最近、外貨定期キャンペーンをよく見かける。
金利だけをみると一ヶ月物、豪ドル年利12%など信じられない数値である。
円の普通預金金利が年利0.001%の時代であるから、実に12,000倍である。
しかし実は大きな落とし穴がある。
一般的によく知られている外貨預金のリスクは2つである。実はこの他にもある。それが手数料リスクだ。
- 為替リスク
元本は外貨で保証されるため、円高になると元本割れする。- 信用リスク
外貨は預金保険機構の対象外であるため銀行が破綻すると 利息はおろか元本も戻ってこない。銀行は為替手数料で儲けている。それは TTB, TTS として定められている。
- 手数料リスク(これは筆者が勝手に名づけた)
通常 TTBとTTSは仲値(銀行間取引レート)にプラス、マイナス1円のことが多い。 たとえば米ドルであれば仲値が120円のとき、TTSは121円、TTBは119円となる。
TTS(Telegraphic Transfer Selling) = (円の)売りレート TTB(Telegraphic Transfer Buying) = (円の)買いレート つまり、往復で2円の手数料を取られる。
仲値 = 120円 TTS = 仲値 + 1円 = 121円 TTB = 仲値 - 1円 = 119円
さて、ここで問題。米ドルは現在118円前後であるが、豪ドル(AUD)は75円、 ニュージーランド・ドル(NZD)は67円である。
どの外貨でも手数料は往復で2円である。
外貨に対する2円の手数料の占める割合は以下の通りである。
外貨が高い(強い、相対価値が高い、数値が小さい)と手数料は一律往復2円で あるため手数料の占める割合が高くなる。 金利は外貨を元本にして利息が決定しているため、 逆に言えば、手数料の分、マイナスの金利があると言える。
USD 2/118 = 1.69% AUD 2/75 = 2.67% NZD 2/67 = 2.99%
つまり外貨を購入した時点で(見かけ上)始めからマイナスの金利を背負っているのである。
しかも外貨が高いと不利になる。
そしてさらに厄介なのはこの「手数料のみなし金利」は「期間に関係なく」かかるということである。
つまり1年であれば年利であり、1日であれば日利となる。
これが手数料リスクの厄介な面である。
正確な「手数料のみなし金利」は次のようになる。「仮に為替レートが変動しなかったとして」一年物の外貨定期であれば 上記の「手数料のみなし金利」のままであるが、一ヶ月物の外貨定期で あれば、年利換算すると次のようになる。
USD 117/119 - 1 = -1.68% AUD 74/76 - 1 = -2.63% NZD 66/68 - 1 = -2.94% 出資法による法定金利の上限が29.2%であるから、どれくらいの暴利であるか理解できるだろう。
USD -1.68% x 12 = -20.16% AUD -2.63% x 12 = -31.56% NZD -2.94% x 12 = -35.28%
つまり、豪ドル一ヶ月物の年利12%であっても、手数料リスクですべて 吹っ飛び、マイナスになるのは明らかなのだ。
上記の金利以上なければ「為替で円安にならない限り儲からない仕組みである。」
それくらい、手数料リスクは大きいものだ。
外貨定期の利息だけ別口座で受け取るというものもあるが、 利息以上に満期時の円元本が減るわけだから、まやかしに近い。
さらに解説も TTB = TTS としていることが多い。すでに為替で2円儲けていることを織り込んでいるのだ。 これでは正しい評価はできない。
銀行は顧客が儲かろうが損しようが確実に為替手数料で儲けることができる仕組みだ。
上記を証明するために、たとえば10万円を豪ドル一ヶ月物年利12%で預けた場合を 想定してみよう。仮定として為替レートが変動しなかった(AUD=75円)ものとする。
このように金利12%では確実に損をする。
外貨定期 豪ドル、一ヶ月物、年利12% 為替レート = 75円(開設時と満期で変動がなかったと仮定) TTS = 為替レート + 1 = 76円 TTB = 為替レート - 1 = 74円 円元本 = 10万円 外貨元本 = 円元本 / TTS = 1315.78 AUD 外貨利息 = 外貨元本 x 年利12% / 12ヶ月
= 13.15 AUD満期円 = (外貨元本 + (外貨利息 - 利息に20%の税金) ) x TTB
= (1315.78 + (13.15 - 2.63) ) x 74
= 98,146円損益 = 満期円 - 円元本
= 98,146円 - 10万円
= -1,854
仮に「手数料みなし金利」と同じ金利 31.56% ではどうだろうか。
これは利息に付く税金 6.92 AUD = 512円 とほぼ同額であり、 「手数料を金利でほぼ相殺」していることがわかる。
外貨定期 豪ドル、一ヶ月物、年利31.56% 為替レート = 75円(開設時と満期で変動がなかったと仮定) TTS = 為替レート + 1 = 76円 TTB = 為替レート - 1 = 74円 円元本 = 10万円 外貨元本 = 円元本 / TTS = 1315.78 AUD 外貨利息 = 外貨元本 x 年利31.56% / 12ヶ月
= 34.60 AUD満期円 = (外貨元本 + (外貨利息 - 利息に20%の税金) ) x TTB
= (1315.78 + (34.60 - 6.92) ) x 74
= 99,416円損益 = 満期円 - 円元本
= 99,416円 - 10万円
= -584円
下記の表は今の為替レートでの「手数料のみなし金利」である(利息にかかる20%の税金も考慮している)。 逆にいえば、これ以上の金利でなければ利益を得ることができないという 採算ラインといえる(為替変動がないと仮定)。
つまり、これだけの金利がなければ採算割れは確実で、利益のでる為替変動 (円高で開設、円安で満期)を見込まなければならない。
為替で損を膨らませる危険もある。外貨定期は満期時まで解約ができないため、 為替リスクが大きい。 定期という性格上、預金者に都合のよいタイミングで為替変換できる機会を制限されている。「手数料のみなし金利」(為替変動がないと仮定)このように一ヶ月物の外貨定期で高々10%の年利では採算が合わない。 この表を銀行に見せれば何の反論もできないはずだ。 通常の外貨定期預金金利もこれを上回っているものは現在ない。 つまり外貨定期は為替でも利益を見込まなければいけない商品である。(条件:EUR=135円、USD=118円、AUD=75円、NZD=67円、TTBとTTSは各1円の手数料)
1ヶ月物 3ヶ月物 6ヶ月物 12ヶ月物 EUR -22.06% -7.35% -3.68% -1.83% USD -25.20% -8.40% -4.20% -2.10% AUD -39.45% -13.15% -6.58% -3.29% NZD -44.10% -14.70% -7.35% -3.68%
最近では預け入れ時より円高になってしまったとき、円ではなく外貨のまま受け取ることも できるようだか、為替レートが大きく変動してしまった場合にはそのまま何年も塩漬けになる。
流動性資産ではなくなり、他で運用すればもっと利益を得られたかもしれない損失をも被ることになる。
なお、さらに付け加えれれば、外貨定期は満期後、通常は自動継続される。
つまり、銀行はキャンペーンの高い金利で引き込んで抜けられなくさせるのが狙いでもある。
ご注意:運用は自己責任です。各自の判断で行ってください。筆者はいかなる責任も負いません。