北アフリカから中東にかけて棲息する「オナガコウモリ」
という翼手類から進化した海生哺乳類。
陸地での生存競争を逃れて海の近くで暮らすようになったコウモリの一部が、
先祖が送っていた空中生活を捨てて海へと適応した。
「翼」は肉厚な“鰭”に変わり、これを海中で羽ばたかせて遊泳する。
長い尾は泳ぐ時のバランサーとして用いる。
他方、ますます使用頻度の落ちた後ろ足は殆ど退化している。
結果、魚類のエイを思わせるシルエットに体形が変わった。
牙は獲物を瞬時に噛み殺す為に大きく発達しているが、形状は単調で、咀嚼能力はゼロ。
先祖のコウモリと同様、狩りは高周波の鳴き声を発し、それの反響音を聴覚で捕らえる、所謂「エコーロケーション」を用いて行う。
但し、先祖のコウモリが持つような集音器官としての外耳は、泳ぐ時に水の抵抗を増す危険性がある為、殆ど退化して痕跡程度にしか残っていない。
彼等はイルカやクジラと同じように、海中で発した高周波の反響音を下顎の骨で捕らえて“聞く”。
反響音を集約して内耳に送るに当っては、上顎と下顎の先端に備え持つ「鼻鏡」と言う肉質のトサカも一役買っていると思われる。
餌は小魚やエビなどの甲殻類。自分の口器で丸呑みできる程度の大きさの獲物を好む。
痕跡程度の外耳はディスプレイ器官としてのみ、その機能を持っており、繁殖期にはオスがメスの前でこれを広げてアピールする姿が見られる。
胎生で、一産一子が普通。子供は海中に産み落とされ、分娩後、間も無く泳ぐ事が出来る。
動きは鈍く、大型の捕食動物に対しては、ほとんど無力である。
(中華的熊猫さん 原案、解説)
[参考文献]
シャーヴェ−ソウリ 「コウモリ 海へ」
モルセゴ.K 「ウミコウモリ科のイソロケーション」
パロ.B 「イソラの舞う海 青い海」