【 は じ め に 】

   登場当初は硬券切符に日付を入れたものを掛が詰め置き、運賃と引換えに乗客が手にすると云う原始的なものだった
  そうです。原理としては子供が(秋葉原辺りでは大人が?)夢中になってやっている、おもちゃの入ったカプセルが出
  てくる機械に似ていたようです。
   1960年代後半から印刷式の券売機が登場しましたが、やはり当初は印字と云うよりはスタンプを捺付けるような方式
  で掛の補助的役割に過ぎませんでした。以後印刷方式の改良を重ね、今ではかなり高性能なものとなり、一般の乗客が
  ごく普通に利用する限りは掛が居なくとも特に支障無く、都市部の駅を中心に自動改札機、自動精算機とセットで出改
  札の無人化を推進しています。これらを合理化三種の神器と云います(嘘)。

   券売機も進化を遂げる過程で様々な印字方式、乗車券の意匠があり、登場当初のインク式は利用勝手が悪かったもの
  の、コレクションとしては保存性も良く40年近く経過した現在も印字が鮮明に残っています。その後に登場した方式は
  何れも印字が退色してしまうので、印字を鮮明なまま保存するのは殆ど不可能でした。カラーコピーが普及し出してか
  らは究極の保存方法が確立し、券売機や印刷発行機の切符も一部の収集家間では見直されるようになり、近年では一般
  家庭においてもパソコンやスキャナーが普及したので、史料の保存も容易に出来るようになりました。

   鉄道各社ではSFシステム確立後、共通を合言葉に夫々の独自性が失われて来ました。券売機発行の乗車券において
  も共通化によって伝統ある様式に変化が現れ始めているようです。
   今回は最近の連絡乗車券のうち、地図式乗車券について綴ってみたいと思います。なお本文は一定水準の知識がある
  事を前提としております。専門的な用語、呼称等について詳しく知りたい方は旅客営業規則等で確認して下さい。

【本文執筆】鳥兜 甲児/日本切符収集趣味振興会会員

【壹】地図式乗車券   元々硬券時代から収集家には人気が高かった様式ですが、券売機に取り込まれてからも魅了される収集家は少なくない  ようです。JRでは南武線(矢向〜南多摩間)〜東急又は小田急〜東京山手線内の所謂通過連絡乗車券として残っており  ますが、山手線内の駅では2004年春以降、共通型と呼ばれる最新式券売機への入替を機に地図式のプログラムが外されて  来ているようです。   2005年11月現在、共通型券売機で地図式を継承しているのは新宿駅からの東急線経由3口座のみとなっており、他の当  該口座設定駅では共通型導入と共に順次地図式は姿を消す運命にあるようです。   因みに券売機の見分け方としては傾斜型の券売機のうち、タッチパネルの液晶画面左側に縦の青いメニューバーがある  もの(本体の釦は人数選択のみ)が共通型、と憶えると良いかも知れません。
《資料画像》1-1.南武線当該駅発−東急経由−山手線内ゆき
 
  川崎寄りの各駅からは山手線の東側各駅へは川崎経由で行くのが自然なので口座設定が無いのも納得。
  鹿島田の400円区間は巣鴨を対象としているが、同一運賃なので川崎経由の方が近そうな東側各駅も着駅に含まれている。
  武蔵中原の乗車券は東西の位置関係が逆になっているが、これは地図の「上」を進行方向に合わせたものらしい。ただ肝心の図版は南武線が左に伸びており説得
 力が今ひとつ足りない。
  また通過対象の東急線区間が太線か細線の違いも見られるが、券売機の機種或いはプログラムによるものだろうか?
  東急東横線経由の通過連絡券は矢向〜宿河原間の武蔵小杉を除く各駅で券売機に2〜5口座程度設定されています。
  地理的に川崎寄りほど口座数が少なく、武蔵小杉寄りほど口座数が増えます。また通過区間前後のJR運賃が通算され
 るので、同一運賃でも発駅により図版が異なる事が、この切符の特徴であり魅了される収集家が後を絶たない理由です。
  券売機に口座が無くとも連帯の対象であれば窓口で購入出来ますが、普通の連絡乗車券と同じ120ミリのマルス券で
 当然地図表示はありません。

《資料画像》1-2.山手線内発−東急経由−南武線当該駅ゆき
 
  原宿には東急経由しか口座設定が無い理由くらいは説明出来ないと困るよ、お客さん。
  原宿と代々木でも東急線区間の線に違いが見られるが、「東急線」「東京急行」の違いも目立つ。
  池袋は共通型に置換えられて様式が変わってしまい、現在地図式は買えない・・・なんてこった!パンナコッタ!・・・あ〜肩こった。
  現在共通型では唯一?地図式を発行している新宿駅。旧来の傾斜型券売機発行の切符とはフォントが異なるので一目瞭然。
  1-1.の逆順で山手線内の駅発行ですが、こちらは南武線側の対象区間が限られている為、絶対数が少なく東側の各駅で
 は殆ど口座設定の事例がありませんでした。
  また最近共通型券売機に置換えられた事で、口座が設定されていても様式が変わってしまった駅が多いので、見かけた
 場合は多少印字状態に関わらず、即入手される事をお勧めします。

《資料画像》1-3.南武線当該駅発−小田急経由−山手線内ゆき
  武蔵中原の口座で上の東急経由は進行方向が上であると述べた理由は御覧の通り。小田急経由では登戸が上になっているのである。
   
  小田急線経由の乗車券は武蔵中原〜南多摩間の登戸を除く各駅で券売機に2〜4口座程度設定されています。
  著者の手抜きで武蔵中原発行分しかサンプルがありません。

《資料画像》1-4.山手線内発−小田急経由−南武線当該駅ゆき
代々木駅唯一の小田急経由口座。
池袋と新橋は券売機更新で消えたもよう。
  東側では辛うじて新橋で小田急経由の地図式を見付けましたが、山手線内発の場合は対象となる着駅数に限りがあり、
 特に地図表示にするメリットも感じられず、何時矢印表示になっても不思議ではない状況でした。
  硬券が常備されていた時代は相互式でしたし、当初券売機へ取込む際に南武線のプログラムを流用したのかも知れま
 せん。ただ共通型券売機への更新を機に地図式は順次姿を消しているようです。

《画像省略》1-5.その他の物件
  上記の他には近年、常磐線から東武野田線経由で総武線千葉方面ゆきのうち、取手駅発行が数口座あったのですが、
 近況は未確認の為、参考情報程度に留めます。




 【 編 集 後 記 】   旧来より興味はあるが保存性に不安があり、敬遠されがちだった物件たち。   究極の保存方法も一般化されつつあり、史料に対する投資の心理的ハードルも低くなった事で魅了される愛好家が増え  て行く可能性を秘めている分野ですので、今後もテーマ毎にシリーズ化してみたいと考えています。
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