沼っ原湿原

8月12日 晴れ後いきなり暴風雨


 お盆の帰省ラッシュがピークを迎えているこの日、ぺんぎん隊は黒磯の別荘地でのんびり目を覚ました。1歳8ヶ月で秋田駒ケ岳に登ったという田辺モナ隊員の登頂祝いに駆けつけ、飲むだけ飲んで喰うだけ喰ってお泊りしたのである。行けば毎回同じ体たらくである。まあ、ここは隊長お気に入りの場所と言っておこう。
 のんびりと言ってもまだ外は暗い朝の4時である。場所が黒磯と言うこともあって「那須岳にでも登ろうか!」と登山計画を立てたのだが、そこはお盆の観光地、行き帰りの道が渋滞するだろうとのことであえなく中止。おまけに雨も降り出して来た。「温泉?」とついつい楽な方面に逃げたがるぺんぎん隊であるが今日は埼玉から原勇輝隊員がボッカ(父)を連れてやって来ている。渋滞の道路を夜駆けで走り通し今しがた到着して仮眠中である。
 勇輝隊員の為にもどこかを歩かなければならない。どうしようかと相談の末に沼っ原湿原を歩く事にした。駐車場から30分、木道を歩けば多少の雨でも歩けない事は無い。1時間ほど散歩をすれば温泉に直行しても罪悪感無く生ビールにありつける。平隊員の基準は如何に生ビールにありつく為の理由を探すかなのである。

 板室街道はお盆を忘れたように閑散としている。快適に車を走らせる。ぺんぎん青チョロ号の後ろを原隊員のフォレチッタ号が続く。雨はいつの間にか青空に変わっている。

 釣竿を持たなければ晴れ男に変身する田辺哲隊員が「乙女の滝の所に湿原までの登山道の入り口があるんだよねぇ・・」と助手席でつぶやく。「ふ〜ん、登山道かぁ・・歩く?」と言うと「5.4kmあるよ、勇輝歩けるかな?」とまだ6歳の隊員を気遣って言う。「それじゃ1台上にデポすれば片道で済むからどうかな?」と提案してボッカに伺いを立てる。ボッカは何故かハイテンションで二つ返事。まあ行けるとこまで行きましょう。

 隊長は当然歩けるとの判断から完全に無視。当人は久々の登山に不安の色を隠せない様子である。ここで甘い言葉を掛けると調子に乗るので副隊長としては当たらず触らずで歩き出す。6歳の勇輝に引っ張られる様に登山道を歩く。隊長は弱音を吐きながらもライバル出現に頑張りを見せている。

 勾配の緩い登山道をのんびりと歩く。久しぶりの山歩きで気持ちの良い汗をかく。これなら生ビールも最高の状態で飲めるというものだ。

 5.4kmといっても勾配が緩いので歩きは楽である。しかし歩きは長い。途中、水場の小沢で小休止。沢水を「美味い!」と飲む大人たちを尻目にペットボトルのミネラルウォーターを「こっちの方が美味い!」と飲む勇輝。まだまだ元気一杯。と言うよりもどんどん元気になって行くみたいだ。さすがスーパー父ちゃん一押しの息子である。
 時折湿原までの車道を横切る。1〜2台の駐車スペースもあるので、その時の体調次第で途中から歩く事も可能である。湿原近くになると登山道は九十九折れとなり勾配が付いてくるが、それも長くは続かない。湿原駐車場手前300m程の所で車道に飛び出し、以降車道を駐車場まで歩く事になる。登山道入り口から湿原駐車場まで6歳勇輝の足で約2時間だった。

 駐車場にデポした車に荷物を置き、身軽になって湿原に向かう。今度は全て下りの整備された遊歩道を約15分で湿原に到着。木道の上をコトコト行くのが気持ちいい。時期的に花は少なかったがあまり花には興味が無い(判らない)から気にならない。「おたまじゃくしだ!」「サンショウウオは居ないか?!」と騒いでいる方が面白い無粋なぺんぎん隊である。

 突然、突風が吹いて雲行きが怪しくなる。雷雲がモクモクと湧き上がり空を走っている。「こりゃヤバイ!」と木道を一目散に走り駐車場に戻る。背中からゴロゴロと雷鳴が追いかけて来る。「開けた湿原で雷はまずいだろう・・・」そう話す我々の横をこれから湿原に向かう家族連れやカップルがすれ違う。いくら限られたお盆休みの行楽とは言え、これじゃ山の事故が無くならないのも仕方のない事だと思いながら帰路についた。