■その他、この事件を考える上で重要なことは?
今期の国会には国際条約のサイバー犯罪条約を批准する立法が提出される予定になっています。そのインパクトや考えられる問題点についてはatmarkitの記事を参照してください。今回の検挙は、サイバー犯罪条約の批准と新たなサイバー捜査機関の設立などに向けて「ネット世界の危険性」をアピールする警視庁のアドバルーン的な性格も持っている、という指摘もあります。またデジタル特捜隊::ITは人を幸せにするか 第19章 漂流するセキュリティ(1)の取材に答えたセキュリティ関係者からは、今回の検挙が「最初からoffice氏を狙い撃ちしたものだ」「警視庁の世論誘導だ」といった指摘がなされています。
「朝日への記事のリークといい、その後の逮捕までの流れといい、警察の意図的な世論誘導を感じずにはいられない。無断で侵入してデータを改竄したり、システムをダウンさせて業務妨害させたなどの行為であれば、さらし首も当然と思うが、(こう言ってはよくないのだけれど)わずか数人のデータを特定の場で公開しただけ。結果的に個人情報が流れてしまったことについては申し開きはできないだろうが、あれほどの報道が必要だったのか疑問に思う」
周知の通り、ACCSはネット世界ではあまり好ましく思われていない組織ですし、office氏についても独善的な脆弱性報告のスタイルが一部セキュリティ関係者から疎まれていたという事情もあるようです。しかし、ACCS憎しの一念でoffice氏側をかばったり、office氏に対する反感からACCS側を正当化したりという二者択一にハマってしまうと、本件をテコにしてネットワークセキュリティに関する何らかの議題設定 Agenda Settingを狙っている人たちの思う壺かもしれません。「個人情報を盗み出したハイテク犯罪者の末路」とか「行政による不当なハッカー弾圧事件」といったわかりやすい「物語」に回収され、その枠組の中だけで物事を見ないように注意したいところです。
