Vol.195

正統派!料亭のトンカツ「一番大切な人は誰ですか?」

前回は「ラストクリスマス」
褒めちぎりましたけど、
実は今クール、
もうひとつ褒めちぎりたい
ドラマがあるんですね。
「一番大切な人は誰ですか?」
なんだけど、
この2つ、同じコメディなのに
どこか対照的に
思えるんですね。
どう対照的か、
というと
う〜ん、
トンカツ史の2つの流れになぞらえて
ご説明しましょう。

コホン。
そもそもトンカツ(コートレット)というのは、
豚肉をいかに美味しく食べるか、
ということで生まれた
調理法なわけです。
豚肉は火を通さなければ
食べられない、
でもそのまま焼いたのでは、
肉汁とともに肉の旨味が流れ出てしまう。
で、
衣をつけて
揚げる(焼く)という方法を
思いついた。
この場合、
主役は「豚肉」だから、
自然と肉を厚くする方向に向かう、
これがひとつの流れ。
ところがもうひとつ、
こんどは、
「衣をつけて揚げた豚肉」
が美味しいのは、
「豚肉」
の部分ではなく
「衣をつけて揚げた」
の部分ではないか、
と考える人が出てくる。
つまり、
トンカツをトンカツたらしめているもの、
トンカツの本質は
肉ではなく衣にある。
よって、
肉は薄ければ薄いほどよい。
平たく言えば
衣を楽しむために
肉を薄くする、
という流れができてくる。
(これの究極がお馴染みハムカツなわけです)
で、この2つの流れ、
ワタシ的には、
前者を、現実的なトンカツ、形而下的なトンカツ、原理主義的トンカツ
後者を、理論的なトンカツ、形而上的なトンカツ、ポストモダン的なトンカツ
などと呼んでいます。

で、本題。
もちろん、
「ラストクリスマス」は
後者の肉の薄いトンカツ。
に対して、
この「一番大切〜」は
前者の肉の厚いトンカツ、
なのではないかと。

このドラマ、
いっけんほのぼのタッチの
ドタバタコメディ。
離婚して再婚した男が引っ越した街に
たまたま離婚した妻と娘が住んでいた・・
というシチュエーションで板挟みになる 男を
岸谷五朗さんが演じていて
絶妙のコメディセンスで
笑わせてくれます。
そんな中で、
妻(牧瀬里穂さん)や元妻(宮沢りえさん)の
現在や過去をめぐる心情とか、
娘(小林涼子さん)の複雑な思いとか、
義母(吉田日出子さん)の
もとは不倫だった娘の夫に対する心情とかが、
少しずつ、
じわじわと
にじみ出てくるんだけど、
これがまた
なんていうか
深い
だけじゃなくて
なんていうか
有無を言わさない強さで
グッと
掴んでくるものがあります。
観てる人には
改めて言うまでもないことだけど、
ただ不倫した、別れた、再婚した、
というような
単純な話じゃないのはもちろんだし、
それぞれの心の襞
みたいなものが、
ハッとするような
鮮やかさで垣間見えたりするのは、
脚本の大森寿美男さんの力量
なんだけど、
それに加えて、
宮沢さん、牧瀬さんという
キャスティングもまた絶妙。
最初は、
美人の奥さんと美人の元妻に挟まれて
コノコノ〜!
とか思ってたんですけど、
それだけじゃなかったんですね。

大森さんって人は
どちらかというと
料亭の煮物のような
地味ながら
じんわりと出汁のきいた
ドラマを書く方だと思っていたので、
こういう軽いのは
ちょっと意外
だったのですが
そこはそこ
さすがに料亭のつくったトンカツ
ですね。
肉の旨味がじんわりと・・。

「ラストクリスマス」が
“衣にこそ本質がある”
だったの対して、
この「一番大切な人〜」は
コメディという衣
に包まれた
“中身”が主役。
というか、
そのままでは危険で美味な何かを
衣に包んでそっと食べさせてくれる、
これぞトンカツ
いや、ドラマ
だなぁ〜〜〜〜
なんて思うのは
ワタシだけ?

それにしても
アトリエTOKOの前の
“いかにもセットっぽい雰囲気”が、
なんだかテレビドラマ〜〜な
感じがして
いいですね。

October.29


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