上司は思いつきでものを言う2004
 上司に「おまえなんか辞めろ」と毎日のようにいびられ、クビにされたことがある。私が無能だったのは確かだと思う。が、「やめてもらう」を1分間に5回も言い、それが「あの顧客は断る」と意味にも取れるし、従業員である私を「辞めさせる」の意味にも取れるのだ。多義的に物を言って、人を気持ち悪くさせるのが実に巧みだった。その点についてはやはり憎しみが残る。私がクビになった時は、上司は業績不振に悩み体調を崩していた。あのまま過労死でもしてくれればうれしい。業績不振で倒産か家庭不和になってしまえばといい。思ってしまう。

 上司の理不尽さや、はぐらかしの巧みさに戸惑い、「上司ではなく自分のほうが間違ってるのか?」と思わされてしまった人たち。本書は、そんな人たちのマインドコントロールを解いてくれる。本書の題名は、「上司はなぜ都合の悪い話を巧みにはぐらかすか」と読み替えても良いだろう。

 また、職場が一般的に利潤追究の場である以上、利潤追究意外の観点から見ればさまざまな不条理が存在する。それらの不条理に耐える意欲を、本書は与えてくれる。

 本書で圧巻の読みどころは、「はにわを作る会社」の比喩だ。『ひらがな日本美術史』で橋本治は名文「はにわはかわいい」を書いた。この名文を読んだ時の感動が再び。



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