12月7日 晴れ・強風

 毎回の事ではあるのだが、カーナビのようなハイテク機器にまったく縁の無い愛車「青チョロくん」でも道路地図を片手におおよその場所までは行ける。しかし登山隊としては大変恥ずかしい事なのだが、目指すべき山が判らない。登る予定の山がチョ〜有名ならいざ知らず、これから自分達が登ろうとしている山がどれなのか皆目判らないのである。(爆)
これを読んで笑っている人も多いだろうが、「本当言うと私もわかんない!」って人も多いんじゃないですか?
標高が高かったり遠くからでも見える山ならば日常の会話にも登場するだろう。宇都宮市から見る日光男体山などがそれである。
平地にポツン・・でもドカン!でもいい、一つだけある山なら判る、筑波山みたいなやつ。
ところが我々ぺんぎん隊のフィールドは標高500m前後で山の隣も山、向こうもこっちも似た様な山なんだから判んないよ!(逆ギレ爆)
しかし、そんな赤っ恥登山隊でも「これだ!」と判る山が大小山(313.6m)である。

 足利市の東部、佐野市との境に位置し以前は鷹巣山と呼ばれていたこの山は大天狗、小天狗の棲む霊場として信者を集めた歴史がある。
国道50号から佐野市内を抜け足利方面に走る。この近辺には大小山の他にも行道山、両崖山などハイキング向けの山がある。
という事はどれもこれも似た様な高さの山なのである。
 ”こんがりコーン”の食べかすを口の周りに付け、ともすれば佐野ラーメンの看板に目を奪われ気味の隊長に
「大小山あったかい?」
ハンドルを握りながら聞く。
 隊長が大小山を知っているのかと言えば、そういう訳でも無い。ところがその知るわけでも無い隊長も目を凝らして探している。
目を凝らして山を探す人も普通居ないだろうが、そこはぺんぎん隊であるからして目を凝らすのである。
「あった!」
さすが隊長である。見事に目指す大小山を見つけ出したのである。

 それもその筈、目指す大小山は山肌に「大」「小」の文字が掲げられているのです。(笑)
こんな山はふつう無いでしょ?
これには賛否両論御座いましょうが、我々ぺんぎん隊には目指す山が一目で判る効果は抜群でした。

 麓の阿夫利神社からいくつかの登山道が延びている。神社脇を行く舗装路「見晴らしコース」は一般的で山頂まで30分。駐車場向かいの小道を入る「妙義山コース」は80分。
 案内板を見ていると地元の人らしいおじさんが「これから登るの?」と話しかけて来た。そうだと答えると「ここに新しい道が出来てこの辺りに出るんだよ。」とコース地図上で教えてくれた。見晴らしコースより遠回りで妙義山コースより手軽なコースは「30分じゃ早いし80分じゃ隊長が・・・」と思っていた私達に丁度良いものであった。

 神社から沢沿い(ホントに小さい流れ)の登山道に入ると”石尊の滝”と書かれた滝(?)がある。およそ滝らしくないそれは、溝を切った丸太に流々と水が流れ、四角く切った枡の中に滔々と流れ落ちるものである。
”水垢離をする場”と書いてあるがミズゴリとはテレビの時代劇でよくやっているヒロインが願い事を叶える時に白装束で井戸の水を頭からかぶっている私好みの絵柄ではなく、修行の為に滝に打たれるヨレヨレの坊さんの図らしい。(爆)
まあ、渓流釣りをたしなむ私から見たら「どこが滝なの?」って感じでした。(バチが当たるかな・・・)

 杉林の中を差し込む陽光に向かい登って行く。枯れ葉でおおわれた登山道をサクサクと登る。急に視界が開け稜線の外れへと飛び出す。ここまで登ると大小の文字も大きく見える。ここから多少のアップダウンを交えた稜線の散歩となる。杉林は広葉樹林に姿を代え、落ち葉を敷き詰めた稜線の道を時折冬の風が吹き抜ける。登山道は登るにつれ岩稜を交えて来る。300m級の里山なのに眺めの良い稜線散歩は予想外だ。

 前方に大小山頂上(282m)が見える稜線の岩上で休憩。頂上にくつろぐ人々が真近に眺められる。「あそこが頂上だ、頑張れ!」と隊長に声を掛ける。回を重ねるほどに山歩きが上手になる隊長だ。今日は終始私の前を歩いている。お得意の「疲れた〜!、待ってぇ〜!」が一度も出ない。
 鞍部を駆けるように進んで大小山頂上。ここは天狗岩と言われる頂で、ここの眼下に「大」「小」の文字が掲げられているのだが勿論上に居たのでは見ることは出来ない。ふと先を見るとこちらより高い頂がすぐそこに見える。妙義山(313.6m)だ。
 本来この2峰を合わせて大小山と呼ぶらしく、大小山は足利市からの呼び名で佐野市では妙義山というらしい。地形図では313.6mに「大小山」とあり妙義山の名は無い。そして以前鷹巣山と呼ばれていた頃もあると言う。何とも難しい山だ。ちなみに313.6mの頂に二等三角点がある。

 頂上で周りの景色を眺めての休憩。時折吹く風に飛ばされそうだ。風が強いので遠くまで見通せる。展望が良いのはとても得した気になる。登山で頂上に立つ目的は達成感なのだろうが、それは世界に名だたる高峰であって里山では眺望が大きな意味を持つと思う。少なくともぺんぎん隊はそうである。
秋から冬になるこの時期、木々は裸同然となり落ち葉が道をおおい山は寒々しい景色となる。しかし言い換えれば眺望を邪魔する木葉が無いので意外な展望が期待出来たりもする。登山のガイドブックに「展望は望めない。」と書いてあっても
この時期だと「すっげぇ〜!」っていう体験もあるものだ。
関東の北の山々の始まりがここ佐野市辺りからである。360°の展望を眺めると大きく広がる関東平野と、薄っすらと雪を頂いた北の山々が半分づつ眺められる。

ふと隊長に目を向ける。雄大な眺めに興味が有るのか無いのか・・・。私は隊長の足元に延びる影を見てビックリした。影が”ぺんぎん”なのだ。
彼の大好きな絵本から取った”ぺんぎん隊”ではあったのだが、隊長の本当の姿は正しく正真正銘の”ぺんぎん”だったのである。
ってことは親の私も・・・と思って自分の影を見たら普通の人間だった。

 さて、頂上からの下り。案内図でいう「妙義山コース」から下る事にする。頂上から一段下がった岩稜へ降りる。意気揚々と歩く隊長の足が止まった。私を振り返り「道が無いよ。」と言う。追い着いて先を見るとなるほど・・・
 隊長には道が無いように見える筈である。急な斜面にロープが下がっているではないか。登山で俗に言う「鎖場」と言う場所である。「そのロープにつかまって降りるんだよ。」と教えてやると「違うよ、これはここから先に行っちゃいけない!っていうロープだよ。」と言い返して来る。隊長にすればこんなロープにつかまって降りたくはないのであろうが、降りなければ帰れないのだ。
 初めての経験なので私が先に途中まで降りて隊長をサポートしながらクリアする。何とも真面目な顔でロープにつかまる彼が可笑しかった。

  

 まあ予想外ではあったが楽しい斜面下りを終え意気揚々が復活した隊長。落ち葉を鳴らしながら下っていくと奇妙な洞窟に出くわした。上下に穴があり奥が深そうだ。隊長の目が「入っていいか?」と問い掛けている。「行ってごらん。」・・・・
恐々とではあるが暗い洞窟に入って行く時は”ぺんぎん探検隊”に早代わりしていた。テレビで見る洞窟探検はスリルとヤラセを取り混ぜて、それはそれで面白いのだが、現実の洞窟探検はコウモリもガイコツも無く、哀しい事に最終はゴミの山だった。お宝ならぬゴミ山に隊長もがっかりだった。

 探検を終えて「さあ!」と下りに掛かろうとした足元にまたもロープ出現!「え〜、またぁ・・」と意気消沈の隊長を励まし下りだす。と、意外や意外かなりの難度である。気が付くとサポートする筈の私がマジな顔して足場を探している。上にいる隊長から全面的信頼を受けている身としては真剣な顔で足元を探り、上を見るときは笑顔でという早業を演じなければならない。ああ、しんど・・・

 難関をクリアしたぺんぎん隊。再度、意気揚々の隊長。落ち葉の道をサクサクと下って行く。杉林の下から人の声と一緒にエンジン音が聞こえる、駐車場だ。
高難度の登山を制した隊長はまた一つ成長した・・・かな?