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何しろ原作では、まったくと言っていいほど鉄郎くん本人が語らないことなので (ほんの概略だけですよね。ラストあたりはエターナル編の第1話とかぶりますが) とりあえず、鉄郎くんが999で地球に戻ってから、メーテルと再び旅立つまでを、 私なりに想像してみました。 アンドロメダシリーズからエターナルシリーズへ 星野鉄郎くん11歳の空白の月日 鉄郎は考えた。自分は機械伯爵を倒して機械ポリスに追われながら999で旅立った身だ。指名手配されていても不思議ではない。列車から降りた途端たちまち逮捕されかねない。だから、999号で地球に降下する時でさえ、99番ホームからではなく、深夜にわざわざ、かつて母と住んでいた我が家の上空へ密かに列車を停めてもらい、オプチカルエレベーターで降りてきた。メガロポリスから距離はあるが、ここから歩いて下層地帯まで行くのが一番安全だし目立たないやり方だと思った。雪もなく、夜以外はそれ程寒いおもいをすることもなかった。人間狩りをする機械化人はまだいくらか郊外に存在したが、人目につかぬ様に必死で逃げた。結果的には比較的楽にメガロポリスまで来られた。 鉄郎は、たまに陽光が差し込むくらいの下層地帯で、配給された粗末な食料を食べて暮らす貧乏な生身の少年として生きていた。同じ様な身なりの子供はあちこちに存在したから、そうそう目立ちはしない。 地球にも、反機械化の同志は地下組織の様に存在していた。表向きは機械化人を見て羨ましがる様に見せておいて、その実、ずっと契機を狙っていたのだ。機械化母星が滅びた今こそが、まさに同志達の決行の時だった。 だが、機械化人の再生身化はなかなか進行していかない。一度怠惰で贅沢な生活におぼれた人達は、プライドだけは高く、生身の人間のことなど蔑むばかりで聞く耳を持とうとしないし、ましてやせっかく手に入れた永遠の命を手放すなど愚かな事として信じてやまなかった。程なくしてアンドロメダからの機械生体エネルギーは途切れ、残っていた約8割の機械化人は全滅。地球の総人口は激減した。悔やんでばかりいても仕方がないと、残った生身の人類だけで地球再建の一歩を踏み出した、その矢先…。 見た目は人間そっくりのメタノイドが密かに暗躍し始めた。何かがおかしいと気づいた時はもう遅かった。地球総人工化政策はとっくの昔から開始されていたのだ。メタノイド大帝国にとって機械帝国は目の上のたんこぶ的存在だった。だから、機械帝国が滅んだ瞬間から一気にその勢力を拡大してきたのだ。 残っていた人間、特に嫌々ながら生身に戻った元機械化人達は志が貧しく、いとも簡単に飽食世界のブタになった。逆に、表立った同志達は極刑もしくは地底へと追いやられた。それでも鉄郎は、この時点ではまだ拘束されてはおらず、地下に生活物資を届ける仕事をしながら、裏では地球連邦政府の情報を集め様子を窺い、地下の同志達を手助けしていた。 次第に酷くなる地底の環境。照明も無く零下という世界で苦しみながら頑張る同志達のために、鉄郎は密かに発熱装置の開発にのりだす。拘束されている機械工学に詳しい男に製造過程を伝授してもらい、地下に行くたびに少しずつ自分で製作していった。製造中の鉄郎の姿を見た者はいない。せいぜい「経験のいっぱいある人が時々作業していく様だが、それが誰かは分からない」といった風に。 しかし、後少しで完成するかというところで計画は漏れ、鉄郎は逮捕される。極刑にはならなかったものの、地底送りになり無期懲役の禁固刑に処された。見かけがチビで薄汚い小さな子供だったからか、大して身分調査されなかったのは幸いした。基本的には上層部に反抗した者は有無を言わさず地底送りの烙印を押されるような御時世になっていたからなのだが、ご多分にもれず、鉄郎も危険分子予備軍として保護観察される身となった。俗に言う「永久自室幽閉の刑」である。鎖でつながれ外出などもっての他といった生活だったが、殺害されないだけ運が良かった。本人が気にしている不格好な体形、それが功を奏する…複雑な心境ではあったが。 刑としてはどちらかといえば軽い方だったから、独房にはジャンク部品や廃棄された機械化人の部品などを使って組み立てた自作PCなど周辺機器が連なり、何とか闇物資の書物類も手に入れて、鉄郎は勉学にいそしむふりをして密かに情報収集をしながら脱走計画を企てていた。まったく勉強しなかったわけではないが、独学だから苦手分野は容易に避けられる、つまり、興味がなければ学ばなかった。当然、風呂や歯磨き・掃除と、俗に言う面倒くさいことからはしっかり逃げていた。そのため、旅立ってから後、冥王星を出る頃に、メーテルに嫌味を言われてしまうのだが…。 地底でこんなことが可能なのも、上層部に、かつての自分と同じようにスパイ活動をしていた同志達が協力してくれていたからだ。その中の一人の女性は、特に鉄郎に何かと世話を焼いてくれた。初めのうちは本来の彼女の仕事である食料の調達だけだったが、何度か話をしているうちに、いつの間にか双方とも好意を持つようになった。彼女は見かけではなく、人の内面を見てくれる心優しく芯の強い娘だった。鉄郎は彼女にだけは真実を話したし、彼女も同様だった。 幽閉されて幾週間、鉄郎は彼女から一匹の子猫を預かった。地球最後の人間以外の哺乳類動物。彼女は、以前飼ったことのある鉄郎なら何とかしてくれる…と思った。状況が厳しくなって、なかなか訪ねて行くことの出来ない自分の代わりに可愛がってあげてほしい…と。鉄郎はお礼に、危険を承知でわざわざ自分のところまで訪ねて来てくれるからと、旅で愛用していた大事なマントを贈った。特殊素材で出来ていたそれは、自分の周囲の温度を一定に保ってくれるのだ。 幽閉されて後、地球の大自然がすっかり消えたことは、彼女の証言と自作PCで確認した。絶望して気力も抵抗する意志もなくしてメタノイドの手先になっていく同士も少なからずいる。絶望感に打ちひしがれる鉄郎の気持ちを察した彼女は、決意する。大自然を好む鉄郎が最も好きだとする生花を、何とか手に入れて見せよう、と。 時間はかかったが何とか花は入手した。地球における最後の生花。しかしそれを所持していたことが裏目に出た。メタノイドにとって有毒な「生花」を手にしているだけで極刑に処されることを、彼女は知らなかった。彼女は鉄郎の元に行く途中で銃殺されてしまう。鉄郎が脱走して氷の中の彼女を見つけるまでその死を知らなかったのは、地上で殺されて、見せしめのために地底のその場所に放棄されたからだ。体温を失った彼女が零下の地底で凍りつくのは時間の問題だった。 部屋から一歩も出られず、そのために地球での最愛の人の死を知る由もなかった鉄郎は、ただ黙然とエターナル合金の鎖のはずし方を研究していた。しかし所詮は卓上の空論に過ぎず、時間だけが流れるだけ。あの娘も来なくなって久しい。最後に逢った時の「楽しみにしてて」と言った彼女の笑顔が妙に気になっていた。今やすっかり慣れたミーくんだけが唯一の心の支えだった。幾度となく挫けそうにもなったが、それでも鉄郎は信じ続けた。「時間は夢を裏切らない!」と。 奇跡は、起こった! 二度と逢えまいと思っていた青春の幻影…メーテルが、自ら自分の元へ訪ねてきてくれたのだ。水面下で活動していた鉄郎にとってはまさに希望の光である。いとも簡単に鎖は外れ、脱走計画は遂行された。しかし、もはやメタノイドの犬に成り下がっていた地球連邦政府が黙っているほど、状況は甘くなかった。 氷の中の彼女との無言の再会。涙を流し別れを告げた時、威嚇狙撃されて再び拘束される。徹底的に身元データを収集されて、鉄郎の経緯はすべて明らかになった。地球総人工化政策に反対し、機械帝国の英雄・機械伯爵まで倒していたことが明るみになった。危険分子であることがすっかりバレてしまった即日、ボルカザンダ三世自身の手で原子分解機による死刑執行! そこへまさかの999号の登場だった。鉄郎にとってしてみれば地獄に仏。本当に運のいい旅立ちだ。メーテルが無事に999号に戻り、カノンが突入を敢行し、車掌の投げ縄の腕が超一流でなければ、鉄郎の体は分解され、命の灯は消えていた。奇跡は奇跡を呼んだ。志半ばで死んでいった同志達の魂が、鉄郎を守護していたのかもしれない。ずっと懐に隠していた愛猫ミーくんと共に鉄郎は再び旅立つ。 列車突入による地球連邦政府ビルの崩壊は、メタノイドにしてみれば立派な犯罪行為であり、鉄郎はメーテルと第一級公開犯人として指名手配されるに十分な存在になっていく…が、これは仕方ないだろう。有機生命体の運命、…いや、時空を越えた全宇宙の全生命体の未来を乗せて、列車は一路エターナルへ。新たな壮大な999号の旅ははじまったばかりだ…。 |
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