男抱山

10月7日 晴れ
前日が大荒れの天気で雨こそ上がったが夜が明けても強風は続いている。しかし天気予報は晴れ。こんな日は低山に登ると思いの他の良い景色が見られたりする。空気が澄んで遠くまで見渡せるからだ。中途半端な1000mクラスに行くとまだ雲の中だったりするものだ。低山ハイキングの良いところは平地の天気で予測がつくところにあるのかも知れない。
隊長に「ねぇ、山に行こうか?」と誘いを掛ける。
「嫌だ!」と即答される。
「それじゃあドライブでもする?」
「ドライブなら良いけど山は登らないから!」
結構ガードが固い。しかし隊長の弱点を知らずして副隊長は務まらない。既に登るべき山は頭に描いてある。その方向にさえ誘き出せば私の勝ちである。
「じゃあさ、ろまんちっく村の方に行こうか。」
「ろまんちっく村なら行く!」
これで彼の運命も決まりである。
そそくさと支度をして車に乗り込む。日光街道をまっしぐら。国道293号を左折して日光宇都宮道路をくぐれば、目的の山はもう目の前。登山口を確認しながら少し先のろまんちっく村駐車場に滑り込んだ。
サンダル履きで園内を散策する。登山の気配など全然見せないで隊長の足の向くままに歩く。
「のど渇いた・・・。」
「お腹空いた、何か食べたい・・・」
そらそら、始まった。
「ジュースとお弁当買って何処かで食べようか?」
「うん、どこがいいかな・・・」
「あそこに小さな山があってさ、30分で登れるんだって。頂上でお弁当食べようよ。」
「ホントに30分?」
「多分30分掛からないよ。コンビニでお弁当温めてもらってさ、覚めない内に行けると思うよ。」
「じゃあ行く。」
これで一丁上がりだ。

今回目指す山は男抱山(338m)である。この山は「おただきやま」と読むらしい。低山ながら頂上は岩場で360°の展望を持ち、東峰と西峰が並び立つ双耳峰だと言う。双耳峰と言えば鹿沼の二股山を思い出すぺんぎん隊であるが、眺めは勝るとも劣らない様子である。
ろまんちっく村から日光街道方向に進むと「ただおみ温泉」を挟んで道はY字路になる。そのまま左に293号を走ると右角にコンビニがあるT字路に差し掛かる。このT字路の左側に登山口があり5台ほどの駐車スペースがある。
登山口から小さな墓地の横を杉林の中へと進んで行く。ものの5分と言ったところで沢沿いの三叉に出る。右が東峰登山道で左が西峰登山道だ。どちらから回っても周遊出来るハイキングコースである。中央の道は双耳峰中間の鞍部に直接つながる道らしい。ぺんぎん隊は右への進路をとる。
急な石段を登ると「金毘羅宮」と書かれた石の鳥居が見える。これをくぐると本格的な山登りとなる。道は明瞭だが傾斜はかなりキツイ。杉林の急な登山道に息が切れる頃に尾根道へと登り切る。コナラやクヌギの中の尾根道はのんびりして気持ちがいい。
尾根道を少し歩くと右手に石の祠が見える。これは金毘羅宮本殿なのかな?祠を過ぎると尾根道は徐々に岩を露出し始める。前方に大きくそそり立つ大岩が見えたら山頂も近い。岩と岩の間をよじ登るように這い上がるとひょっこりと山頂に顔が出る。二畳ほどの狭い山頂には先客が2人いたが、我々と入れ違うように西峰へと向かって行った。
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山頂は前評判通りに360°の好展望。宇都宮市はもとより遠く新宿の高層ビル群までも見える。時折強風が吹き荒れて油断をすると飛ばされそうな中で約束のお弁当タイム。隊長はパスタ、私はおにぎり弁当・・・・・の筈だった。ところが隊長が油断した隙にパスタが強風にさらわれて地面にベタ〜ッと横たわってしまう事故が起きた。哀しそうな顔の隊長に「食べていいよ。」とおにぎり弁当を渡す優しい副隊長である。そして隊長はおにぎりを一つも分けてくれぬままに弁当を平らげてしまうのだった。副隊長は寂しく発泡酒を腹の足しにするのである。
隊長が弁当を食べているのを尻目に西峰を眺めると、先ほど入れ違いに降りて行った二人が頂上に立っていた。ものの10分程度の時間だと思われる。「ほら、さっきの人たちだね。近いみたいだから行こうね。」そう言うと「ホントだ早いね、近いから早いんでしょ、行こう!」と返事が返って来た。珍しく「帰る!」と言わないのは弁当を貰ったからかも知れない。
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弁当を食べ終えてのんびりしていると下方から声が聞こえて来た。
「誰か登って来たみたいだよ。」「ホントだ。」
そんな会話をしていると小学1年生くらいの男の子が一人登って来た。続いてお母さんらしき30代の女性。その次に女の子。それから赤ちゃん?!まだまだ声がする。何人で登って来たのか知らないが、今度は我々がすれ違うように頂上を空け渡した次第である。
東峰から西峰へは岩場をフィックスロープで下り鞍部へと向かう。西峰方向へと進めば問題は無い。鞍部からの登り返しでは一つだけ大岩を登る場所があるが、大人なら岩の削れに足を掛ければ容易に登れる。大岩を登れば西峰頂上は目の前だ。
この西峰は地元では「富士山」と呼ばれているらしい。山頂標示には「男抱西峰」と「富士山」の両方の文字が岩にペンキで書かれていた。西峰も360°の展望で楽しませてくれる。振り返ると今降りて来た東峰が眺められる。先ほどの大団体が山頂にいるのが見える。向こうもこちらが見えたらしく我々に手を振っているのでこちらも振り返す。彼らが東峰をこちらに向かって下り始めたので我々も西峰を後にする。
南の方向にテープがあるのでそれに従って岩だらけの尾根を下って行く。登る時よりもテープの数が極端に少なくてルートが判り難い。岩尾根が切れた地点で右は絶壁。左に巻き道があるのでそちらに下るがテープも何も無いので気をつける必要がある。さらに下って行くと大きな岩があり、そこの木に案内標示が架けられているが文字が薄くて読めない。先の方に見えるピンクのテープを頼りに斜面を下るが殆ど道は判らない。斜面を下り切ったところから明瞭な登山道があり小沢を丸太橋で渡って往路に見た三叉路に飛び出す。これで男抱山周遊ハイキングは終了。
低山ハイキングは多くの山々や街並みの展望台として最高の場所である。しかし、杉林などの植林された低山には作業道も多くルートを迷い易いところもある。注意を怠らずにハイキングを楽しみたいものである。
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