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10年制学校 モンゴルの初等中等教育(日本の小・中・高)は10年制の学校で行われている。新入学は7歳からで義務教育は8年生までである。出生率が高く(22人/千人、日本は9人/千人『2000年データ』)首都への人口流入が激しいため、ウランバートルでは慢性的な学校不足に陥っており、二部授業を余儀なくされている。しかし、国民は教育に熱心で、高校・大学への進学熱は先進諸国に劣らない感がある。ただ、大学への進学率は女子学生が伝統的に多く、私の大学でも少なく見積もっても80%は女子学生が占めて(公式データではないので後刻調べたい)いる。したがって、学校の教職員は大学も含めて女性が圧倒的に多いのが現状である。 モンゴルの学校では児童・生徒・学生いずれもよく勉強をすると感じている。校舎は社会主義時代の古い建物であるにもかかわらず、学校内の雰囲気は大変よく、特に教室環境の整備がよく行き届いて クリックで拡大できます いることに驚いた。先生方の教師としての資質が高いことが伺われる。ただ、首都の学校と地方の学校間には格差があると言われている。 理科の教科内容 教科内容についてみると、私はまだ「理科」のみの比較研究にとどまっているが、教材配列は日本と似ている。しかし、10年生までに日本の高校3年生までの内容を消化しようとしているので、各学年の指導内容が過密すぎ、しかも年齢ごとの発達段階に見合っていない感がある。7歳で1年生であり、6年生が13歳、10年生(日本の高1)が17歳であるから発達段階に見合っているとも言えるのだろうが、それにしても過密な内容である。しかも、実験授業的な内容は少なく、教師が事実を教え込むような記述方式を取っている。事実、写真の10年制学校には実験室は無く、理科準備室らしきところにインドからの寄贈というほんのわずかな実験機材らしきものがちんまりと納まっていた。 しかし、上記学校で「理科実験」に関して特筆すべきものがある。それは、この学校の物理の女性教師が生徒と一緒に作ったと見せてくれた自作教材である。まだまだ稚拙な内容とはいえ、自作しようとする意気込みに感動した。この先生は2年ほど前から教え込みだけでは生徒が理解できないことに気づき、実験の必要性から少しずつ自作するようにしてきたと話してくれた。このような自作教材を作成する教員は少なくないようで、私の知人であるバガノール総合学校のオユマ先生は、地方の学校でありながら、化学を生徒に興味深く学ばせようと、科学の知識をゲームの作成(生徒が作成)などを通じて生徒への定着をはかっている。なお、私は大学での「自然科学教室」での講義(週2単位時間)では、自作教材作成の時間を設けている。 モンゴルの新指導要領 モンゴルの教育文化科学省(日本の文部科学省にあたる)では来年度から新指導要領(教育ナショナル・スタンダード)で教育が行われることになっており、今年度は試行期間となっている。それに伴って10年制学校が11年制になることになっており、義務教育期間も1年間延びることになっている。11年の卒業年齢は18歳となり、日本の高卒年齢と同じになる。ただ、今年6月に行われたモンゴル総選挙でこれまで圧倒的多数を占めていた労働者革命党の議席が大幅に減少し、少数政党だった民主連合が議席を約半数にまで大きく伸ばした。民主連合は学校制度を先進国並みの12年制にしたい旨の政策を掲げている。 モンゴルの大学教育 私はモンゴル国立教育大学で教育学の指導を行っている。その中で感じたのは、学生は知識を吸収しようとする意欲は大変強くよく勉強するが、小中高での基礎知識が不足しているため、理解力が日本の学生と比べて劣っていると感じられることである。また、大学の施設・設備が不十分であり、図書室の本も十分には無い。しかし、教授たちは「モンゴルの学生は本を読まない」と嘆く。自然科学の実験室も施設は貧弱極まりない。彼らが教師になったとき、どのような実験授業をするのか心配になる。大学教師の授業の時間数もあまりに多い。平均約20時間ということである。これでは自分の研究活動もままならないであろう。 クリックで拡大できます しかし、そのような中にあっても大学教師・学生ともに、自由主義経済下の「新生モンゴル」を創りあげるのは自分たちと、真剣に活動する姿に終戦時期の日本の教育の姿が髣髴とよみがえるのを感じる。 モンゴル国立教育大学では、今年から私の出身地である北海道教育大学釧路校との共同研究が始まった。その第一弾として、釧路校教授3名、学生8名がモンゴル教育大を訪問した。今後もこの研究交流は続けられるが、今後の成果が大いに期待される。
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