ドラクエ11時系列考察



魔王ウルノーガを倒し、平和を取り戻した世界を巡る主人公一行は、失った仲間であるベロニカ復活の手がかりを得たことで、忘却の塔へと導かれる。しかしそこで得られた答えは、ベロニカを救うためには時を巻き戻し歴史を修復するしかない、というものであった。



歴史を修復すれば、ベロニカだけではなく、魔王によって奪われた全ての命を救うことができるかもしれない……そう考えた主人公は、過ぎ去りし時へ旅立つことを決意する。



その後、主人公がいなくなってしまった世界はどうなったのか?



過去が書き変わり「なかった」ことになってしまったのか?
未来が分岐し並行世界として存在し続けるのか?
あるいはそれら以外の可能性があるのか?

そこらへんの考察です。


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時のオーブを壊し、過去の世界へと旅立った主人公。





そもそも時のオーブ破壊で発生したのは、どのような現象だったのか?




時の番人と魔導士ウルノーガは共に「時をさかのぼる」と表現。
文字通り時を巻き戻す現象だと仮定した場合、そこから先の世界には二つの可能性が考えられる。

一つは、時間の流れが書きかえられることで、これまでの世界が「なかった」ことになってしまう可能性。



未来Aから巻き戻した地点までの時間は消滅し、新しい未来Bへと至る時間で上書きされる。いわゆる「おきのどくですがぼうけんのしょはきえてしまいました」のでやり直した状態。

しかしこの可能性は、セニカが時のオーブを破壊し過去へ戻った後、



主人公達が消滅しなかったため、完全に否定された。

【証明1】世界は「なかった」ことにはならない。

もう一つは、時を巻き戻した地点から、世界が分岐する可能性。



未来Aへと到る時間は消滅しないが、巻き戻した地点から別の未来Bへと到る時間が生まれ、同時に存在する。いわゆるパラレルワールドへの分岐。

こちらの可能性なら、セニカが過去を変えても主人公達が消滅しなかった理由には説明がつく。
しかし、そもそも時を巻き戻す現象だと考えた場合、分岐以前の過去は同じものでなければならない前提が生まれる。だが実際は、分岐以前の過去にはいくつかの差異が存在する。一番分かりやすい差異がロミアの生死だ。

主人公が時をさかのぼった地点は、既にロミアが選択を終えた時間であり、



しかしロミアが死亡する選択を選んでいた場合でも、



主人公が時をさかのぼるとロミアの状態は生存へと書き換えられる。
ここに時の番人と魔導士ウルノーガの言葉への矛盾が生まれるのだ。

そもそも時の番人は賢者セニカが時の化身のチカラにより変質したイレギュラーな存在であり、忘却の塔本来の機能ではないため、時のオーブ破壊の本質を理解していた可能性は低い。



時の番人と魔導士ウルノーガの時のオーブ関連の知識の入手先は、おそらく古代図書館だったと考えられる。



いにしえの書庫で書物を読むセニカ。この後、天命のつるぎを抱え忘却の塔へ向かい、そこで命尽きて時の番人へと成り果てる。



いにしえの書庫は、いにしえの魔法使いの部屋とも呼ばれている。後に魔導士ウルノーガとなる、いにしえの時代に魔法使いと呼ばれたウラノスは、



自身のチカラを封じた封印書を古代図書館に収めており、ウラノスが古代図書館で時のオーブに関する知識に触れた可能性は高い。
古代図書館の書物は破損が酷く、




セニカもウラノスも、断片的な情報から時のオーブ破壊によって引き起こされるものが「時をさかのぼる」チカラだと解釈したものの、それがどのような現象であるかを突き止めるまでは至ってなかったと思われる。

ともあれ分岐以前の過去が同じものではない事実により、「時をさかのぼる」は文字通り「時を巻き戻す」現象ではない、と証明される。

【証明2】時間が巻き戻るわけではない。

「時をさかのぼる」が時を巻き戻す現象だと考えない場合、さらに新しい可能性が考えられる。主人公たちの世界とよく似た時間の流れを持つ並行世界の過去へと移動した可能性だ。



過去Aから未来Aに至る時間の流れによく似た、過去A'から未来A'へ向かう時間の流れの過去に移動することで、過去A'が本来向かうはずだった未来A'を未来Bへと書き換える。これならば過去Aから未来Aへと向かう時間の流れは消滅せず、過去Aと過去A'の間にいくつかの差異が発生することにも説明がつく。死んだはずのお富さんが生きているのも、そこが似て非なる世界だからなのだ。

しかし、この並行世界への移動には、大きな問題が発生する。並行世界の主人公の存在である。
本来の世界と並行世界が同時に存在すれば、当然そこに生きる存在も同時に存在する。仮に世界Aの存在が世界Bへ移動したとしても、似て非なる別の世界の存在なので論理パラドックスは発生しない。



にも関わらず、移動先の世界で主人公は「消えた」と表現される。本来の世界から消える肉体ごとの物理移動であり、並行世界の主人公に上書きされたとは考え難い。

この1点だけを以ても並行世界へ移動したとは考え難く、「主人公が2人存在することで発生する不都合解消のために何らかのチカラで存在を消された」可能性は否定できないものの、ぶっちゃけ堀井さんが「パラレルワールドではない」と断言したので、並行世界の可能性は公式的に否定された。

【証明3】並行世界へは移動してない。

ならば時のオーブ破壊は、一体どのような現象を引き起こしたのか?
まずは実際に時のオーブを破壊して発生した現象を見てみよう。

遥か遠くへと吸い込まれる走馬灯のような記憶の塊。



直後、激しく輝く光。



ここから主人公の記憶がダイジェスト版で流れ出す。



主人公がテオに拾われる場面から、



オーブを集め終わり命の大樹へと向かう直前の場面まで。
この直後の時間、この場面とは別の場所である聖地ラムダの外れへと、主人公は流れ着く。



この演出に一つの疑問が生まれる。主人公が「時をさかのぼる」のであれば、主人公が過去に降り立つ直前に流れる映像は、直近の記憶(忘却の塔)から主人公の到着時点(命の大樹へ向かう直前)まで逆再生されるのが、演出としては自然ではないだろうか?
しかし実際には、主人公の記憶は主人公が生まれた直後から命の大樹へ向かう直前へと早送りされた。

つまりこの演出は、主人公が「時をさかのぼった」のではなく、「時をかけおりた」ことを表現しているのではないだろうか?

ここで忘却の塔を求める冒険の始まりとなった、最初に触れた文献を思い出してみよう。



主人公たちは『悠久の彼方に失われしもの』を人の命と解釈し、『大いなる復活』を命の復活→ベロニカを復活できると解釈するも、後にその解釈は誤りであったことが判明し、以降この記述に触れることはない。
そもそもこの『大いなる復活』を果たす『悠久の彼方に失われしもの』とは何だったのか?

それは光である。




光は、時間であり、記憶であり、空間であり、存在する全てであり、



すなわち世界である。
『大いなる復活』とは世界の復活に他ならない。

つまり主人公は、『大いなる復活』を遂げた世界の、命の大樹へ向かう直前まで、「時をかけおりた」のである。
そう考えると、時のオーブ破壊で発生した激しく輝く光、すなわち『その光かがやき燃ゆる時』以降に過去から未来へ向けての映像が流れ出した演出も理解できる。新しく生まれてきた世界の時間を、主人公の到着地点まで早送りしていたのだ。

ここに新たな可能性が導き出された。

時のオーブを破壊すると、遥か未来の時間に世界が復活し、主人公の時は過去ではなく未来へ向けて加速する。本来の世界は長い時の果てに悠久の彼方へと失われ、その遥か未来の先で大いなる復活を果たした世界へと、主人公はたどり着く……。

主人公は二巡目世界へ移動した、という可能性である。



いわゆる「強くてニューゲーム」である。主人公はレベルその他を引き継げるので、実際強い。

主人公が移動した先の世界が、過去ではなく遥か未来に復活した世界である可能性の裏付けとして、大いなる復活を遂げた世界では、悠久の彼方に失われた世界の記憶の痕跡が、数多く残されている。







いずれも遠い過去の出来事として認識されている。

他の可能性では悠久の彼方へと失われてしまう想いも、






同じ光が復活するのであれば、遥か未来で結実させることも可能となる。とても長い時間を待たせてしまったが、主人公は再び彼らと巡り会えたのだ。

しかし大いなる復活を遂げた世界が二巡目世界だと仮定した場合、一つ不都合な事実が浮かびあがる。
勇者ローシュと「消える」前の主人公の存在である。


そもそも前提として、ドラクエ世界は聖竜を源とした命=光の循環システムにより成り立つ世界である。




聖竜が健在であれば、光は悠久の彼方へ失われた後も再び聖竜へと回収される。聖竜へと回収された光は、新たな光を産み出す。これが光の循環システムである。
ただし命の大樹に回収されたローシュの命が主人公として新しく生み出されたよう、循環する光は同じ世界を生み出さない。ロトゼタシアが悠久の彼方へ失われれば、次に生まれてくる世界はおそらく別の世界である。

この循環システムの介入するのが、忘却の塔と時のオーブである。



時のオーブの破壊は、光の循環システムに干渉し、新しい世界ではなく、時のオーブが失われた世界を復活させると考えられる。

そしてドラクエ世界には、世界の再現を可能にする記録が存在する。



冒険の書である。



冒険の書は記憶であり、



時の守り神は「人の記憶が世界を紡ぐ糸となる」ことを示唆している。(同時に「過ぎ去った時」が戻らないことも示唆している)

なお復活した世界にロミアの生死のような揺らぎが存在するのは、同じ材料で同じ世界を創る事により記憶の痕跡が残り、歴史に影響を与えるからであろう。しかし冒険の書の記録は、花嫁がビアンカかフローラか程度の揺らぎはあれど、勇者が魔王や邪神といった悪の化身を倒す大きな流れは、同じ歴史へと収束すると考えられる。

この大きな流れが、二巡目世界だと仮定した場合のこの世界の不都合を指摘する。なぜなら主人公は遥か彼方へと過ぎ去る世界から離脱した存在であり、その命=光は聖竜の循環システムによって回収されない。主人公の光が回収されなければ、主人公へと生まれ変わる前の命である勇者ローシュは誕生しない。勇者ローシュが誕生しなければ、歴史は大きく歪み全くの別物となってしまう。当然勇者ローシュの生まれ変わりである「消える」前の二巡目世界の主人公も存在しなくなる。

しかし大いなる復活を果たした世界の歴史は、悠久の彼方へ失われた世界とほぼ同じものであった。勇者ローシュの伝説は存在し、「消える」前の主人公の冒険も存在した。
主人公の光不在の世界が同じ歴史を辿ったことで、二巡目世界の可能性も否定されてしまったのだ。

【証明4】二巡目世界ではない。

世界は未来において復活したが、二巡目世界ではない……・この矛盾を解決する仮説が一つ存在する。
世界の復活は、主人公が到達した地点から始まり、それ以前に世界は存在しなかった、という仮説である。



勇者ローシュの冒険も、主人公の冒険も、全ての過去が記憶の中だけに存在し、実在する過去としては存在しなかった。記憶の中では皆と共に大聖堂で長老の話を聞いていたはずの主人公は、



復活した世界では聖地ラムダの外れに存在し、




記憶と復活した世界が切り替わったタイミングで大聖堂の中に主人公は存在しなかった事実が皆の目の前に現れた。



これが主人公が「消えた」現象の正体である。

では何故世界は主人公の到着した地点から復活し、それ以前の過去が復活しなかったたのか?
ここらへんは推測で語るしかないが、おそらく世界には悠久の彼方に過ぎ去るまでの寿命のような決められた時間が存在していると考えられる。そして時のオーブとは世界の決められた時間そのものではないだろうか?



時のオーブ=決められた時間が破壊された世界は、決められた時間を全うするために世界を再生し、再び決められた時間を全うしようと時のオーブを紡ぎだす。時のオーブとして紡がれ壊されなかった時間は既に全うされているので再生されない。これが時のオーブを壊すことで途中から世界が復活する仕組みなのではないだろうか?

この仮説を裏付ける唯一のセリフが、時の守り神より語られる。



主人公と邪神ニズゼルファは共にこの世界に共に生まれた。
この世界とは当然大いなる復活を果たした世界のことである。邪神は主人公と共にこの世界へと渡ってきた。



主人公の到着と共に世界が復活したのであれば、邪神の到着と共に世界が復活した、とも言える。すなわちこの世界に限り、確かに主人公と邪神は共に生まれたのだ。

邪神ニズゼルファは、ロトゼタシア創世以前に闇の深淵から生まれた太古の存在であるにも関わらず、



ローシュ以降の時代に生まれてきた主人公と「共にこの世界に生まれた」という時の守り神が語ったこの言葉こそが、この世界が時の修復世界であることの証左ではないだろうか。

【証明5】この世界は時の修復世界である。

以上の証明を以て、主人公がいなくなった後、世界はどうなったのか?
その答えは、

主人公がいなくなった後も世界は存在し続けるが、いずれは悠久の彼方へと去り、世界を構築する光は聖竜へと回収される。その後、聖竜へと回収された光は時の修復世界を復活させ、主人公(と邪神)はその世界の始まりに辿り着く。

である。

そこから考察できる『過ぎ去りし時を求めて』の時系列は以下の通り。



この時系列の最大のポイントは、勇者ロトの逆転現象である。
勇者ローシュより後の時代に生まれた勇者ロトは、この流れの中でロトゼタシアを救った最初の勇者となるのである。




なおセニカは主人公が勇者ロトを襲名する前に旅立ってしまったので、勇者の紋章と共に受け継がれた主人公達の物語をセニカが語り伝えたとしても、



勇者ロトは既に記憶の痕跡の中でのみ語られる、遥か昔の伝説になってしまったと考えられる。




二つの勇者の紋章と、勇者の紋章を背に抱く二冊の勇者の物語。
勇者ローシュの物語と勇者主人公の物語として伝わってるのか、それとも共に勇者ロトの物語として伝わっているのかは最早定かではない。
が、彼らの物語はドラクエ3主人公へと語り継がれ、



新たなロトの名を受け継ぐ勇者が誕生し、



勇者ロトの血を引くドラクエ1主人公は、



聖竜との約束(ドラゴンクエスト)を果たすのであった。



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ドラクエ11は紡がれる記憶の物語である。