双調平家物語13巻2006
平清盛は、後白河法皇に憎まれていることを恐怖し、法皇幽閉の暴挙に出る。不安定な権力者が暴走する、悲哀の13巻。
遠い嵯峨野の小家で・・・
エピソード4
清盛は藤原成親(なりちか)へ刺客を送り、
その死の報を、かつての成親の恋人・重盛は遠く暗く聞くのだった。
高倉帝ご寵愛の女房・小督は、嵯峨野の小家で「想夫恋」を奏で、女御子出産後も参内しない。
平氏一門を恐れる小督の胸中を想う高倉帝は、中宮・平徳子へ心を通わせ、清盛待望の外孫の皇子誕生となる。
皇子誕生の喜びからは遠く・・・
エピソード5
平氏一門の栄華の礎を築いた三女・盛子(もりこ)、
一門と後白河法皇との関係を保った嫡男・重盛があいついで世を去る。
後白河法皇は盛子と重盛の遺領を平家から取り上げ、清盛は法皇に憎まれていることを感じるのだった。
遠い保元の乱の藤原頼長、その情緒不安定に似て・・・
エピソード6
清盛は、重盛の生前の功を無にする後白河法皇を恨み、
大軍を率いて上洛。関白・藤原基房の官を解き、法皇の近臣たちを処分。
世を我が物となすがごとき暴挙に自分でも茫然としつつ、後白河法皇を鳥羽の北殿へ幽閉する。
都から遠く離れた福原で・・・
エピソード1
高倉帝は、譲位と引き換えに父院・後白河法皇の
幽閉が解かれることを願い、安徳帝へ譲位。「平氏の御世」が到来する。
清盛は高倉上皇に厳島への御幸を強制し、雨の船旅は高倉上皇の玉体を疲弊させるのだった。
遠い閑院流の一族の中から・・・
エピソード2
後白河法皇の第二皇子・以仁王(もちひとおう)は、
皇位へ執着し、伊豆に流されて二十年になる清和源氏の正嫡・源頼朝に
「平家討伐の兵を挙げよ」という令旨を下す。しかし、以仁王の御謀反はたちまち平家へ知れるのだった。
BGM指揮 オミーカン・ヒメータ
【おまけ】
本巻で読むべきは、後白河法皇からの憎悪におびえる清盛が、不安のあまり、法皇幽閉の暴挙に出る心理。
『貧乏は正しい!』(第1巻)の「自分の内部がガラン胴だから不安でしかたない大男が、ダダをこねて刃物を持った時の危なさ」が、清盛に展開されている。
【誤植】
142ページ14行目「妹」は「姉」の誤りであろうか?
164ページ4行目「御父」は「御祖父」の誤りであろう。
【井上靖『後白河院』との比較】
井上靖『後白河院』は、日本を40年間治めた後白河上皇の人間不信の生涯と、平治の乱・保元の乱当時の日本社会の人々の苦しみを、等分に展開した高雅な歴史小説である。
井上靖の小説は格調が高く、固有の繊細さがあるためか、国語の現代文の問題に使われた時に、最初の一段落で井上靖の文章だとわかるくらいである。
しかし、井上靖の歴史小説は格調の高さの反作用で、人物造型はややワンパターンだ。井上靖が書くと、中大兄皇子も玄宗皇帝も後白河上皇も、全員似たようなもの。額田王も楊貴妃も似たようなもの。歴史小説の中にえぐい人間模様を読みたい時には、やや物足りない。
格調高い井上靖は、野の花を手折らずそっと見守るように、登場人物の人格を尊重しているようだ。あまり、歴史上の人物を解剖したりしないのかもしれない。
その点で、歴史小説でありながら青春小説でもある『双調平家物語』とは対照的といえる。
『双調平家物語』第13巻は、データとしては井上靖の『後白河院』とかなり重複する。しかし、人物同士の感情関係の描き方点が大いに異なる。井上靖の歴史小説の中では「ただ憎み合っていた」「ただ親しかった」と描かれていた人間関係。それを、『双調平家物語』個人の生い立ち・頭脳・体質に遡り、「彼(彼女)にはこのような誇るべき長所があった。しかし、彼(彼女)にはこのような限界があった。したがって、彼(彼女)はそのような限界を持たない人間を憎むこととなった」あるいは「彼(彼女)にはこのような欠落があった。したがって、彼(彼女)はそのような欠落を埋めてくれる人間を愛するようになった」と解剖。