高機能自閉症とアスペルガー症候群
アスペルガー症候群の歴史はオーストリアの医師、ハンス・アスペルガーが1944年に「小児期の自閉的精神病質」
と題した論文をドイツ語で発表したことに始まる。アスペルガーの報告した子どもたちは「典型的な自閉症」と多くの
類似点があったが、「典型的な自閉症」と比較すると言語によるコミュニケーション能力や知的能力が高いことが特徴
的だった。その後数十年にわたりアスペルガー症候群はドイツと日本の一部の学者以外からは忘れられていたといって
よい。しかし1981年にイギリスのウイングがアスペルガーの論文を英文誌に紹介し再評価を行ったことを契機に国際
的に注目されるようになった。
ウイングがアスペルガー症候群の概念を紹介した理由は、それまでのイギリスでの自閉症概念があまりに狭すぎて
「自閉症的」な子どもたちが必要なサポートが受けられなかったとうことにある。ウイングの意図はアスペルガー症候
群も広義の自閉症に含めることで、自閉症に特化したサービスを受ける範囲を拡大しようという点にあり、アスペルガ
ー症候群の独立性を強調することではなかった。
ウイングの再評価したアスペルガー症候群の概念はイギリスを中心に急速に広まっていったが、知能が比較的高い例
がアスペルガー症候群と診断されることが多いこともあって、実質的には「知的障害がない自閉症」と同義でアスペル
ガー症候群の用語が用いられることが増えていった。高機能自閉症とアスペルガー症候群を厳密に区別すべきとの意見
も一部にあるが、少なくとも臨床的には高機能自閉症とアスペルガー症候群を厳密に区別する必要はない(Wing、2000)。
大妻女子大 よこはま発達クリニック
内 山 登 紀 夫
