窯変源氏物語2巻1991
光源氏18歳から19歳。主な展開は、紫の上の登場、藤壺との密通、末摘花の間奏曲、冷泉帝の誕生。
本巻の光源氏は、いよいよ凶暴。ただ優しい人と思われてしまいかねない絶世の美男が、ありふれた青年としてにマイナスの感情を充満させる。中でも驚かされるのが、第一に、「引き取りたい」という申し出を拒絶された時の、紫の上の祖母や大叔父への憤り。第二に、密通後の藤壺への愚かしい猜疑心。
【窯変源氏物語の紫の上の特徴 2点】
1 年齢
原典では紫の上の年齢は光源氏より7歳下か8歳下か10歳下か曖昧であるが、いずれでもない9歳下に設定してある。初登場の若紫では9歳。後、初枕は13歳、死は42歳となる。
2 駆けてきた乙女
貴族の姫君が御簾の中に隠れている時代に、少年のように自分の足で走ってきた少女、という特性が強調される。窯変の光源氏は、紫の少女に、藤壺の面影と等分に幼い自分自身を見る。「あれは私だ」そして、駆けてきた少女のその先の人生が、昼も夜も御簾の中に閉じ込められ男の通いを待つだけの閉鎖世界であると思い至り、暗然とする。その少女を二条の院へ移した朝、少女の未来は朝の光のように輝いた。
【藤壺との密通に関して、窯変源氏物語の特徴 2点】
1 王命婦
光源氏が藤壺との逢瀬の準備のために、まずは藤壺の女房・王命婦と深い関係を持つという設定。貴人の恋の踏み台にされる女房という、恋の残酷。
2 藤壺の陰性な人物造型
窯変の光源氏が「完成された美男の人格者」ではないのと同じく、窯変の藤壺もまた、単純に「聖なる美女」ではない。光源氏との密通・冷泉帝の出生の秘密を呑み込んでの沈黙は、いうまでもない。かなり新鮮なのは、弘徴殿への対抗心から難産に耐える心理。「自分がこのままお産で死んだら、弘徴殿はさぞ笑うだろう。それをさせてなるものか」
なお、冷泉帝誕生直後の藤壺の歌については、「密通で生まれた我が子は、可愛いと思えない」との解釈が採られている。
【末摘花の物語に関して、窯変源氏物語の特徴】
光源氏と末摘花は、男女の仲になってしまったが、恋というには程遠い。まるで、同じ班になってしまった高校のクラスメートのように描かれる。「末摘花サンとは今まで、口を聞いたこともなかった。でも同じ班になったんだから、話をしなくちゃ」がクラス委員の光源氏。末摘花は、返事をしない暗い女の子。その班には、「光源氏クンって、末摘花サンが好きなの?」と言う、小学校で光源氏と同じクラスだった女の子もいて、これが大輔命婦。「今日、塾休んであそこ行かない?」が、イケメン・頭の中将。
【窯変源氏物語の紅葉賀の特徴】
冷泉帝の誕生の前後で特徴的なのは、桐壺帝の横暴。窯変では、父・桐壺帝への息子・光源氏の愛憎が激しい。正妻・葵の上との不仲を咎める父帝が、自身も長年の女御・弘徴殿を差し置いて、藤壺を立后。父帝への光源氏の愛憎は、次の3巻へ持ち越される。
他には、舅である左大臣の卑屈や、王命婦の怨恨が、光源氏を取り巻く。