国際的診断基準の問題点
 
   ICD-10(世界保健機関)やDSM-W(アメリカ精神医学会)の診断基準が良く使われるが、この二つの診断基準は

微妙に異なる表現があり、一般の人にはわかりにくい点が多いと思われる。

  例えばDSM-Wでは「自閉性障害」に対応する障害がICD-10では「小児自閉症」と呼ばれる。また両方の診断基準

で「広汎性発達障害(PDD)」と名づけられた広義の自閉的な発達障害を指す用語が用いられている。さらにICD-10

では「非定型自閉症」、DSM-Wでは「他に分類されない広汎性発達障害、PDDNOS」という診断カテゴリーがあり、

自閉症とどう違うのかが議論される。

 保護者や教師と話していると、「自閉症は重篤な障害だが、アスペルガー症候群なら普通学級でやっていける」とか

「自閉症ではなく広汎性発達障害だから、努力すれば障害を克服できる」といった意味のことを聞くことがある。この

ような見方は誤解であろう。

 アスペルガー障害(DSM-W)、アスペルガー症候群(ICD-10)は広汎性発達障害に含まれる。しかし国際的診断基

準の定義は臨床的には使いづらい.例えばアスペルガー障害(DSM-W)であるためには「2歳までに単語を用い、3歳

までに意思伝達的な句を用いる」こと、認知の発達などで臨床的に明らかな遅れがないことが条件になる。筆者らの臨

床経験では、このような基準を適用するとアスペルガー性障害と診断される子どもはきわめて少数になってしまい、

ほとんどの子どもが「自閉性障害」あるいは「他に分類されない広汎性言発達障害」と診断されることになる。

 さらにどちらの診断基準にも「高機能自閉症」というカテゴリーはないことも確認しておきたい。


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                                                                                                                                                    内 山 登 紀 夫