Vol.124

“常識”を揺さぶるドラマ「天才柳沢教授の生活」

今回のクールは、
どのドラマも
みんなそこそこ面白そうですね。
だけど、まあ
観るか観ないか
といわれると、
まあ観るだろうな〜
っていうドラマは多いんだけど、
なんていうか
ワクワクするような
次週が待ち遠しいような
ドラマがないなぁ〜
なんて思ってたら、
ありました、ありました。
1週遅れでスタートした
「天才柳沢教授の生活」。

う〜ん、これは面白い。
っていうか
そういう言い方じゃ、
伝わらないな。
楽しい?期待できる?ワクワクする?
どれもピッタリじゃない、
けど、
ちょっとはニュアンス
わかってもらえます?

これって
「モーニング」に14年間も連載している
人気漫画のドラマ化
だそうですけど、
ワタシ、知りませんでした。
主人公の柳沢教授(松本幸四郎さん)は
疑問に思ったことは
とことん追求しなければ気がすまない、
という性格。
たとえば、
親子喧嘩で娘に「タコ!」と言われた、
という話を聞いて、
なぜ“タコ”なんでしょう?
と考えてしまうような。
そーゆーいささか浮き世離れした性格ゆえに、
毎回とんでもない騒動を
巻き起こしてしまうわけです。
初回は、
道路交通法に興味を持った
柳沢教授が、
スーパーの店先に
自転車をとめていたコギャル(シゴ?)に
「通行のジャマなるものは置いてはイケナイ、
とココに書いてある」
とかなんとか注意しだしたことから端を発して、
人垣はできるわ、
警察はやって来るわの大騒動。

このエピソードひとつとっても
いろんなふうに楽しめるところが
このドラマのいいところでしょうね。
たとえば、
オジさんである柳沢教授が
わがもの顔のコギャル(シゴ?)に
堂々とモノを言う
ということで
溜飲を下げるオジさんもいるだろうし、
逆に、
杓子定規に解釈すれば
ずいぶんとおかしなことが書いてある
道交法を嗤うことで、
そこに世の中の仕組みの可笑しさを
見る人もいるでしょう。

ところで、
最初のほうに
こんなシーンがありますよね。
朝食のときに
娘の世津子(国仲涼子さん)と
口論になるシーン。
世津子が柳沢教授の変人ぶりを指摘して、
世津子「もっと常識的に考えて」
(中略)
柳沢教授「非常に興味ある話題です。
世津子のいう“常識”とはなんですか?」

ワタシ的には、このドラマ
世の中の“常識”を
問い直す話、
だと思いました。
っていうか
そういう言い方じゃ、
伝わらないな。
なんていうか
世の中の表層を解体する、
というようなことだろうと。
柳沢教授
というヘンな人、
常識はずれな人、
を登場させることによって、
“常識的”に進行している世の中を
いったん解体して、
その奥にある
“なんだかわからないもの”
をひっぱりだそうとする試み、
だと思ったんですよ、
文芸批評風に言うと。
(なんかコムズカシくてすいません)

そう考えると、
スーパーの店先での騒動、
その挙げ句にみんなが我先に
いろんな言い分を叫び出す、
あのシーンって、
“なんだかわからないもの”
が噴出するという
象徴的なシーンだし、
そもそも柳沢教授が
いろんなことに好奇心をもつのも
自分の中に“なんだかわからないもの”を
感じているからだと思うし、
なぜかコギャル(シゴ?)の一人が
彼に共感してしまうのも、
彼女もまた
自分の中にそれを
感じているから、
と考えれば説明がつくでしょう。
(ジェネレーションギャップの話
と考えると、
二人の関係は説明がつきませんよね)

登場人物のキャラクターが
ステレオタイプでありながら、
どことなくズレた感じを
感じさせているのも、
肯けます。

でもって
演出は鈴木雅之さん。
もう、
“表層を解体する”ことにかけては、
この方以上に
適任の方はいないでしょう。
ほんとに、
この人のための企画、
っていうか
この人以外では考えられないような・・。
初回、
タイトルの直前、
柳沢教授が大学の門から入ってくるシーン、
むちゃカッコよかったです。
颯爽とカメラに向かって歩いてくる
教授の後ろに
チアガールや、応援団や、演劇部や、テニス部や、相撲部が、
次々と入ってくる。
う〜ん、
なんでかわからないけど、
こーゆーの、
たまらなく好きなんですど、
ワタシ的には。

で、脚本は、
土田英生さん。
この人は、MONOという劇団を率いる
劇作家、演出家、俳優さんだそうで、
何度か岸田國士戯曲賞にもノミネートされている
実力のある方だそうです。
テレビの連ドラは初めてながら、
ナイスな人選だと思います。
(今後、藤本有紀さんも加わるそうです)

今クール、
医者もの、刑事ものと、
“常識的”なパターンのドラマが多いなかで、
かなり、ユニークな存在。
天才柳沢教授、この先が楽しみです。

(今週は、久しぶりに
思いっきり深読みしてみました。
スイマセン)

(OCTOBER.20)


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