窯変源氏物語13巻1993
 橋本治は源氏物語最後のヒロイン浮舟を、源氏物語冒頭のヒロイン夕顔との再来としている。
 もちろん、紫式部の原典においても、浮舟と夕顔の類似は明らかである。たとえば、両者に「右近」という女房名の乳母子がいる点。
 しかし、橋本治は、ふたりの右近の心理をより徹底して掘り下げた。橋本治の描くふたりの右近は、女主を深く愛し、女主へ通う男を好いていない。平安文学では女房は概して高貴の男にたぶらかされ、男の求めに応じて手引きをし、女主の貞操を侵害する。しかし、ふたりの右近は女主の幸福だけを願い、高貴の男に眩惑されない。この点で、女房としては異色の存在として印象に残る。
 後の作品『三日月物語』の女房・左京に、ふたりの右近の面影がある。



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