読書は睡眠薬の効き目?    MENUへ戻る

     人によって読書の楽しみ方は色々あるだろうが、私にとっては,若いときは兎に角、乱読で友人と、

  文庫本のはしから何冊読んだか等と競い合い、したがって今では何にも頭に残っていない。

  そのくせがなかなか抜けず、じっくりと行間を読んで作者の言わんとすることを理解できていないから、

  すぐ忘れてしまうのではないかと思い、中年のある時期から、ひとりの作家の作品を出来るだけ

  続けて、読むというように変えてみた。そうするとその人のおおげさに言えば考えとか、テーマ

  同じ表現が異なる小説などにたびたび出て来たりして興味深いものがある。

  また、読書にはStoryの面白さ、知らなかった事実(特に歴史小説)を知る知的興味、そして

  文学的感動を呼び起こす興奮など,様々な楽しみがあると思う。この頃は認めたくはないが

  年令による目の老化、集中力の低下ですっかり、読書が睡眠薬になってしまった。

 


  心に残った作品(ちょっと古いものですが)

   マルタン・デュガールのチボー家の人々    遠藤周作の侍  村上春樹のノルウェーの森

   山崎豊子の大地の子  トマス・マンの魔の山


  比較的多くの作品をよんだ作家

    高橋和己、遠藤周作、開高健、司馬遼太郎、塩野七生

  最近読んだ小説(99年5月から8月)

    平野啓一郎ーー日蝕    注目の若手作家の芥川賞受賞作。聞きしに勝る難解な漢字の洪水
                     だが、そこは漢字は表意文字なんとなく意味は判ることにした。
                     文学的に優れているのかどうかは専門家に任せてこの若さでよくも
                     これだけの内容にする資料を集めてそれを理解されて作品にする
                     能力があるもんだと関心した。いつも塩野七生や辻邦生の中世の
                     時代を描いた作品を読むたびに感じた驚きと同じである。霊肉に纏わる
                     内容については何処まで自分が理解できているのかわからないが
                     こう言う題材は好きなのでこれから多くの作品を読む作家に加えたい。

   三浦一郎ーー世界史の中の女性達

                     どおってことはないマリーアントワネットなど歴史上の女性にまつわる物語

                                                                                     (1999年5月25日記)

  天童荒太ーー永遠の仔
                 1960年生まれの作家〔孤独の歌声}で日本推理サスペンス大賞優秀作、{家族狩り}で
                 山本周五郎賞受賞の作家の2385枚書き下ろし作品。
                 最も現代的テーマである幼児期における肉体的および精神的虐待(親から子への)が
                 人生に与える深刻なトラウマ、inner child 問題を扱った小説として大きく広告されて
                 いたので、神戸の少年殺しを犯した少年の幼児期に置ける母と子の特異性も話題となった
                 こともあり、また、村上龍や宮本輝の帯の推薦文にも動かされて読んで見たが、はっきり
                 言って、大いに失望した。偉そうな事を言って申し訳ないが、掘り下げ方がたりぬ。
                 このような幼児体験がどのように本人の成長に影響を与えるか、人とのかかわり方
                 というようなことについての認識が余りにも平凡でなんら作者独自の斟酌がないように
                 思う。3人の主人公以外の登場人物も善人はあくまで平凡な善人で、人間的魅力に欠けるし
                 3人が成人して看護婦、弁護士、刑事という社会的な正義をあらわす職業につけたその過程
                 を語らずして、精神的成長の過程、苦難克服のための苦しみを描かずして成人した後の
                 色んな事件が起こる必然性を理解できないのではないかと思う。
                 読み物として、つまり娯楽作品として軽くよむには読みやすいがこのテーマはそれだけでは
                 ちょっと困る。とくに納得がいかないのは娘を陵辱する父親の性格とか背景があまりにも
                 単純で洞察がない。上手く言えないのは残念だが天童さん、私の言う事判ってくれますか?
                 え?お前のようなものにわかってたまるか。ですって?おそれいりました。単なる愚か者
                 の感想です。乞許。〔1999年6月17日記)
    

塩野七生------愛の年代記
                大好きな七生さんの古い〔昭和50年)の作品だが、たまたま文庫本で見つけた。
                実に面白い。作者は主にイタリアの中世の資料や古代の読み物から歴史上の有名な人物
                は言うに及ばず、歴史に埋もれた、それでもほじくりかえせば,歴史の資料に載って
                いる人物や出来事について、物語として確かな筆致で描いていると思う。
                この本に納められている9編の物語も中世の公国における女性の恋の顛末を描いて
                読者を夢中にさせてくれる。それにしても古今東西、女性の不倫に対するすさまじい
                ばかりの夫の復讐(歯を全部引き抜いて、生きたまま壁のくぼみに入れレンガと漆喰で
                塗りかためる。20世紀のいまでも古い建物の壁から白骨が出てくるそうな。ああ
                恐ろし)最も意外で面白かったのは女の法王がいたという話である。一読に値する。
 宮部みゆき-----理由
                直木賞受賞作。超高層マンションで起った、一家四人殺しがなぜ起ったか?
                フィクションではあるが実際に起った事件を扱っているらしい。でも私には
                あまり面白い作品ではなかった。こんなわけつまり理由で事件が起ったのよ、
                ああ、そうですか。という感じ。ここにもいわゆる幼少時代のトラウマを
                背負った若者が出てくるが、なんかそんな経験持つ人イコール社会問題を起こす
                というような安易な結論になっているようでいやな感じだ。まあ一家殺しを
                扱うのであれば登場人物に崇高な精神や深い人間愛の物語を求めるのは無理なんだ。                           

                                              〔1999年7月9日記)

 


   村上春樹---スプートニクの恋人
              久々の春樹さまの書き下ろし、私としては”ねじまき鳥のクロニクル”以来。
              スプートニクとは旅の道ずれという意味だそうで,副題にa weird love story(とても奇妙な、
              ミステリアスな、この世のものとは思えない恋)というのがついている。
                 すみれが恋するsophisticated lady ミュウの体験する異常な性的体験、それが元で同性であっても
              異性であっても性的関係を受け入れられないミユウに同性愛を望み、拒否される。
              春樹作品に登場する永遠のやさしさをもつ主人公とすみれとの友情、そして彼からもミユウからも
              姿を消してしまうすみれ。私には同性愛は永遠に理解しがたいテーマだけにこの作品はもうひとつ
              しっくりこない。 
              確かにa weird だ。ちょっと凡人には理解しがたい。しかし主人公たちの会話には作者の
              奥深い知的、文化的知識があふれ、おおいに楽しませ亦浅学の身を啓発してくれる。                                                                            
              すみれの失踪で物語は終っているが、なんか尻きれとんぼのようで、その後日談の物語
              を期待したい。(1999年7月19日記)

 


   辻 仁成‐‐そこに僕はいた。  ”97年”海峡の光”で芥川賞をとった若手作家の少年時代の思い出を書いた単行本      
              一度読みたいと思っていた作家。これは軽いエッセー風のものだが,なかなかペーソスと
              ユーモアがあり面白かった。この作家の主な作品を読もうと思う。【”99年8月5日記)

 


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