ひらがな日本美術史7 2007
最終巻。その百四〜その百十九。時は、明治から昭和。すなわち、近代の始まりから、戦後という時代の終わりまで。
【その百四】
日本の近代は人為的なスタート。日本の近代は、まばゆい電気の光で輝く。小林清親の絵の中で、イルミネーションの光は見入る観客の顔を輝かせる。
しかし、小林清親の弟子・井上安治の絵の中、鹿鳴館のまばゆい照明は外に届かない。庭のベンチに腰を下ろす客の姿を照らすのは、月の光。
照明過剰な師匠の絵を、自然の暗い光で描き直した井上安治。結婚を目前にして病死する、夭折の少年画家である。
【その百五〜百九】
明治の日本の画家たちは、洋画を迅速にマスターし、我が物とした。たとえば、山本芳翠の「浦島図」は、ヤン・ファン・エイクの宗教画のように金の装飾品が豪華細密で、海はビロードのような深緑。
【その百十】
写真週刊誌のスクープのように、ニュースに反応した面白い絵を発表し続けた川端龍子。「金閣炎上」の火炎は、地獄絵のように幻想的。
【その百十一】
日本人が、日本家屋よりも、明治の洋風建築のほうに懐かしさを感じてしまうの
はなぜか。
【その百十二】
日本のアール・デコ。代表例は、チャンバラ映画のポスターのロゴ。漢字のデザインが、なんて素敵。
【その百十三】
日本画で描かれた、架空のインド。キュートな熱国。
【その百十四】
恋から遠い老妓が、鏡の中の自分を見る目付きは、化粧をするプロの目付き。
【その百十五】
竹久夢二の辿り着いた達成。
【その百十六】
パリに拒まれた自分自身を、閉ざされた扉として描いた佐伯祐三。
【その百十七】
スケベ丸出しにも関わらず、いやらしさとは無縁な棟方志功。濃厚な性欲が、あまりにも美しく昇華されてしまう感動。
【その百十八】
「マンガ」に属したもの。諸星大二郎やローラン・トポールのよう
な、六浦光雄の戦後風景。
【その百十九】
官製なのにダサくない、「東京オリンピック」ポスター。世界相手のポスターだったから、官製なのにカッコいい。モダン。