暗野(ブラックフィールド)1981
【内容紹介】
青春小説。主人公は19歳の少年。彼の孤独感が、町中の人々の深層心理へ働きかける。すると、町中の人々の飢餓感が呼び覚まされる。彼らの意思とは無関係に。「誰からも愛されたことがない」という飢餓感が、人々を殺し合いに駆り立てる。愛への飢餓感を押さえながら健全な社会生活・家庭生活を送ってきた人々も、巻き込まれる。
【感想】
マニアではない読者には人気があるのかもしれない。村上龍『限りなく透明に近いブルー』や田中康夫『なんとなくクリスタル』と同時代の空気が感じられる。
加害者でもない人間たちが大勢殺されてしまう点に、戦慄した。
さて、若い男の子のモノローグは、たいていの小説(橋本治以外)ではつまらない出来になっていると思う。やたら「若い男であること」を強調し過ぎているように思える。しかし、本書では面白い。橋本治は、男の子の“男”ならざる部分も巧みに描くからであろう。私には、本書は、窯変源氏物語の若き光源氏を描くための習作に思える。
また、16歳で寝たきりになり10数年後に生霊となり身体に蛆をしたたらせてさまよう少女は、古事記の女神イザナミであろう。