遊牧生活

 都会に住むモンゴル人も遊牧の生活に郷愁のようなものを持っている。彼らの多くは近年都会に移り住んだ人たちであり、もとは遊牧生活をしていた。

 遊牧している主な家畜は牛・馬・羊・山羊・ラクダである。モンゴル人の主食ともいうべき羊は全家畜頭数の58%を占めている。遊牧民は季節によって草地(ノタク)を決めており、春は雪解けの早い場所を、夏は草の豊富な場所を、秋は動物を太らせるのに都合のよい草地を選んで移動する。彼らの住居は移動に都合のよい、ゲルと呼ばれる木とフェルトで作られた住宅に住む。ゲルは解体と組み立てが非常に容易である。大人一人で2時間もあれば組み立ては完了する。ゲルの内部には、これも移動に便利な家具がしつらえてある。内部はストーブが焚かれ、冬も暖かい。暖房の燃料には動物の糞を使う。動物の糞は冬の遊牧地の燃料小屋に蓄えている。「家」にあたるモンゴル語は「ゲル」である。都会のアパートの自宅も「ゲル」である。

 モンゴル人はおめでたい日や大切な客を招くときなどは、よく羊一頭を丸ごと料理する。遊牧民の羊の解体は芸術といえるほど見事なものである。まず、手ごろな羊を一頭選び、その羊を仰向けにすると、羊はもう観念したようにおとなしくなる。胸の辺りに少しナイフを入れて、その傷の間から手を内臓に入れる。背中側にある動脈を指で切断すると、羊はぐったりとしてこと切れる。その間羊が苦しがる様子はない。その後皮をはいでいくのだが、ほとんどナイフを使わずすべて手で行っていく。皮を全部はぎ終わるのは10分と要しない。皮がはぎ終わると、内臓を取り出す。血液もきれいにボールにうつしとる。捨てるものは何もない。周りに匂いにつられて犬がやってくるが、彼らは何一つおこぼれをもらえないのである。もっとも、その後ホイログ(鍋に羊肉を入れた後焼いた石を入れて調理する料理)などが作られるので、その後においしい肉にありつける。このように、羊解体の後には血液一滴も見られないのである。

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羊の遊牧

少年が羊を誘導する

ゲルとこの家の少年、ゲルにはTVなどもある

ゲルの内部

家畜としてのラクダの群れ

 

都市生活

 ウランバートルは首都であり、モンゴル最大の都市である。人口は約80万人で地方から職業を求めての人口の流入が続いている。社会主義経済から市場経済へと移行したここ10年間ほどは、貧富の差の拡大を生んできた時期でもあった。市場経済の時流にうまく乗った人たちは、会社を興し個人資産を膨らませつつある。しかし、そのような人たちは都市生活者のほんの一部に過ぎない。貧困層では家庭崩壊も見られ、家庭にいられない子どもたちを生んだ。その子たちがいわゆる「マンホールチルドレン」である。マンホール下の地下道は家庭に暖房用温水を送る管が通っていて冬も暖かいため、そこで寝起きする子どもたちである。最近はその子どもたちにも施設が用意されたり、NGO組織が援助に当たったりしており、その数は年々少なくなっている。

 モンゴル人は概して素朴で、心優しい人々である。日本の相撲界に入ったある力士が、日本人と若干異なる習慣であったために、間違ったモンゴル人観が一部に生まれたようだが、モンゴルに住んでみるとモンゴル人の真の良さが見えてくる。この国の人々は、来客を心からもてなす。私も何人かのモンゴル人から招待を受けたが、そのホスピタリティには感心させられる。「何か困ったことがあったら必ず私に言いなさい」といつも言ってくれる。私の妻が肩こりに悩ませれていることを知ると、すかさず鍼灸師やマッサージ師を紹介してくれる。私の通訳の兄は、私が車を求めていると知ると会社を一日休んで車購入に駆け回ってくれた。

 ウランバートルで目に付くのは高層アパート群である。9階から12階建てアパートが市内15地域に分けられて、各地域に数十棟ずつ建てられている。1棟に100戸前後入居している。したがって、市中心部ではアパート居住が一般的なライフスタイルである。しかし、地方から首都への人口流入が続いているための慢性的な部屋不足が生じており、市郊外にはゲル集落やバラック住宅が目立つ。

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デパート

 学長 夏の家

同左の部屋の中で

ある社長さん宅で

    同左外観

 比較的裕福な人は郊外に夏の家を持っている。二月ほどのつかの間の夏をアパート暮らしの猥雑さから逃れる意味もあるのであろう。また、ロシア文化の影響もあるであろう。モンゴル人は比較的長い夏休みをとる。その間、多くの人は実家や親戚が住む田舎へ出かける。アイラグと呼ばれる馬乳を発酵させて作る馬乳酒を大量に飲むと下痢する。彼らは「田舎のゲルの中で馬乳酒を飲んで都会の食事でたまった滓を下痢で体外に出し、広い草原のなかで体中の都会の空気と自然の空気を入れ替える」のだと言う。

モンゴルの食事 

 モンゴルの食事は日本食のような彩はないものの、日本人の口に合うような気がする。羊肉調理が中心であるが、あっさりした味付けや塩分量など日本食に似たところがあるような気がする。羊肉の臭いがいやだという人もいるが、私は北海道出身で「ジンギスカン料理」を食べなれているせいなのかもしれない。大学の学生食堂でよく食事するが、値段が安くおいしいものが出される。学生食堂ではよく「ノゴティ・シュル」と呼ばれる野菜スープ、「ゴリヒティ・シュル」と呼ばれる羊肉うどん、「ボーズ」と呼ばれる中に羊肉が入った餃子のようなもの、「ホーショール」と呼ばれる揚げパン、名前は分からないがジャガイモを主体としたサラダなどを食べるが、どれも一皿数十円の金額である。

 地元の人はザハと呼ばれる巨大スーパーマーケットや近くの食品店で食材を購入する。外国人向けには各種のスーパーマーケットがあるり、店内はきれいに商品陳列されているが、値段は高めである。日本食の食材は手に入りにくいが、第三地区と呼ばれるアパート群の地域に行くと「北京マーケット」という食品店があり、ここには「ちくわ」「たくあん」「生のいずみ鯛」と日本語で書かれたもの等が手に入る。中国製と思われるが味は日本のものと変わらない。冷凍の「いずみ鯛」は刺身にしても食べられる。先日は冷凍のマグロも手に入った。その

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大学の学生食堂で

同 おいしいスープ

遊牧民が作ってくれたホイログ焼いた石が見える

ほか醤油は手に入るが、味噌や日本酒は手に入れることが難しい。

モンゴルの衣服

 モンゴルの伝統的衣服はデールとよばれる。都市部ではあまり見ることはできないが、それでも年配の方が着ているのは時々見かける。ナーダム(革命記念日前後のお祭り)では弓射のときは着用が義務付けられているようである。また、大学の卒業式の時には女子学生が近代的なデールを身に着けているのが多く見られる。日本で年配の方が和服に愛着を持ち、若い女性が儀式などで振袖を着用することと同じであろう。

 デールはもともと、戸外で作業することが多い遊牧生活の中から発達したものである。夏は絹や木綿を使ったものを着用し、冬にはそれに毛皮の内張りをするようである。

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民族歴史博物館にて

着飾った紳士淑女

弓射大会