基 礎 資 料
1.KNRについて
 1963年に鉄道庁(国有鉄道)が発足、韓国鉄道として40年目の2003年01月01日に愛称を「KORAIL」と命名、05年01月
01日から民営化され、現在は韓国鉄道公社として運営されています。朝鮮半島の鉄道は日本が統治していた時代に形成され
た経緯から、21世紀の現在においても随所に日本の鉄道との共通点が見られますが、高速鉄道や出改札自動化などの近代化
事業については欧風化が急速に進んでいます。

2.統一號について
 統一號の列車名は1955年京釜線に設定された特急列車に付けられました。当時の時刻表によれば途中停車駅は永登浦、水
原、天安、鳥致院、大田、金泉、大邱、三浪津で所要9時間となっています。
 鉄道庁発足当初は列車種別毎の名称は無く、後の統一號となる「急行」と後の鳩號となる「普通」に大別され、急行列車
には特急、長距離、近短距離の3系統があったようですが、後に特急に統一されます。細かな変遷は省略しますが、後のセ
マウル號となる「観光號」、後の無窮花號となる「優等」が相次いで登場し、特急は三番目の列車になります。
 
 セマウル號、無窮花號、統一號、鳩號の四階層が揃うのは、特急が統一號に種別改称された84年からで、統一號は全車座
席指定の急行、準急行に相当する列車として96年頃まで幹線、亜幹線を中心に特室(グリーン車)や寝台車を連結した列車
も運行されました。鳩號が幹線から退役した97年には現在では通勤列車となっている「都市通勤」が登場、2000年には最後
の鳩號が退役し、統一號は普通列車の代名詞となります。統一型客車編成は日本のファンにも人気があり、乗車券について
も長項線、忠北線、京春線の座席指定制列車を除き、最後まで厚紙のエドモンソン券が使用され、日本の硬券ファンからも
注目される存在でした。

 2000年以降は普通列車として運用された統一號ですが、当初は急行時代の名残で全車自由席となった列車でも立席割引や
都市通勤(特定割引)表示の乗車券が使用されており、また鳩號廃止直後の割高感は否めず、02年07月17日に運賃引き下げ
を実施し、末期の運賃体系が確立しました。以降末期の様式には立席や特定割引の表示はありません。
 なお規程では乗車三日前から前売すると謳われていた為、最終様式の券面にも乗車日時記入欄がありますが、実際は乗車
当日のみ扱いとしている駅が多かったようです。 

 末期の運賃体系は初乗25km以内が1,100₩、26~50kmが1,200₩、51kmを超える区間は28.81₩/kmで算出され、長距離に
なると一定利率で割引運賃となっていました。韓国でも小児は大人の半額ですが、規程では敬老割引、国家功労者割引など
韓国ならではの運賃設定もあり、統一號乗車券の場合は敬老運賃も大人の半額で、小児口座と統合されて「老小」表示の常
備券があります。また101kmを超える区間には学生割引運賃が適用(大人の2割引)され、常備券口座も散見されます。

3.路線の概要
 中央線は首都ソウル市東部のターミナル駅である淸凉里から韓国の古都として知られる慶州市に至る路線で、元々は日本
が軍事目的で敷設、開業当初は京慶線と称していたそうです。一般的には慶州以南の東海南部線を合わせた淸凉里~釜山を
総じて中央線と表現しています。近年中央線経由で両都市を直通する列車は無窮花號の夜行一往復と最後の長距離鈍行で有
名だった統一號1221、1222両列車のみで、ソウル~釜山相互間よりも夫々の都市から途中分岐する路線との輸送が主となっ
ています。

 東海南部線はその名が示す通り韓国南部の釜山広域市から東部の浦項市を結ぶ幹線で、東萊温泉、海雲臺、佛國寺、慶州
と云った有名観光地を沿線に抱えていますが、実際観光客の足は地下鉄やバスに傾いているようです。

 KNRの特徴として、かつて鳩號が運行されていた当時、鳩號のみ停車していたような旅客駅は利用状況に応じて鳩號と
共に廃され、統一號でも同様の傾向が見られました。但しこれは一般の旅客に対するもので、旅客扱い廃止後も運行業務、
貨物扱いの拠点となっている駅、工業地帯では通勤者専用の旅客列車や貨物専用線として営業している箇所もあります。

補足
 以下に列車種別(名称)について【仮名】、ハングル、韓国漢字、意味と由来の順に示します。

  【 K T X 】 고속철도(高速鐵道) 「Korea Train eXpress」韓国高速鉄道
           2004年開業の高速新線で専用軌道と在来線区間に跨る。
           通常列車名はハングルではなくアルファベット表記「KTX」を用いる。

  【 セマウル号 】 새마을호(새마을號) 「新しい村」朴正煕政権のセマウル運動
           1969年「超特急観光号」として登場、74年に改称。
           ※記事本文では便宜上「セマウル號」としました。

  【ムグンファ号】 무궁화호(無窮花號) 「槿」韓国の国花
           1980年セマウルと特急の中間層として新設された「優等」が原型、84年に改称。
           愛称としては1960年京釜線に増発された特急列車に命名。

  【 トンイル号 】 통 일 호(統 一 號) 「統一」南北統一の願い
           鉄道庁発足時からの急行列車で84年に改称。2004年全廃。
           愛称としては1955年京釜線に設定された特急列車に命名。

  【トングン列車】 통근열차(通勤列車) (意味と由来は省略)
           1997年鳩號に代わり「都市通勤」として登場、統一號と同格であったが2004年の統一號全廃にて
           普通に格下げとなった無窮花號とは同格とせず、運賃形態は都市通勤割引を廃した以外は統一號
           の体系を残す。京義線、京元線、群山線~全羅線区間運転と東海南部線の区間運転のみ設定。

  【ピドゥルギ号】 비둘기호(비둘기號) 「鳩」平和の象徴
           鉄道庁発足時からの普通列車で82年に改称。2000年全廃。
           ※記事本文では便宜上「鳩號」としました。
   
【路線図】2004.01.31現在
  ●有人駅(出改札実施の旅客駅)
  ○無人駅(出改札不実施で運行業務に関する職員配置状況とは異なります)
  ◎状況未確認
  ※旅客駅は鉄道庁公開資料中の一般駅と簡易駅の他、旅客扱いのある信号場、臨時乗降場を含めます。
  ※2004年02月01日の釜山乗入れ中止以降、また同年04月01日の統一號廃止以降は状況が変わっています。
  ※列車の運行系統上、本図では東海南部線の起点を釜山としましたが、釜山~釜山鎭は厳密には京釜線所属です。

(中央線/淸凉里~慶州 387.2km)
 ●-●-●-●-◎-◎-◎-◎-●-◎-●-◎-●-●-◎-◎-◎-●-◎-●-◎-◎-●-◎-◎-●-☆
 淸 忘 陶 德 八 陵 兩 新 菊 我 楊 元 龍 砥 石 九 梅 楊 判 艮 桐 萬 原 盤 雉 神
 凉
 里 憂 農 沼 堂 内 水 院 秀 新 平 德 門 平 佛 屯 谷 東 垈 峴 華 鐘 州 谷 岳 林

 ☆-◎-●-●-◎-◎-◎-●-●-◎-●-●-●-◎-◎-◎-●-●-◎-●-◎-●-◎-●-●-●-★
   九 鳳 堤 高 三 嶋 丹 丹 竹 喜 豊 榮 文 縄 平 甕 麻 伊 安 武 雲 丹 義 塔 友
                     方
   鶴 陽 川 明 谷 潭 陽 城 嶺 寺 基 州 殊 文 恩 泉 仕 下 東 陵 山 村 城 里 保

 ★-●-◎-●-◎-◎-●-◎-●-◎-◎-●-●-●
   花 鳳 新 花 北 永 松 林 阿 乾 牟 金 慶
           永
   本 林 寧 山 川 川 浦 浦 火 川 梁 丈 州

(東海南部線/釜山鎭~浦項 145.8km)
 ●=●-○-●-●-●-●-●-●-●-○-●-●-●-●-●-●-○-●-●-●-●-●-◎-●-◎-※
 釜 釜 凡 釜 巨 南 東 安 栽 水 佑 海 松 機 日 佐 月 西 南 德 蔚 孝 虎 毛 入 竹 
   山       門           雲                             
 山 鎭 一 田 堤 口 萊 樂 松 營 一 臺 亭 張 光 川 内 生 倉 下 山 門 渓 火 室 東 

 ※-●-●-●-◎-◎-●-◎-◎-◎-●
   佛 慶 羅 靑 士 安 良 扶 孝 浦
   國           子      
   寺 州 原 令 方 康 洞 助 子 項

常備片道乗車券
 
 2004.03.31まで使用されていた標準的な乗車券です。
 日本と違い硬券乗車券は地方の小駅に留まらず、ソウルや釜山などのターミナル駅でも専用の出札口には大きめの券箱が
置かれており、硬券が並ぶ様は壮観で何処か懐かしい風景でした。また掛員の背後にも箱詰めされた予備券の束が山積され
ているのも何となく韓国らしさを感じさせていました。

 硬券乗車券は通常運賃帯毎(最遠駅のみ表示)常備で敬老小児運賃の場合、大人運賃(の100₩単位)が偶数口座に合わせ
たものしか存在しません。但し需要の多い区間については同一運賃でも到着駅毎に独立口座を持つ場合がありました。
 末期は都市通勤列車と中長距離列車が比較的多く発着していた釜山市内の釜山鎭、釜田の2駅で多くの常備口座を持って
いましたが、全廃直前最後の2箇月間は釜山鎭始発終着だった列車が伽倻・釜田線経由で釜田駅発着となった為、同駅にこれ
まで常備されていなかった慶全線方面の口座が加わり常備券口座最多保有駅となりました。

1.東海南部線相互間
 
(釜 山 ⇒ 海雲臺)
大人初乗運賃
 
(釜 山 ⇒ 月 内)
敬老小児初乗運賃
 
(釜山鎭 ⇒ 浦 項)
東海南部線全区間
 日本と同じく出札には刻印器(ダッチング)があり、通常発券の際には日付を刻印し乗車日時と列車番号を記入して旅客
に渡されますが、釜山の切符はコレクションにすると申し出たところ、券箱から取り出し未記入のまま、日付も刻印せずに
渡してくれました。釜山鎭に至っては日付刻印の有無まで確認されましたから、両駅ともに掛の女性はマニア慣れしていた
のか、はたまた全口座(釜山では20口座弱、釜山鎭は120数口座)購入で単純に刻印作業を嫌っただけなのか・・・?
 
 
(水 營 ⇒ 佐 川)
旧様式(立席)
 
(浦 項 ⇒ 海雲臺)
大人専用券
 
(安 康 ⇒ 釜 田)
敬老小児専用券
 乗車日時と列車番号の記入については掛員がペン書きする駅は少数派で、大抵は専用のゴム印が用意されています。
 画質を落としていますので少々判読が困難ですが、左側の水營駅発行の場合は7桁の数字が3261222とあり、3月26日の
1222列車を示しています。私が確認した限りですが全国的に一番多いタイプです。右の2枚は何れも第○○列車○時○分
のゴム印で、浦項駅発行が第1335列車18時30分、安康駅発行が第1331列車 4時59分です。同様のゴム印は蔚山駅や慶州駅
でも使用されていました。なおインクの色は黒、藍、赤(乗車日時と列車番号のみ)となっています。

 因みに東海南部線では2004年04月01日以降、統一號を無窮花號に格上する一方で、かつての都市通勤として釜山~月内間
に設定されていた区間列車を釜田~月内間の通勤列車に置換えました。水營では統一號廃止後も通勤列車乗車券として運賃
訂正の上で硬券切符を継続使用していました。原則硬券廃止後の暫定的な措置だとは思いますが、他にソウル近郊の数駅で
同様の事例が確認されており、同年夏のダイヤ修正、2005年01月01日の民営化、そして年度を跨いだ現在、近況が気になる
ところです。
 
 
(南門口 ⇒ 海雲臺)
臨時乗降場の乗車券
 
(安 樂 ⇒ 釜 山)
臨時乗降場の乗車券
 
(栽 松 ⇒ 釜 山)
臨時乗降場の乗車券
 釜山市内には臨時乗降場とされる駅が4箇所(南門口、安樂、栽松、佑一)あり、うち3箇所発行の切符を入手出来まし
た。周辺駅の出札掛が無人駅だと云っていたくらいですから、乗車券の存在は周知されていなかったのでしょうか。
 なお佑一は夜間だった為、詳しく調査出来ませんでした。一見無人駅でしたが真相は如何に?

2.運転距離最長の鈍行列車と中央線
 
(淸凉里 ⇒ 釜 田)
第1221列車全区間
常備券最長区間
 
(釜 田 ⇒ 淸凉里)
第1222列車全区間
常備券最長区間
 
(海雲臺 ⇒ 淸凉里)
第1222列車
敬老小児常備券最長区間?
 旧型客車と最長距離列車として日本のファンも多かった第1221列車(淸凉里⇒釜田)と第1222列車(釜田⇒淸凉里)の
全区間乗車券は統一號運賃としては最高額口座でしたが、廃止が報じられてからはコレクションや記念に買い求める人も
多かったようです。関係する鉄道ファンのページには必ずと云って良いほど展示されていますので、マニア需要はかなり
あったもようです。斯く云う私も両駅で数枚ずつ買い求めました。但し敬老小児の常備券は両端駅には設備が無く東萊駅
では補片での発券でしたので、おそらく右の「海雲臺⇒淸凉里」が最長区間の敬老小児券になろうかと思います。但し全
口座未確認の忘憂、陶農、德沼の何れかに釜田まで、或いは巨堤、水營に淸凉里まで、などの常備券が存在していたなら
ば無念ですね。

 
(安 東 ⇒ 豊 基)
第1221列車
2004年3月31日
11:44発車
 
(豊 基 ⇒ 堤 川)
1222
2004.3.31
13:22
 
(蔚 山 ⇒ 堤 川)

第1222列車08時06分

 乗車日時と列車番号のゴム印も独自性があり、安東駅のタイプは他に見掛けた事がありません。豊基駅のタイプは榮州駅
と堤川駅にもありました。余談ですがこのタイプは私も仕事で使っています(笑)。蔚山のタイプは前述の通り慶州、安康、
浦項でも使用例があります。

 
(忘 憂 ⇒ 豊 基)
1221列車運行最終日!・・・の前日
 
(釜 田 ⇒ 丹 陽)
1222列車運行最終日
 
(巨 堤 ⇒ 丹 陽)
1222列車運行最終日
 淸凉里や釜田で切符を求める日本人は意外と多かろう、と云う事で敢えて隣駅で入手を試みた成果です。
 両列車運行最終日の「実券」は現地韓国においても容易くは入手出来ない自慢の逸品。

編 集 後 記

   私のKNR乗車券類収集歴は浅く、2003年秋の初訪韓から2004年春の硬券原則廃止迄の僅かに半年弱と「俄か」コ
  レクターの域を出ませんが、一度興味を持ったら「その道」を極めるべく邁進します。
   #これぞ正しく極道の精神(何か違うな)

   僅かな手掛り、足掛りを元に半年という限られた時間の中で独自に調査網を広げ、独学で韓国語を学び、それなりに
  成果を挙げる事が出来ました。現場の雰囲気は統治時代の影響が残っているのか日本と非常に似ており、私が知る限り
  のKNRは十数年前のJR初期を思い出させるものがありました。
   言葉の壁は勿論ありますが、現地の皆様は「一収集家」としての私を暖かく迎え入れて下さり、異邦人の収集趣味に
  対し御理解、御協力、御厚情を賜り、望外の収穫を得る事が出来たと思います。고맙습니다.

   今回第一弾として「統一號乗車券・中央線/東海南部線篇」を執筆しましたが、次回以降も順次整理がついた(或る
  程度の纏まりとなった)ものから適当なテーマで括り、特別展示として公開してみたいと考えています。

   最後に本文執筆にあたり、基礎資料の情報源として取材当時の現地近況、歴史に纏わる話題等をKNRファンサイト
  運営者各位、情報掲示板常連の皆様には大変お世話になりました。成果を披露出来る機会が随分遅くなってしまいまし
  たが、改めて御礼申し上げます。고맙습니다.
   なお内容につきましては異文化の土地、且つ過去の話題でもあり、また取材当時の著者の事実誤認等もあろうかと思
  います。識者の皆様から御指摘、御教示、御指導頂けますれば幸いです。

【本文執筆】おおぞら/日本切符収集趣味振興会 【参考資料】KORAILホームページ公開資料
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