★先行研究対比表★

※テーマ:年少者日本語教育

研究者名

研究課題

対象者

調査方法

得られた結果

内田紀子(2005)

学校現場で保護者ボランティアが支援に関わる意義の解明

JSLの子ども2

(ペルー1名とブラジル1名)

縦断

2年間に渡った支援資料:支援記録、ニューズレター、インタビュー記録など

・保護者ボランティアが支援に関わる意義が見出された。

・保護者ボランティアの支援により、「言語少数派生徒と日本人生徒の関係性の組み替え」、「言語少数派生徒と教師の関係性の組み替え」、「地域における言語少数派生徒の関係性の組み替え」などの、新たな関係性の組み替えが見られた。

清田淳子(2005)

母語を活用した内容重視のアプローチの意義

JSLの子ども3

(中国2名とブラジル1名)

縦断

国語の支援に関わった記述資料、子どもの記述回答など

・①母語を活用した内容重視のアプローチでは、学年相応の「国語」の教材を扱う意義、②子どもたちの思考力や想像力の育成の働きかける意義、③抽象概念の理解を促す意義が見出された。

朱 桂栄 (2005)

「母語による先行学習」が「日本語による先行学習」をどのように促進するか

JSLの子ども1

(中国)

縦断

授業の録音データ、授業記録、インタビュー記録

・「母語による先行学習」は、「明示的なつながり」と「暗示的なつながり」という形で「日本語による先行学習」とつながっていることが分かった。

山本昌代(2004)

作文タスクを通して子どもの二言語関係を解明

JSLの子ども67

(中国64名、台湾3名)

横断

作文タスク、「産出量」、「語彙の多様性」、「作文の質」の3つの側面からの評価

・両言語の作文力において相互依存関係があることが示された。

母語保持努力の方法の中で、母語での教科学習が中国語認知面との相関が高く、それが日本語認知面の能力とも正の相関にあることも示された。

佐藤真紀(2005)

学校教員が言語少数派児童や彼らへの教育実践についてどのような意識を持っているか

都立小学校の教員3

縦断

フォーマルインタビュー、インフォーマルインタビュー

・言語少数派児童が各教員にとっては、①「適応が期待される存在」、②「できなくても仕方のない存在」、③「個々の姿勢が高く評価される存在」、④「人的資源として価値ある存在」という4つの特徴が分かった。

 

 

分野の論題

近年、日本の小中学校では日本語以外の言語を母語とする言語少数派の児童が増加し、彼らへの学習支援が学校教育と年少者日本語教育の分野で大きな課題となっている。その中で、子どもたちの母語への関心も高まっている。このような背景のもとに、年少者日本語教育研究は、在日言語少数派児童の教育のあり方を明らかにし、子どもたちへの学習支援へ提言するなどの課題に答えることを目的としている。

意義

この分野の研究は、日本における言語少数派児童へ学習支援の面において、極めて意義があると考える。

方法論

年少者の日本語教育分野では、内容により、研究方法も異なるが、縦断的かつ質的研究法を採用し、参与観察及びインタビューという調査方法をとる研究が多い。

主要学説・

主な知見

この分野では、Cumminsによる言語能力の「会話面」と「認知・学力面」の提起と展開、「共通深層モデル」、「二言語相互依存の原則」が基礎となっている。それに基づいて、近年、「内容重視のアプローチ」による日本語と教科の統合学習が提案されてきている。

研究の流れ

日本の小中学校では日本語以外の言語を母語とする言語少数派の児童の増加を背景に、外国人児童の日本語指導、教育行政問題など、年少者の日本語教育に関わる様々な問題の現状を取り上げた研究が盛んになっていた。そして、子どもの母語が重視され、「教科・母語・日本語相互育成学習モデル」が提唱され、子どもたちへの学習支援に応用されるなど、日本語学習と教科学習における母語の重要性も提起されている。また、母語を活用した「内容重視のアプローチ」なども注目を浴びている。

未解決の論題・問題点

現状としては、日本における言語少数派の子どもの言語と教育に対する実践と研究の蓄積はまだ不十分である。

今後の方向

実践面(子どもたちへの学習支援など)において、今後、様々な支援活動を継続し、更に深めることが重要である。一方、研究面では、長期的な実践活動による言語少数派の子どもの二言語能力育成や情意面でのサポートへの有効性を追究する調査研究も必要である。そして今までの研究や支援の蓄積を生かし、これからの言語少数派の子どもたちへの対応を改善することができると考える。

 

参照文献

内田紀子 (2005) 「公立中学校における保護者ボランティアによる支援の可能性―言語少数派生徒の高校進学を可能にしたもの―」『共生時代を生きる日本語教育』6782

清田淳子 (2005) 「内容重視のアプローチによる教科理解の促進」平成11年度お茶の水女子大学大学院日本語教育コース修士論文72105

朱桂栄 (2005) 「『母語による先行学習』が促進する『日本語による先行学習』―母語の読み書き能力を持っている子どもの『国語』学習の場合―」『言語文化と日本語教育』第30,21-30

山本昌代 (2004) 「中国語を母語とする日本在住児童生徒の二言語能力―作文タスクを通して―」お茶の水女子大学修士論文

佐藤真紀 (2005) 「言語少数派児童を担当する学校教員の意識―エンパワーメントの観点からの考察―」『共生時代を生きる日本語教育』10812