11月5日  晴れ


 実は夕日岳(1520m)には今回で3回目の挑戦である。2004年4月に古峰ヶ原湿原から行者岳経由で夕日岳を目指したのだが時間的に余裕が無く地蔵岳(1483m)山頂から下山した。そして今年5月に再度挑戦に行ったのだが地蔵沢沿いの林道が雪で埋まっていて、おまけにチラホラ雪も舞い落ちて来るという天候に登山を中止したのである。こうなると「夕日岳」の名前が頭に刻み込まれてしまい早いところでやっつけておかなければならないと思い続けていた。

 毎年春先から秋口にかけては副隊長が岩魚釣りに忙しく、ぺんぎん隊の活動も鈍り勝ちである。そこに来て9月に渓で友人を亡くし、それでも気落ちした心に無理矢理に鞭打って日光外山と芳賀富士へと足を向けた。ところが更に10月頭に大切な渓父・川上さんに事故で逝かれてしまい、何もする気力も起きない一ヶ月を過ごした。本来ならキノコ三昧の晩秋を送る予定だった季節である。

 月も変わり漸く気を取り直して動き出す事にした。とは言えキノコ採りなど行く気も起きない。そんな気分の中で動くならば「ぺんぎん隊」が一番良い。復活を掛けての登山は「中途半端はいけない!」と心に決めて大芦川流域での最高峰夕日岳への再挑戦に決めた。

 今回は夕日岳登山が目的なので古峰神社裏の地蔵沢沿いの林道からハガタテ平経由で地蔵岳山頂を越えて三つ目から夕日岳へとルートを取った。小学3年生の隊長の脚力と久々の本格的登山のヨレヨレ副隊長、往路4時間、復路3時間半と所要時間を予測しての出発である。

 古峰神社裏の車道からゲートを越えて地蔵沢沿いの林道に足を踏み入れる。呆れるほど続く砂利の林道歩きが始まる。前回地蔵岳からの下りで歩いているが下りなのに呆れるほど長く感じた林道である。そこを今回は登るのである。
 ダラダラと登る林道を登り切ると杉林の登山道が始まる。しばらく地蔵沢の沢音を右手に聞きながら登ると杉の幹に赤いテープが巻かれた分岐が現れる。左に登り一旦地蔵沢から高度を上げる。分岐を真っ直ぐに行ってしまうと沢に下って道が消えてしまうので注意が必要である。
 分岐を左に上がり忠実に登山道を歩くと地蔵沢が分岐した左の沢を崩れた堰堤上部で越える。対岸には白いテープがあり登山道を示している。登山道はジグザグに高度を上げて右の沢を渡る。しっかりした水場はここからしばらくの沢沿いである。再度沢を渡り返すと以降水場は無い。
 沢を渡り返してからハガタテ平までの登りはかなりキツイ。雨水の通り道状のジメジメした歩き難い登山道から杉林の急登と続き尾根越しに空が明るく見えて来たらハガタテ平到着である。

 ハガタテ平は古峰ヶ原湿原から行者岳、大岩山、唐梨子山と歩く登山道との合流点の鞍部である。此処と地蔵岳の往還は既に経験済みのぺんぎん隊である。そこにはこの登山で隊長が一番嫌がったガレ場のトラバースがある。昨年は崩れて間もなく本当にガレて危なかったが今年は既に表面にあった石も落とされ安定した土とトラロープがあり楽々クリアだった。

 九十九折れの登山道を登り稜線に出る。何故か芝生の稜線を少しだけ歩くと地蔵岳頂上直下の急登だ。息を切らせて登り詰めると石の祠に納まったお地蔵さまが迎えてくれる。地蔵岳の山頂である。
 山頂では十数人のパーティーがティタイムを過ごしていてとても賑やかだった。ぺんぎん隊も頂上で大休止。朝飯として買ったコンビニ弁当を広げた。昼食には定番のインスタントラーメンを担いで来ている。パーティーの記念撮影のシャッターを切ってあげたりして30分程時間を過ごす。細尾峠に向かう大パーティーが歩くき出し、ぺんぎん隊も後を追うように地蔵岳山頂を後にする。ここから未体験の夕日岳への道である。

 地蔵岳から稜線を快適に歩く。木の間越しに夕日岳が見えている。10分程歩くと三つ目に到着。夕日岳への登山道は三つ目からの支尾根となる。メインの登山道は細尾峠から薬師岳へと向かう。大パーティーは細尾峠へと下って行った。
 
 支尾根に入り稜線を下る。一度下ってまた登るのは登山の常識である。しかし夕日岳の高みを正面に見ながら稜線を鞍部に下りながらついつい愚痴が出る。それでも10分も歩けば「中岩」を通り過ぎて夕日岳山頂直下の急登に入る。

 山頂から単独の男性が下って来た。すれ違い際に「ホームページの方ですね、2年生からでしたっけ?元気ですよね。」と隊長を見ながら声を掛けてくれた。こうした出会いがあるからホームページの更新も手を抜けない。嬉しい事である。

 息を切らせながらも足を進めると夕日岳の山頂表示が目に入る。念願の夕日岳頂上に到着。二等三角点を背に開けた北を向けば奥白根や男体山が紅葉最中の山容を間近に見る事が出来る。夕日岳山頂到着12時ジャスト。所要時間3時間だった。

 こうして夕日岳登山を達成した。
 ぺんぎん隊は復活したのか・・・。

 そう言えば下山時に見た隊長の影はまたまたペンギンだった。大小山以来の登場である。

 何もかも忘れて影を見ながら大笑い出来た。川上さんがこの世から居なくなった日から初めての大笑いだった。さすがにぺんぎん隊隊長である。無言の励ましを副隊長にくれたのだろう。

 来年の事は自分自身全く予想もつかない。渓に立つ自分がいるかどうかでさえ自信が無い。多分川上さんとの楽しかったあれこれを思い出しながら寂しくて涙を流すことだろう。
 しかし私にはもう一つの顔「ぺんぎん隊」がある。川上さんが褒めて可愛がってくれたぺんぎん隊だ。山菜採りやキノコ採りに連れて行ってくれたぺんぎん隊である。

 里に降りて来た。携帯にメールが二件入っていた。渓道楽の友人高野さんとHP野外遊行倶楽部のウズラさんからだ。23日のぺんぎん隊バーベキューに参加してくれるとのこと。そう、ぺんぎん隊は動き出したのだ。 
 息子を中心に周囲の子供たちやその親、友人を巻き込んでこれからも楽しく過ごす事で寂しさを紛らわせながら少しずつ元に戻って行きたいと思う。

 下山後の心地よい疲れが全身を包んでいる。こうして日記を書いている傍らで隊長は早々と寝息を立てている。



ハガタテ平からの稜線登山道にて


急斜面での休憩


地蔵岳に向かう斜面にて


夕日岳から望む日光連山


地蔵沢沿いの登山道にて


林道から夕日岳


地蔵沢堰堤上からハガタテ平方向を望む


登山道にて


登山道にて