メーテル】 どうかしたの?
車掌、申し訳なさそうに、
【車掌】 列車は今、時空の壁にさえぎられている亜空間を通過中なので、食堂車に食事用の素材すら、まともに転送されて来ないんですよ…。
【鉄郎】 じゃあ、999に食い物がないのぉ!?
【車掌】 ええ、緊急用の合成食はありますがね、切り詰めても、それすら3日ぐらいしかもたないかと…。そこで鉄郎さん、これをお持ちになって下さい。
車掌、どこから取り出したのか、鉄郎にスコップを手渡す。
面食らう鉄郎。
【鉄郎】 スコップ?
【メーテル】 グロテスカは芋や果物に恵まれた星。これから先のことも考えて、少し多めに集めて来なきゃね。
【鉄郎】 現地調達するのか…。
言いながら、鉄郎、少し「ワオの星」のことが脳裏をよぎる。が、スコップを見て、気が楽になる。
【車掌】 ハイ、それとリュックです。
鉄郎の身長よりありそうな馬鹿でかいリュックを広げる車掌。
あまりの大きさに、たまげて口をポカ〜っとやる鉄郎。
【鉄郎】 うわ、でっかいリュック。これじゃまるでタンタン狸の…。
メーテル、すかさず遮る様に
【メーテル】 大丈夫よ鉄郎。車掌さんがおっしゃったでしょ? 赤道地帯は自転速度が早いから、重力も小さいし引力も弱いわ。

大気圏を抜け、地表に降下していく999号。
鉄郎、窓から外を眺めながら、
【鉄郎】 …わぁ、不思議な風景だぁ。緑の部分が道路の様に交差して見える。
カタパルトレールに接触する動輪。
【鉄郎】 あれ? 頭みたいな岩の中に入って行くぞ。 
【メーテル】 ここが駅なのよ。

蒸気を吐いて、駅に停車する999号。
鉄郎がリュックを背負ってタラップを降りようとする。
【鉄郎】 なんか、リュックが大きすぎるし、…足もうまく地に着かないし…どうやって移動すりゃいいんだろう?
メーテル、荷物を持って、隣のタラップから降りて来る。
【車掌】 そのリュックは非常に軽くて丈夫な素材で出来ていますし、それにここでは引きずることもないかと思いますが…、おやっ? やや、こりゃまずい…っ。
その後ろから車掌、デッキから身を乗り出した途端、ふわふわと体が浮かんで飛んで行きそうになる。あわてて手すりにつかまりつつ、
【車掌】 …うわはっ! …はぁ…危なかった…。鉄郎さん、移動、出来そうですか?
鉄郎の様子を見る車掌。透明気体の体の彼の方が大変そうだ。
【メーテル】 鉄郎?
振り返って鉄郎の様子を見ながら、促すメーテル。
鉄郎、意を決して、タラップを蹴る。
【鉄郎】 えいっ。
ふわふわと泳ぐ様な感じで移動が出来る。その姿は空中遊泳に近いものがある。水を得た魚の様にふわんふわんと。楽しくなってしまい、はしゃぎ出す鉄郎。  
【鉄郎】 …うはは、わはははっ、体がすごく軽いぞ。まるで宙を飛んでいるみたいだ!

緑地帯の道。メーテルはごく普通に歩き、鉄郎は飛ぶように移動して来る。
あちこちから果物の甘い匂いがたちこめている。  
【鉄郎】 ぶーん。何だかまるで、蝶か蜂になったみたいだよ。…ああ、いい気分だ。
ミーくんも連れて来てやりたかったな。何でカノンさんはダメって言うんだろう? ここが危ない星には全然見えないのに…。
鉄郎、ふと、メーテルを見る。  
【鉄郎】 ねぇメーテル? 果物さんや芋さんは、いったいどこに…?
【メーテル】 そうねぇ…。
メーテル、はしゃぐ鉄郎がほほえましい。
と、傍の木を指差して、
【メーテル】 鉄郎、その木を揺らしてみてごらんなさい。
言われて怪訝そうな鉄郎。木の上の方を見ながら、  
【鉄郎】 この木? え〜? ただ葉っぱが茂ってるだけだよ?
メーテルの表情変わらず。  
【鉄郎】 ………??
一かばちか、木に揺さぶりをかけてみる鉄郎。  
【鉄郎】 …ん〜、どれっ。
途端に上の方から果物がドサドサと大量に降ってくる。
【鉄郎】 …へっ!? うわぁっっ!!
逃げ切れず直撃を受け、悲鳴をあげる鉄郎。たちまち果物の山に埋もれてしまう。
それに驚き、心配したメーテル、果物の山に向かって、
【メーテル】 鉄郎、大丈夫?
発泡スチロールの屑の山から出て来るかのような感じで、果物の中から鉄郎、かき分けかき分け出て来る。
【鉄郎】 ぶぎゅ〜…、窒息するかと思った…。
挫けず気にせず立ち直りの早い鉄郎、落ちている果物の量に驚く。
【鉄郎】 うわ〜、すごい量だなぁ。
リュックにありったけの果物を詰め込む鉄郎。
【鉄郎】 背負ってきたリュックが、もうパンパンだ。これで芋まで掘ったら大量で999まで持って行けるかな?
薄い手袋をして、畑の芋をスコップで掘り出しているメーテル。里芋の様な、さつま芋の様な、じゃが芋の様な芋がごろごろ出てくる。それを袋にありったけ詰め込みながら、
【メーテル】 引力が弱いから、持てるわ。
果物で山盛りの、それでもまだまだとても軽いリュックを背負う鉄郎。
【鉄郎】 なるほどホントだ。満タンに入れて担いでいる筈なのに、ちっとも重たくない。
 鉄郎の周りには、まだたくさんの果物が転がっている。
【鉄郎】 あー、でも山程余っちゃってるよなー。…よし!勿体無いから食べちゃおう。
傍らに落ちている果物をひとつ拾って、マントで拭いて一口かぶりつく。美味い!
【鉄郎】 美味い! こりゃいいや、どんどん食えるぞ。
腹いっぱい詰め込もうと、遠慮なく食べまくる鉄郎。
芋を袋いっぱいに詰め込んで、やおら立ち上がるメーテル。
ふと、鉄郎が落とした筈の果物が見当たらないのでいぶかしむ。
【メーテル】 ??…あら、どうしたの? あんなにあったのに?
と、腹パンパンで「もう食えません」状態の食欲魔人・鉄郎が、その場にひっくり返っている。食べ過ぎも甚だしい。
【鉄郎】 リュックに入りきらないし、勿体無いから…、腹ン中に…入れ…ぐふっ。
【メーテル】 あきれた!
両手に芋の入った袋を持つメーテル、鉄郎の醜態に呆れ、手を貸して立たせてやる。
【メーテル】 幾つ食べたの? この果物はあとで胃の中で3倍に膨れちゃうのよ。
胃が重くて、すでに苦しそうな鉄郎。驚いて、
【鉄郎】 げっ! 早く、言ってよメーテルぅ。知らないから、残ってたの全部、食べちゃったよ。
鉄郎、リュックを担いで何とか歩いてはいるが、足元がまったく見える状態ではない。
【鉄郎】 …腹が…腹が膨らんで、…前が良く見えな、…うぉあっ!
案の定、つんのめって道路の下に落っこちてしまう鉄郎。
【メーテル】 鉄郎!?
驚いて思わず道路の下を覗き込むメーテル。
ひっくり返っている鉄郎。リュックに詰めた果物が飛び出して地面に散乱している。
【鉄郎】 …でっ! …う〜、いてててぇ。
痛みに顔をしかめながら、起き上がろうとするが上手くいかない。
【ユメ】 大丈夫? 怪我はしなかった?
鉄郎の頭の上から声。骨張った手が差し出される。





【予告】
星の海を旅する者がいれば、それを助けてくれる者もいる。
救うんだ!清らかな命。守るんだ!温かな思いやりの心。
たとえ姿がみにくくとも、心までがみにくいとは限らない!
次回の「銀河鉄道999」は、『グロテスカの宝石』に停まります。


これから更新していきます。