半月山と小田代ヶ原〜湯滝トレッキング

9月2日 晴れ


 9月に入って天気の良さそうな週末を迎えた。前日の夜に「ねぇ、何処か行こうか?」と隊長に声を掛けた。「何処か・・」と言っているが私の頭の中のその文字はもうしっかり「山」になっていた。怪しんで私を見る隊長に向かって「大丈夫、原っぱを歩こう。この間みたいの!」と慌てて誤魔化した。「この間って沼っ原?」と聞き返して来るので「そうそう、木の道が有ったりして・・・」と如何にも楽で楽し気に話を進める。「じゃあ、行ってもいいよ。」という事になり当日土曜日の朝を迎えたのだった。

 車が向かう先は奥日光である。夏休み明けの最初の土曜日は車の数が少ない。予想通りに空いている道を快適に走る。隊長もご機嫌で車窓を眺めている。いろは坂を上り明智平を過ぎた頃、「ねえ、車で登れる山があるから行ってみない?」と機嫌が良い隊長に何気なく言ってみる。「車で登れるの?」疑わしげにしながらも顔は笑っている。「車で登ってちょっとだけ歩けば頂上だって。行こうよ!」「ちょっと」に力を入れて誘いを掛ける。「本当にちょっとならいいよ、行こうよ。」と返事が来たので「しめた!」とばかりに中禅寺湖畔の二荒山神社の大鳥居を左折して中禅寺方面へと進路を変える。

 冬季には歌ヶ浜でゲートに阻まれ一般車両は通行出来ない半月山への舗装路(旧中禅寺湖スカイライン)はこの時期なら行き止まりの第二駐車場まで入れる。時間は7:00〜17:00の間だ。第二駐車場まで車で上がれば頂上まで20分程度である。しかしそれではいくらなんでもぺんぎん隊の名が廃る。隊長には「ちょっと」と言いながらちゃっかり第一駐車場で車を捨てて登山道へと入り込んだ。勿論、隊長には第二駐車場の存在は内緒である。

 第一駐車場からの登りはダケカンバの林からコメツガの林の中を登って行く。「背中が寒い。」とリュックを自ら背負う隊長だったが、稜線に上がる手前で「もう要らない!」と言う。まあ、リュックの中身は昼の弁当とカメラと雨具。このチョイ登山中、彼には必要無い物ばかりが入っているので私が担ぐ。

 尾根に上がると南面の視界が開けて気持ちが良い。足元をササがおおって結構神経を使う。南斜面は滑落するとしばらく止まりそうも無い急傾斜の笹の斜面である。再び林に入り少し登ると三等三角点のある半月山(1753m)山頂に出る。頂上はコメツガの林で眺めは無く、山頂標示と三角点で記念撮影をして展望台に向かった。

 頂上から展望台へは更に200mほど先だ。頂上から一旦下ってまた登る。途中、第二駐車場からの道を合わせて木製デッキの展望台に到着。
 
数人の登山者に混ざって景色を楽しむ。

 西面から北面に開けた展望は眼下に中禅寺湖を見下ろし、正面に男体山、白根山など日光連山が眺められる。空気の澄んだ日には富士山も見られると言う。

 双眼鏡を取り出して湖面を眺める。八丁出島付近を遊覧船が走っている。隊長に双眼鏡を渡す。「二階に人が居るよ!」と遊覧船を眺めて嬉しそうにしている。「男体山の左側を見てご覧。茶色い所だよ、判るでしょ?あそこにこれから行くんだよ。戦場ヶ原と小田代ヶ原だよ。」と指差して教えてあげる。
「さあ、行こうか!」

 車は奥日光へと進む。竜頭の滝を越えて戦場ヶ原へ。戦場ヶ原中間の『三本松』駐車場に車を止めて『赤沼』から遊歩道に入る。樹林の中を小田代ヶ原に向かって歩く。湯川を渡ってしばらく進むと鹿の防止柵がある。戦場ヶ原一帯は鹿の食害で自然破壊が深刻だ。
 小一時間ほど歩くと小田代ヶ原の核心部とも言える展望台に着く。赤沼からここまではハイブリッドバスが運行しているので高齢者や小さな子供の姿も見られる。
 小田代ヶ原の象徴とも言えるシラカンバ通称「貴婦人」を遠くに眺める。生憎と男体山に雲が掛かり写真的に良い構図が得られずにガッカリ。それでも気持ちの良い風が吹いて気持ちが良い。
 小田代ヶ原は戦場ヶ原の1/4、湯川の西側に広がる周囲約2キロの草原だ。草原を周遊する木道をのんびりと歩く。アザミが綺麗だと案内には書いてあったがアザミはもう終盤でちょっと遅かった。ぐるっと木道を歩いて鹿の防護柵から外に出る。のんびり歩いて30〜40分だ。
 
 ミズナラの林の中で腹ごしらえ。今日の弁当は私の手作り。とは言ってもシャケとオカカのおにぎりとウインナーと玉子焼きとコロッケ。おにぎりを握ってウインナーと玉子焼きを焼いただけである。でも美味い。(笑)
 隊長と私と二個ずつのおにぎり。二つ目を頬ばったら一つ目と同じシャケだった。「ねえ、交換しない?」隊長は一個目にオカカを食べていたのだ。「いいよ、シャケ食べたいからね。」と以外にも快諾。普通なら手を付けていない自分の食い物には固執してこいつは横取りパターンである。今日は相当機嫌が良いのだ。

 
 昼食を終えて歩き出す。程無く遊歩道の分岐に出る。赤沼に向かう道と湯滝に向かう道である。赤沼方面に行けば先ほど歩いて来た道と合流し往路と同じ道を帰ることになる。湯滝までは4キロ弱である。十分に時間はある、湯滝に行こう!

 ここからは湯川沿いに遊歩道を歩く。湯川は戦場ガ原の西側を南北に蛇行しながら流れ、手つかずの自然の流れとともにカワマスのフライフィッシングなども楽しめる。湯の湖から流れ出し戦場ヶ原を横切り竜頭の滝を経て中禅寺湖の菖蒲ヶ浜に注ぐ約4キロの川である。
 
 この日も数多くのフライフィッシャーがロッドを振っていた。うん、よく振っていたなぁ・・・でも釣れてないな〜。(笑)

 流れる水を見ると何だか濁っている。湯川だけに温泉でも混ざっている様な感じである。山岳渓流ばかり見慣れた目には本当に生温そうな流れに見えるがフライマンの聖地と言われる場所だけにこれ以上は×。


 いよいよ湯滝まであと少し・・・と言ってもそれは標示があるから判るので実際私は知らない。でもザーという音が滝の存在を教えている。「もう少しで滝だよ!」と如何にも知っているように言うと「でも1キロだって書いてあるよ・・。」との返事。「ん?1キロ。400mでしょ!」と言うと「1キロ!」と言い張る。よくよく見ると案内標示が二つある。彼も字が読めるのだった。

 1キロと言うのは右岸沿いの遊歩道、400mは左岸側の遊歩道である。ぺんぎん隊は当然400mに進む。

 それにしても滝の音が近過ぎる。そう思った途端に滝が見えるではないか・・・。「あれ?近いね!」と言いながら滝に下りて行くと滝つぼでフライマンがロッドを振っている。何か変だなぁ・・と思ったら全然関係ない滝だった。

 全く関係の無い滝を後ろに歩き出すとさっきまでと全然違う音がする。ザーではなくドーである。圧倒的に規模が違う音が辺りを支配している。湯滝の瀑音である。

 湯滝は湯ノ湖の南端にある高さ70メートルの滝で、幅は最大で25メートル。
水量豊かで結構迫力のある滝である。観瀑台には温泉の浴衣を着た酔っ払いのおっちゃん集団や白い顔に赤い唇のおばちゃん集団などがいて、遠くまで歩いて来た甲斐があった様な無かった様な・・・。

 まあ今日はこんな感じで奥日光で一日遊んだ。9:30〜14:30の間だったが結構歩いたぞ。登山と草原ハイキングと沢沿いのハイキング。目先が変わった良い一日だった。