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第四話・お初の涙
西暦1598年(慶長3年)
2月12日
茜
「ニ〜ン
よぉ 待たせたな
アオオニ」
宗矩
「急くな躯喰
後でゆっくり
やらせてやるからよ
・・・ヘッ ようやく
来やがったなぁ アオオニ」
蒼鬼
「誰だ」
宗矩
「太閤殿下に仇なす
賊臣を斬る者だ」
蒼鬼
「・・・速いっ」
宗矩
「剣に迷いが無いねぇ 見立てどおり
いい太刀筋をしていやがる」
蒼鬼
「その型 柳生の剣・・・
しかも“裏”かよ
ヘッ 最近どうも
柳生に縁があるな」
宗矩
「ほう 裏の型を知っているか
さすがは海道一の
弓取りの息子さん
まぁ 不肖の子らしいがなぁ
昔から剣術は嫌いでなぁ」
茜
「見つけたぁぁぁ!
見つけたぞ 宗叔父・・・
いや・・・
宗矩!!」
宗矩
「剣術は嫌いだと
いっているだろうが」
茜
「アオオニ 桜を積んだ
荷車はこの先のはず!!
運び出される前に
焼き払っちまえ!!
コイツは・・・
オレが殺る!」
宗矩
「誰かと思えば・・・
もう一人の侵入者が
オマエとはな・・・ 茜よ
しかし 俺の刺客にオマエを選ぶとは
柳生のご老人もよくよく業の深い」
蒼鬼
「十兵衛 気をつけろ
この男 ・・・強いぞ!」
茜
「いいから早く行け!!
こいつだけはおれが
やらなきゃならないんだ!」
蒼鬼
「しかし・・・」
茜
「邪魔すんな!」
蒼鬼
「いや わかった
気をつけろよ」
宗矩
「おれはオマエに
用はない
・・・が ・・・おもしろい
久しぶりに
稽古をつけてやろう 茜」
茜
「抜け! 宗矩!」
宗矩
「オマエごときに
刀なぞいらぬわ」
茜
「ふざけるな!」
宗矩
「この鬼ノ眼の小娘が・・・
その忌々しい眼で・・・
俺を・・・
見るんじゃねえ!」
蒼鬼
「火縄か!?」
お初
「動かないで!!
・・・やはり
あなただったのね」
蒼鬼
「お初か!?」
お初
「動かないで!」
蒼鬼
「綺麗になった・・・
物騒にもなったがな」
お初
「駿河に現れた
秀吉様の桜を焼き払う蒼い鬼・・・
噂が大坂まで伝わった時
すぐあなただとわかったわ」
蒼鬼
「俺も有名になったもんだ」
お初
「茶化さないで!
ねえ・・・ 私と一緒に
大坂に帰りましょう
今なら 秀吉様も
きっと許してくださるわ
そして昔のように
秀吉様のために・・・」
蒼鬼
「それはできねぇ」
お初
「なぜ秀吉様の邪魔をするの?
どうして“桜”を狙うの?」
蒼鬼
「秀吉の邪魔か・・・
オマエ“桜”がどんなものか
知ってて言ってんのか?
自分の眼で
その眼でよく見てみろ!
コレが桜か!?
これも これも!!
全部だ!!
今の秀吉は もう俺の
知っている男じゃあない」
お初
「それでも
秀吉様は・・・ あなたの・・・」
蒼鬼
「だから!
・・・だから俺がやるんだ」
お初
「あなたはわかっていない
今の天下人は秀吉様
日本国は太閤殿下のモノ
豊臣家こそが国家よ」
蒼鬼
「ちがうっ!!! 断じてっ!!!」
お初
「じゃあ! あなたひとりで
何ができるっていうの?
ひとりで一国を相手に・・・
勝ち目はないわ!」
蒼鬼
「勝てないって
わかっていてもさ・・・
戦わずに負けるのは
シャクだろ?」
お初
「バカなことは考えないで
私と一緒に帰りましょ
秀吉様の元なら一生
何の不安も無く暮らせるのよ
こんな世の中でも
安心して生きていけるの!」
蒼鬼
「生き方は他人に
委ねるモンじゃあない
自分で決めるモンだ」
お初
「そんな生き方!
今の時代に許されるわけ無いじゃない!」
蒼鬼
「生き方は・・・
時代に許されるモンでもない」
お初
「お願いよ・・・
お願いだから・・・
わたし・・・
今でも・・・ あなたのこと・・・
一緒に・・・
いてほしいだけ」
蒼鬼
「秀吉は俺が斬る
そう決めたんだ」
お初
「ならば私は・・・
あなたを
撃たなければならないわ・・・
結城秀康!」
蒼鬼
「・・・その名はとうに捨てた!!」
蒼鬼
「秀吉を 斬れるのか
斬れないのか
そんなの やってみなきゃ
わかんないだろ?」
お初
「天下が定まって
やっと戦がなくなったのに・・・」
蒼鬼
「だが 今よりはマシになる
民にとって今の暮らしは
惨めすぎるからな」
お初
「秀康・・・」
蒼鬼
「お初・・・ 俺と来い
俺と一緒に・・・」
宗矩
「よォ
そこまでにしてくれやァ
俺の女を誘惑するのは
そのくらいにしてもらおうか
ま もっともこの女は
俺とは別れられん体だがね」
蒼鬼
「おい 十兵衛はどうした?」
宗矩
「さあてな
どうだったかな・・・
心配なら探しにいけよ
あのガキにはたっぷり
お灸をすえてやったからな
大人のお灸をなぁ
おい 桜を全部運び出せ!
ん? どうした?
ガキを探しに行かないのか?
あのガキ あと三分もしたら
粉々になっちまうのに・・・
酷いヤツだな」
蒼鬼
「なんだとっ」
宗矩
「だがもし
桜を選ぶというなら
俺が相手をしてやる・・・
いっとくが 俺は強いぜ」
蒼鬼
「クソッ!!」
宗矩
「走れ! 走れ!
いっしょうけんめい走りなさーい!!」
蒼鬼
「十兵衛・・・!!」
宗矩
「秀康殿!!
心配せずとも太閤様の
“醍醐の花見”
さぞや盛大なものに
なるであろう!!」
茜
「だめだ
体が動かねえや
こりゃ
死んじゃうだろうな
爺ちゃん ゴメン・・・
駄目だったよ
アオオニのヤツ・・・
ちゃんと桜は燃やせたかな」
蒼鬼
「十兵衛!!
おい! 十兵衛!!
生きてるか!!」
茜
「アオオニ・・・」
蒼鬼
「よかった 生きてるな」
茜
「どうして・・・
オマエ
“桜”は燃やせたのかよ・・・」
蒼鬼
「あんなモン
後でどうにでもなる」
茜
「馬鹿 それじゃオマエ
何のためにここにきたんだ・・・
だいたい
何でオレなんかを助けた」
蒼鬼
「オマエ あんな所で
死んでる場合じゃないだろ?」
茜
「ばかやろぉ・・・
あんなヤツに・・・
チクショウ・・・
チクショウ・・・!!」
蒼鬼
「次へ行くぞ 十兵衛
オマエはヤツを斬れ
俺は・・・ 秀吉を斬る」
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