天正十年(1582)、
柴田勝家は織田信長の命を受け
北国方面軍を率い上杉領を攻略していた。
その勝家のもとに
明智光秀に謀反の動きありとの
報せが届けられる。
各方面に兵力を分散した今、
信長の警護が手薄になっている…。
信長の危機を直感した勝家は即座に反転。
単身、信長が滞在する京・本能寺を目指した。
「また一つの時代が去るのか
…そうでないのか
外伝、本能寺の変
時代よ、この柴田が見定めん」
明智光秀
「敵は本能寺にあり!
信長様を…いえ、戦国の魔王を討つのです…!」
織田信長
「興ぜよ! 光秀よ…この謀反を、愉しもうぞ」
柴田勝家
「時代が…うねりを上げておる
大殿と光秀…二人の器がせめぎ合い、炎となりて
本能寺を…京を…天下を、焦がそうとしておる」
明智光秀
「これは信長様と私…どちらが世を築くかを決める場
柴田殿…招かれざる客はお帰りいただこう」
柴田勝家
「ええい、端武者どもがわらわらとうるさいわ
なんとしても大殿の下へ参らねば…
かかる重要な場に招かれざる客が入れるはずもないわ
光秀…分からぬか、わしも時代に招かれたのよ
ここは通れぬか…別の道を行くまでよ」
織田信長
「…蛆のごとく敵が湧きおるわ」
柴田勝家
「本能寺に火か…急かしおる
大殿の下へ急がん…それが時代の求め…
わしが来たことで大殿の時代が続くことになるのか
光秀が、己が望む世を時代に築くことになるのか
大殿、光秀、見届けさせてもらおうぞ」
濃姫
「助けなんて無用よ、あの人が果てるなら私も…」
柴田勝家
「無論、その儀は承知
ただお方様に群がる虫どもを蹴散らしに参ったまで」
雑賀孫市
「いいザマだな、信長
だが、引導は俺が直接渡させてもらうぜ」
柴田勝家
「時代が、わしの他にも客を呼んでおったか
蘭丸、邪魔をするぞ
大殿とともに果つるが、わぬしの望みであろうがな」
森蘭丸
「勝家様!」
柴田勝家
「勝定よ、光秀の下でよくやっておるか?」
柴田勝定
「勝家様…旧主に刃向ける無礼、お許しあれ!」
柴田勝家
「構わぬ、今の主に忠を尽くせ
光秀はよき主のようじゃ…今の戦いで分かるわ
殿、謀反の興を削ぎ御免 勝家、お召しにより推参」
織田信長
「ほう?」
柴田勝家
「時代の招きは、大殿のお召し
勝家の生き様は、そうござった」
織田信長
「ならば信長もその招きに応じるのみよ」
柴田勝家
「時代の天秤…傾いてきおったわ」
明智光秀
「私の望みは… ゆえに信長様に挑む!」
柴田勝家
「参れ、光秀 自身の手で時代を切り開いてみせい!
謀反もご堪能なされた もはやよろしかろう」
織田信長
「うぬの好きにせよ」
柴田勝家
「ならば、ともにお逃げいただく」
明智光秀
「させません…全軍、進撃!」
柴田勝家
「時代決する戦に関わりしこと皆誇りに思え…そして
明智の武者どもよ、命の捨て所、我が前と定めい!」
織田信長
「是非もなし」
濃姫
「勝家、この地獄から脱出できそう?」
柴田勝家
「笑っておられるか…お方様は地獄好き
そして大殿は修羅場好き…仕えにくきことよ」
森蘭丸
「勝家様が救援に現れるとは…」
柴田勝家
「わぬしの死に所がここでなかったということよ」
明智光秀
「柴田殿、どかれよ…あなたは関係ない…!」
柴田勝家
「ごちゃごちゃうるさいわ、光秀!
大殿と戦交えたくば…新たな時代築きたくば…
柴田の屍、越えてゆけい!
これで大殿をお助けできたか…」
明智光秀
「時代は…信長様を…選んだのですね…」
柴田勝家
「今はな…だがいずれ、大殿もわしも枯れて朽ちる
子らの世代に時代をつなぐために」