窯変源氏物語1巻1991
光源氏が一人称で語り始める、衝撃のオープニング。
平安時代は、身分社会で、女たちは邸に閉ざされていた。紫式部は、身分と女であることという二重に枷に縛られ、この時代を婉曲的に書くしかなかった。この二重のフィルターを取り払った源氏物語が、今綴られてゆく。
しかし、一人称であることは、形式上の特徴でしかない。本書の最大の特徴は、光源氏という人格が最初から確立しておらず、ゆるやかに形成されていく点にこそある。
例えば、幼い日の、自分を取り巻く大人達の思惑から受ける重圧感。母方の祖母は娘・更衣の死を嘆き続け、その祖母が死んで、6歳の光源氏は正直言ってほっとする。12歳で元服し左大臣家へ婿入りさせられた時の感慨は、「私は売られたのだ」。
そして、青春初期もまた。まだ色好みの実質がないのに、他人の思惑で「光源氏」と呼ばれるぎこちなさ。そのぎこちなさの殻を破るのは、雨夜の品定めに刺激された内部からの爆発である。爆発した光源氏は、空蝉やその縁者と関係を持ってしまう。しかし、爆発した光源氏は、夕顔に出会って心の恋も知ってしまうのだった。
夕顔の巻には、青春初期のさびしさ、けだるさ、思いもよらぬ幸福感、などが漂っている。