2月5日  晴れ


「おとうさん、この道は何番?」

ハンドルを握りながら隊長の方へ目をやると一生懸命に地図を見ながら現在地を確認している。

「ん?ああ、123号線だよ、地図だと赤い線だよ。」

「え〜と、有った!ねえ、今の川だよね?それじゃ、これかな・・・」

「柳田大橋ってあるかい?」

「何とか田大橋ってやつ?」

「そうそう、『やなぎ』って言うんだよ。」

車に乗り込む時に渡した道路地図を見ながら助手席で遊んでいる。まあ、これも一つの勉強だ。地図を見られれば楽しみも増えるだろう。試しにナビをやらせてみる事に・・・

「行き先はここ。この先に踏切があるから踏切から道案内をしてくれる?信号真っ直ぐとか右とか教えてくれれば良いよ。」

「うん、わかった!」

 こうして地図と睨めっこしながらナビを勤める隊長の指示通りに辿り着いた先は陶芸の町益子にある「フォレスト益子」の駐車場である。ここが今回の目的地高館山302mの登山口となる。

 丘陵に作られた宿泊施設フォレスト益子の周辺は明るい里山の自然を生かした公園になっている。芝生の広場の一角に「関東ふれあいの道」と標識があり、これが登山道入り口である。

 疑木のゆるい階段を登って行くと道の左右にトリム施設があり、隊長は喜んで遊んでいた。時間もたっぷりあるのでトリムを楽しむ隊長に合わせてのんびりと登って行く事にした。平均台、片足バランス、腹筋、ロープ登りetc. チャレンジ精神は旺盛なのだが今一つ運動能力に欠けている隊長だった。

 登山道は明るい陽射しが眩しい。ここのところ陽だまり登山ばかりのぺんぎん隊、結構これは気持ちが良くて癖になりそうである。県東部の山々は冬場でも雪が少なく明るい山が多いので子供連れの冬登山にはもって来いである。

 トリム施設を楽しみながら15分も登ると展望塔への分岐点に着く。「展望」と言う言葉に誘われて高館山への道を左に逸れて少し寄り道することにした。分かれて程なく展望塔下に到着。正に『塔』と言うに違わず木製の高さ20mの塔がそびえ立っていた。いく折りもの階段を登って最上部に辿り着くと、そこは360°の大パノラマが広がっていた。目の前の高館山は勿論、県南の山々、県北の山々、八溝の山々と栃木の山が一望出来る素晴らしさである。
 足元には益子の町並みを見下ろし真岡鉄道のSLの汽笛と蒸気を眺める事も出来る。野焼きの白い煙が田んぼのあちらこちらから立ち上る里山の風景を心行くまで堪能する事が出来た。

 展望塔を後に分岐まで戻り高館山を目指す。舗装路を吊橋で越えてアカマツの林を歩く。ゆるい上り坂をのんびりと歩いて行くと白い手すりの階段がある。階段を登って少し歩くと梅の木が点在する山頂広場に登り着く。山頂には三等三角点と山頂標識がある。木々に囲まれて展望は良くない。
 この付近は寒暖の境目として知られ、温帯性のシイの木と寒冷帯のブナが共生する珍しい植生をしている。北斜面を見下ろすとスダジイやヤマザクラの間にブナが点々と生えているのが見える。

 山頂を後に737年建立の重文「西明寺」に向かう事にした。山頂から権現平を経由して15分くらいで到着。楼門、三重塔など重文が立ち並ぶ境内。閻魔堂には唯一「笑う閻魔様」が安置されている。四角い窓から覗き込むと大きな笑顔が私を見下ろしていた。他にも「とちぎ銘木100選」の『高野槙』や中国原産の四角形をした『四角竹』が見られる。

 西明寺の見学をして今日の登山は終了。と言ってもマイカーはフォレスト益子に置いてあるのだから来た道を引き返す。途中の権現平で展望を楽しむ。時間は11時半。遠くから聞こえるSLの汽笛。蒸気を頼りにSLを探す。野焼きの白い煙があちらこちらから立ち昇って判別が難しい。その内、白い煙が黒く変わり「あれだ!」と双眼鏡で覗いたら近くに赤い車が1台、そこは火事だった。隊長に「火事だ!火事だ!」と教えているとその先に真横に流れる煙が見えた。SLの上げる蒸気煙である。里山の風景に蒸気を上げて走るSL。一瞬タイムスリップしたような時間だった。
権現平を後に歩き始める。車を見下ろせるベンチまで来たところで恒例のラーメンタイム。今日の登山も終了だ。1時間半掛けてのんびり遊びながら来た道を30分で引き返した。相変わらず逃げ足が早いぺんぎん隊である。


明るく陽あたりの良い登山道

スダジイやヤマザクラの間にブナが見える

ちょっと一休み

美味い!

蒸気を上げて走るSL。遠くの裾野は高原山。

笑う閻魔大王