home.gif

芦屋市立美術博物館のこれからについての話し合いの報告

芦屋市立美術博物館を考えるワーキンググループ
代表 大森 一樹



[はじめに]

[I]前提となること

[II]機能面での再検討

(1)歴史博物館機能
(2)美術館機能
(3)市民のアートスペース機能
(4)それ以外に検討が考えられる機能

[III]運営面での再検討

(1)市民組織のサポーター
(2)民間企業、機関とのパートナーシップ
(3)新しい発想のプログラミング
(4)他の文化施設とのリレーション
(5)宣伝広報のプロモーション

[おわりに]



↑TOP

[はじめに]

私が提出した「芦屋市立美術博物館のこれからについての話し合いを求める請願書」が、平成15年12月19日に芦屋市議会で採択されたことを受けて、「芦屋市立美術博物館を考えるワーキンググループ」は、平成16年に入り、1月からの準備期間を経て、2月13日、3月22日、4月26日と3回にわたり、芦屋市立美術博物館講義室において市民、関係者とともに芦屋市立美術博物館の現状とこれからのあり方について、できる限り自由な話し合いの場を設けてまいりました。
※参加者は第一回約80名 第二回約60名 第三回約70名でした。
会場設定、事務連絡など芦屋市立美術博物館、スタッフに多大なご協力をいただきましたことを深く感謝いたします。

ここで話し合われた要旨は、添付いたしました議事録の通りです。時間的な制約もあり、充分に意見が出しきれているとは言えないところもありますが、市民のこの問題に対する声、意識、姿勢などについてはご理解いただけると考えます。
まずは、この議事録を充分に読み込んでいただくようお願いするしだいです。
その上で、これらの話し合いを通して、私個人が考えたこと、整理されたことを以下にまとめましたので、お読みいただき、合わせて今後の芦屋市立美術博物館問題の議論の資料としていただくよう重ねてお願いいたします。
↑TOP

[I]前提となること

(1)添付した資料にあるように、芦屋市立美術博物館(以下、芦屋美博)は開館以来、美術作品、歴史資料など多くの購入品、寄贈品を所蔵しており、万が一閉館、廃館になった場合、これらの処遇が問題となることは自明のことです。
また、議事録(第二回)をお読みいただければおわかりになるかと思いますが、歴史資料の寄贈者の方々は、芦屋美博の公共性、公益性を信じて寄贈されています。これらをいかに市財政上の理由とはいえ、手放す、他者に譲渡することは市の政治的責任であり、道義的にも不可能です。

(2)これらの多大な所蔵品を保管する場所としては、その容量、管理設備から、市内に芦屋美博以外の場所は考えられず、館の土地、建物の廃絶はあり得ないと信じます。

(3)また、これも同議事録から明らかなように、所蔵品の保管のためには土地、建物、設備だけでなく、常にそれらと接し、取り扱う人、すなわち学芸員の存在も極めて重要であることはご理解いただけるはずです。

(4)市が芦屋美博から完全撤退することはありえないと考える一方、事業収入だけでランニングコストをまかなうことも不可能であることは歳入出の数字が示しています。
※ただ、これは芦屋市に限らず、全国の公立美術博物館が抱えている問題です。

(5)また、芦屋市規模の人口と財政の都市において、現状の機能と規模のまま美術博物館をこの先も長期にわたって運営し続けること自体に限界があるのでは、という専門分野からの指摘もあります。

(6)以上のことから、芦屋美博の機能面、運営財政面での再検討を、市だけでなく市民、地域、さらには一般民間企業、機関までを視野に入れて行う必要があると考えます。
↑TOP

[II]機能面での再検討

(1)歴史博物館機能

どの様な規模の都市であれ自らのアイデンティティを示す不可欠の機能であり、従来どおり市立の運営を方針とする。
↑TOP

(2)美術館機能

国際文化住宅都市芦屋の顔として重要なものであり、その魅力は市内にとどまらず、阪神間ネットワークから国内海外にまで視野を広げるべきである。そのためには館の独自性、個性化を考えることが大切である。
その上で考えれば、これまで続いてきた芦屋美博の「具体」「童美展」「芦屋市展」は貴重な財産と位置づけられよう。もちろん、それらの広報活動は従来以上に積極的に行い、市民、地域の理解を得なければならない。
↑TOP

(3)市民のアートスペース機能

年間のある時期を限って、市民企画の場を提供する。公募市民企画展(「わたしの芦屋。」展など)、アートカレッジ、ワークショップ、フリーマーケット、などなど新しい市民美術館としての可能性を探る。
↑TOP

(4)それ以外に検討が考えられる機能

1.教育施設として
地域学習(博物館機能面)、美術教育(美術館機能面)など学校教育、生涯学習、公民館活動との連携を、すでに行われていることも含めてさらに強化。
2.高齢化社会対応施設として
例えば高齢者福祉施設などからの見学、遠足などを積極的に受け入れるなど福祉施設としての機能を検討。
3.営業用賃貸施設として
・貸しホール、貸しスペースとしての収益の検討。
ホールでの室内音楽コンサート、庭園でのパーティ、婚礼など
・観光、環境の付加価値としての収益の検討。
市内の住宅分譲を行う不動産業への働きかけ。写真使用、記事掲載の有料化。モデルルーム、販売センターへの出展、学芸員の派遣。等々
↑TOP

[III]運営面での再検討

(1)市民組織のサポーター

1.会費制の友の会
年間入場者の確保。入場収入の安定化。
一般市民、市外の人々を対象に。(市内と市外での会費の差別化)
2.大口個人寄付
芦屋在住の企業経営者、役員などへ積極的な勧誘。可能であれば寄付金の所得税控除など。
3.市民ボランティア組織
また財政的な面だけでなく人材的なサポート、美術館スタッフのボランティアの養成などの意見もある。
↑TOP

(2)民間企業、機関とのパートナーシップ

芦屋美博の民間企業への委託については様々な意見が出されたが、館の現況、現在の社会経済状況を考えれば、全面的な委託を引き受ける民間企業があるのかは、はなはだ疑問と言わざるを得ない。当面は上記の市民支援他との複合的な組み合わせの中で民間企業参画の可能性を模索していくべきと考える。
1.企画面での企業タイアップ
冠スポンサーの企画展。企業メセナ協議会への呼びかけ。
収蔵品の肖像権の販売(企業広告などへの使用料)も考えられる。
2.設備面での企業タイアップ
例えば、空調設備会社、電気会社のソーラー発電、プロバイダー会社によるインターネット美術館の運営、沿線電鉄会社などとのタイアップ。
3.地元商業施設とのタイアップ
地場の飲食店、喫茶店などで芦屋美博の入場半券での割引の実施により、地元の経済効果を期待する。
4.大学他教育機関とのコラボレーション
具体の作家たちの出身学校の協力支援、企画運営の可能性を考える。
他、阪神地区の芸術系大学、教育機関との共同企画なども。
5.その他
[II](4)3.でも触れたが不動産業とのタイアップ。
市民からの様々なアイデアを募集する。
↑TOP

(3)新しい発想のプログラミング

1.従来の美術博物館の枠を越えた企画展。
集客力、社会的影響の高いものも企画の視野に入れる。
文学、建築、写真、映画、音楽、演劇、漫画、イラスト、アート、ファッション、食文化などまで。
例えば、現在準備中のコシノヒロコ展は、その大切な試金石と位置づけられるだろう。
2.展示品の即売が可能な企画展
奈良美智展の成功は、そのグッズの売れ行きにもあった。入場料のみならずその付加収入の大きさは館運営に大きく作用する。
レプリカ、グッズの販売だけでなく、人気作家の展示品の販売も検討する。
3.学芸員主体の企画
すでに実施されているものもあるが、学芸員による公開講座、移動美術館、出前講座を人気あるものにする。また、学芸員が一定のステータス、ポピュラリティを獲得すれば、他の美術博物館、文化施設への派遣も考えられる。
4.市民による企画応募とその実行
→[II](3)
5.フレキシブルな対応のできる企画委員会
以上のようなプログラミングを可能にするために美術館スタッフ、一般市民、市民の芸術文化関係者などが中心となって、新しく民間の企画委員会のようなものを考えてはどうか。(従来の運営委員会、協議会とは性格の異なるもの)
↑TOP

(4)他の文化施設とのリレーション

1.他の美術館博物館との共同企画、姉妹企画
企画の多様化とリスクの分散。
阪神間の他の美術館博物館、兵庫県立美術館などとともに阪神間芸術文化圏の創出。
2.ルナホール、谷崎記念館、図書館との連携企画
→[III](3)1.
演劇の衣装、小道具などの展示。谷崎潤一郎映画祭など。
↑TOP

(5)宣伝広報のプロモーション

館の現況を見た時、最も欠けていると言わざるを得ない。それは、今回の問題に関しても一般市民の関心が決して高いとはいえないことからも明らかである。
広告宣伝費の無計画な削減は、手法的には館運営のためにならない。適切な予算の計上はこのような施設では常識であると同時に、お金のかからない宣伝広報効果を考えることもそれ以上に大切なことは言うまでもない。
1.市、市民による積極的な広報展開
広報に芦屋美博専門の情報欄、記事。広報チャンネルに情報コーナーを常設。
阪神芦屋駅地下のショーウインドウのお粗末さなど再検討。
ポスター、チラシの大量露出を可能にする市民組織など。
2.館からの積極的な情報発信
パンフレット、会報などを定期的に発行することにより、芸術文化への市民の理解、興味を膨らませることは、館の義務でもあるはずです。
→[II](2)
↑TOP

[おわりに]

(1)本ワーキンググループの継続中、市議会において小治英男前館長(当時館長)が、市民の運動が新聞報道を賑わしているので、交渉している民間委託先が退けてきているという旨の発言をされました。これは、芦屋美博のために真摯な話し合いをしている本ワーキンググループ、市民運動の方々にあまりにも無神経、非礼な発言と言わざるを得ません。氏のこのような姿勢が、この問題における市と市民の溝の象徴ではないかとすら個人的には思います。
いまさら、ここで一個人の文化的教養、品性をとやかく言うことは差し控えますが、しかしながら氏の言う民間委託先がどこで、そこの誰が市民の運動に難色を示したのかは、議会に対して具体的な名前をはっきり示すべきと考えます。それは芦屋市が、今後の館の民間委託という選択肢を検討する上で、極めて重要な先例であるからです。それ以前に、氏の言う民間委託先が現実に存在したのかさえ疑問に思われてもしかたありません。万が一、そうであれば、市民、議会に対しての責任は重大です。
どうか、芦屋美博の将来の選択のためにも、この事実関係については、今後も議会できちんとした追求をお願いいたします。

(2)本ワーキンググループは私、大森一樹個人の主催によるもので、一般市民の立場で出席された市会議員、市関係者の方々もおられましたが、基本的には市とは無関係の立場のものでした。そのため、当事者不在で話を進めなくてはならないことも多く、せっかく出席していただいた市民の皆様にいささか不満の残るところもありました。この議事録ならびに報告書によって、本ワーキンググループで話されたこと、出された意見が、いくらかでも市長以下当事者に声が届き、その不満をいささかでも埋められればと思います。
※第一回に行政改革推進室の行政経営担当部長、三栖敏邦氏に出席をお願いいたしましたが、教育委員会で芦屋市生涯学習出前講座の講師として派遣された形となり本意が理解されず、せっかく出席していただいたにいささか場違いなことになりました。また、第二回には、上記の発言をされた小治英男館長(当時)に公開出席要請状を送りましたが、欠席されました。

最後に請願者として、この三回のワーキンググループでの話し合いから生まれたささやかな成果、アイデアが、以後、この問題の当事者である市ならびに芦屋美博関係者によって検討されることを願います。
芦屋市立美術博物館のこれからの問題を引き続き、市長ならびに市の行政改革、芦屋美博関係者の主催で、市民の代表とともに話し合われることを強く望み、本報告書を終わります。
↑TOP


【提出された報告書には以下の資料が添付されました】
1.ワーキンググループ議事録
2.所蔵品・寄贈品リスト
3.その他の参考資料

home.gif