今までのリサイタル

今までに2回のリサイタルを行いました。ご覧ください。

第1回は2000年「バロックのやすらぎと畏敬」

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第2回 リサイタルの記録


チェンバロ奏者 岡田龍之介さんの第2回目のリサイタルが、バロック・ヴァイオリンのジーンキムさん、ヴィオラダガンバの桜井茂さんをゲストに、2002年11月9日(土) 15時から乃木坂の聖パウロ女子修道会で開かれた。

 一昨年のリサイタルは、初期バロックからバッハまでのソロとアンサンブルの世界を聞かせてくれたが、今回は、氏の敬愛する2人の大作曲家・鍵盤楽器の名手でもあったラモーとバッハに焦点を絞り、バロックヴァイオリンのジーンキム、ヴィオラダガンバの桜井茂の両氏を迎えて、アンサンブルの妙も披露した。前半は、ラモーの2曲のコンセールとクラブサン曲集から4曲とフランス・バロックの世界の広がりを、後半は、ソロでバッハのフランス組曲第4番とソナタニ短調(無伴奏ヴァイオリンソナタソナタ第2番による)という、ちょっと渋い選曲。


「豊穣なる時の流れはきっと得がたい財産」  
(フリーキャスター:朝岡 聡)
 

チェンバロという楽器はちょいと不思議な楽器で自分ひとりでソロもできるのだが、通奏低音として伴奏しながら共演者を支えるという役割も重要だ。これがピアノならソロだけやっていてもいいのだが、チェンバロは主役もやる一方で、脇を固める役割もしっかり果たさなくてはならない。実にここがチェンバロの面白さであり醍醐味だと思う。今回の岡田さんのプログラムは、まさにそれを実感させてくれるもの。自分の表現の追究と、他人を支えながら音楽全体を演出する役割。ラモーとバッハという巨匠の作品を舞台に岡田さんはチェンバロが持つ魅力を存分に示してくれる。作品と共演者にあくまで誠実に、そして真摯に向き合う岡田さんならではの世界。この楽しみはその場にいなくては味わえない。是非とも鍵盤に指が触れて音が弾ける瞬間からあなたの五感を総動員して楽しんでいただきたい。その豊穣なる時の流れはきっと得がたい財産になるはずである。                     

朝岡 聡(フリーキャスター)


プロフィール

岡田龍之介(チェンバロ)

東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業、東京芸術大学卒業、同大学院修了。音楽学を角倉一朗氏、チェンバロを有田千代子氏に師事。また渡邊順生、W.クイケン、J.V.イマゼール、T.コープマンの各氏の指導を受ける。全国各地の演奏会に出演し、国内外のバロック音楽演奏家との共演を通じてアンサンブル経験を深める一方、ソロ、教育活動にも力を注いでいる。NHKーFM出演をはじめ、第13回山梨古楽コンクールでは審査員を務める。昨年は初の韓国公演を行なう。洗足学園大学講師、都留音楽祭講師。

ジーン・キム(バロック・ヴァイオリン)

韓国生まれ。ハエ・ヤープ・ヤン、ルッジェーロ・リッチの両氏に師事。ソウル大学ヴァイオリンの芸術学士、音楽修士、室内楽の音楽修士。ミシガン大学博士課程在学中より、歴史的演奏またオリジナル楽器に非常に興味を持ち、バロックヴァイオリニストとなる。1987年〜1990年までシギスヴァルト・クイケンに師事。1991年『第6回山梨古楽コンクール』にて最高位(1位なし2位)を受賞して以来、アンサンブルやソロリサイタルなど、韓国、日本、ヨーロッパ、アメリカ各地でのコンサートに出演。栃木蔵の街音楽祭賞、93年ブルージュ国際古楽コンクール入賞。ラプティットバンドと定期的に共演し、ハルモニアムンディやソニークラシカルなどの録音に参加。現在、アメリカのノースウエスタン大学で後進の指導にもあたっている。

桜井茂(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

学習院大学、東京芸術大学卒業。コントラバスを笠原勝二、吉川英幸、西田直文、江口朝彦の各氏に師事。また芸大カンタータ・クラブで小林道夫氏の指導の下カンタータの研究実践を重ねる。ヴィオラ・ダ・ガンバおよび古楽解釈演奏法を大橋敏成氏に師事しオリジナル楽器による演奏活動も始める。1989年以降毎年渡欧し、ヴィオラ・ダ・ガンバをローレンス・ドレフィス氏に師事、C.マッキントッシュ、J.リンドベルイ、K.ハウグサンに室内楽の指導を受ける。バッハ・コレギウム・ジャパン、東京バッハ・モーツアルト・オーケストラ、ファンタズムに参加、コレギウム・アルジェントゥム主宰。NHK、BBCなどに出演。現在上野学園大学専任講師、高知大学非常勤講師


プログラム

J.-P. ラモー(1683-1764            コンセールによるクラヴサン曲集より 第1コンセール

クリカン/ リヴリ/ ヴェジネ

                                                      クラヴサン曲集(1724)より

ロンドによるジーグ/ロンドによるミュゼット

                                                    新クラヴサン組曲集(1728)より

サラバンド/三本の手

                                                       コンセールによるクラヴサン曲集より 第3コンセール

=ププリニエール/内気(臆病)/タンブランI & II

休  憩

J.S. バッハ(1685-1750            フランス組曲第4 変ホ長調 BWV815

アルマンド/クーラント/サラバンド/ガヴォット/ エア/ジーグ

                                                    ソナタ ニ短調 BWV964  
                  (無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第
2番イ短調)

アダージョ/アレグロ/アンダンテ/アレグロ  

使用楽器

チェンバロ:堀栄蔵作、1995年(フレミッシュ・ラヴァルマン・タイプ)

バロック・ヴァイオリン:ヤコプ・シュタイナー作、アプサム、1656

   ヴィオラ・ダ・ガンバ:ミッシュ・ド・ブリュン作、ベルギー、1988年(N.ベルトラン作、1704年のコピー)


プログラム解説(岡田さん自身による)

ソロとアンサンブルで探るラモーとバッハの世界


 本日は第2回リサイタルにお越しくださいまして有難うございます。
 

今回はそれぞれフランスとドイツのバロックを代表する二人の巨匠、ラモーとバッハの作品を集めてみました。ラモーは主にオペラの作曲家として知られ、他方バッハはオペラを一曲も書かず、幾多の宗教的声楽曲を残したことで知られる、という違いはあるものの、どちらも理論的な事柄に明るく、音楽を単なる感覚的な楽しみ以上のものと認識していた点では、大いに共通点があると考えられます。

 ラモーは1722年に発表した有名な「和声論」をはじめ全部で8つの音楽理論関係の著作を残し、作曲家としてばかりでなく、理論家としても重要な存在でした(因みに彼は晩年、自分は作曲に時間を費やしすぎた、もっと音楽理論の探求に努力を傾注すべきだった、と述懐したそうです)。バッハは、音楽理論書こそ残しませんでしたが、作曲に際して修辞学の理論を踏まえ、対位法の技術的可能性を極限まで探るなど、常に音楽の論理的・構成的な面を重視していました。
作風こそ違いますが、二人の音楽を聴いたときに感じる独特な手応えの根底には、こうした言わば、ロゴスに裏打ちされた感性というべきものが潜んでいるのかもしれません。

 さて、前半はラモーのクラヴサン(チェンバロ)曲を取り上げ、2曲の合奏曲の間にソロの小品を4曲、という構成にしてみました。
ソロのリサイタルになぜ合奏曲が、と思われた方も多いかとお察ししますが、「コンセール」と呼ばれるこの合奏曲はフランス語の原題ではまず「クラヴサン曲集」と書かれ、それに「コンセールによる」と添えられています。コンセールというのは合奏、室内楽の総称で、全体としては「合奏の形をとるクラヴサン曲集」というふうに訳せるでしょうか。つまりこの曲は何よりもクラヴサン曲なのであり、事実ラモー自身、序文で「これらの曲はクラヴサンだけで演奏しても失われるものは何もない」と述べています。こうしたチェンバロ主導型?の室内楽は当時としては珍しく、ラモー以外にはバッハをはじめごくわずかの作曲家達が試みているにすぎません。とはいえ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバとの合奏により、この曲の色彩や陰影が増し、さらに魅力的に響くのは間違いありません。3つの楽器が織り成す優雅な音の綾をお楽しみください。
 コンセールの各楽章には(当時のフランスのクラヴサン曲に一般的な特徴ですが)タイトルが付けられており、第1番の「クーリカン」はペルシャの英雄の名、「リヴリ」は音楽を愛した同名の貴族の名で、その死を悼む曲、「ヴェジネ」はパリ郊外の緑豊かな土地、第3番の「ラ=ププリニエール」はラモーにとって最も関わりの深い貴族・パトロンであった人物、タンブランは太鼓の一種で、その音を模した舞曲です。

 ソロの小品は各々、ジーグが快活な舞曲、ミュゼットはバグパイプに似た小型の楽器(この2曲は、最初の主題が曲中で何度も反復されるロンド形式で書かれています)、サラバンドは3拍子の荘重な舞曲、「三本の手」は文字どおり手が三本あるかのように聞こえる、大変技巧的な曲、を表します。

 後半はバッハの作品を二つ。まずフランス組曲第4番。「フランス組曲」という名称はバッハ自身が付けたものではなく、誰がそう呼んだのかも不明ですが、バッハの死後すでにこの名前が一般化していたことが当時の資料から察せられます。この曲集にはごく初期のバッハの自筆譜をはじめ、妻や弟子によると思われる筆写譜が何種類か残されていますが、それらの筆写譜には、舞曲の構成や旋律の形などにかなりの相違が見られ、どの版を選ぶかにより音楽がだいぶ変わってきます。本日演奏する第4番も、ある版ではメヌエットや第2ガヴォットが加わり、また各舞曲の旋律やリズムも資料によって相当異なります。それらを考慮した上で、私自身は特定の資料に依拠せずに、「どれが自分にとって音楽的と感じられるか」という観点から、複数の資料を自由に用いる立場を選びました。

 最後は、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調BWV1003の、バッハ自身による鍵盤編曲版であるソナタ ニ短調BWV964。バッハは自作、他作を問わず、ある曲を別の楽器のために編曲するのを好み、かなりの数の編曲作品を残しています。このニ短調のソナタの場合も、原曲のきわめて充実した音楽的内容を何とか鍵盤楽器で表現したい、という強い欲求が働いたものと察せられますが、残された譜面はバッハ自身の筆になるものではなく、恐らくバッハの弟子であったミューテルかアルトニコルによって清書された、と考えられています。いずれにせよ、この編曲版の方もなかなか優れた出来映えで、原曲を知らなければきっとこの曲はチェンバロのオリジナル作品と聴こえるに違いない、それほど質の高い曲ではないかと思われます。
 それでは最後までごゆっくりお楽しみください。

 なお私事ながら、今回の演奏を、先月末に他界した父・岡田方雄の霊に捧げます。

岡田龍之介

 

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第2回リサイタル案内

朝岡聡

ジーン・キム

桜井茂

 

リハーサル風景

入念な調律

コンセールによるクラヴサン曲集  
教会にラモーならではの音空間が拡がった

バッハのリハーサル。真剣な眼差し・・・

本番の風景

ラモー コンセールより 

 

 

バッハ 組曲